収容施設“天使の家”

ロアケーキ

文字の大きさ
上 下
1 / 2

施設の一日

しおりを挟む
ギイッ…ガチャッ!

「起床時刻っ!全員ベッドから出て“挨拶”の姿勢になりなさいっ!!」

部屋中に響く大きな号令に、わたしはパチッと目を覚ました。

それと同時、眠かった意識は一気に覚醒し、即座にベッドから転げ出る。

上はボロい布で出来た半袖のシャツ、下半身に“何も履いていない”服装は、少し寒さが増したこの季節に厳しい冷たさを与えてきた。

だが、そんなことは頭の端に追いやり、わたしは仁王立ちとなり、手は頭の上に組んだ。

チラッと隣を覗くとわたしと同室の2人が同じ姿勢で横に並んでいる。

そのことに少しホッとすると、わたしは目の前にいる“職員の人”に向き直り、口を開いた。

「5号室の3人、準備が出来ましたっ!…“挨拶”をさせてくださいっ!」



…ここは主に親から捨てられた子供が預けられる“施設”だ。

わたしは7歳のころに両親から捨てられ、この施設に放り込ませた。
それ以来3年間、ずっとここで生活している。

施設の名前は“天使の家”というらしい。
天使のように誠実で気高くなることを目指すため、この名前がつけられたそうだ。

……まあ、実際この施設で“されていること”を思えば反吐が出るが。

施設では建前上“自由”な生活を説いているが、実際は自由などなく囚人のような日々が続いている。

…今日もそんな憂鬱な1日が始まりを迎えるのだった。



「足を開きなさいっ!」

職員の人はわたし達を冷たい目で見下ろし、手に持った乗馬鞭を見せつける。

「じゃあまずはあなたから始めるわ。お腹から声を出しなさい。」

「は、はいっ!?お願いしますっ!!」

職員の人はわたしの前に来ると、鞭を性器にペタッペタッと当てた。

同性の前とはいえ、流石に10歳にもなると羞恥心が芽生えてくる。
だが、この施設にいる以上、わたしには恥ずかしさを主張する権利すら与えられない。

そんな物思いにふけっていると、職員の人は鞭を振りかぶり、下からすくい上げるように振り上げた。

バヂンッ

「い゛、いちっ!おはようございます!」

冷え切った下半身に当たる鞭は、通常よりも鋭い痛みを与えてくる。

…これは“声出し”といって、朝が来たことを身体に伝える儀式だそうだ。

この施設に入ってから毎日行われており、
毎朝“大切なところ”を打たれる痛みと悔しさは、何年経っても慣れそうにない。

わたしの目の前がぼやける頃、職員の人は2打目の動作を始めた。

バヂンッ!

「に、にぃぃっ!!おはようございますっ!」

すでにジグジグとする部分へ打たれる2打目は、わたしの目から涙を垂らすには十分な威力だった。

ポトッ

涙は頰を伝い、薄汚れたフローリングに落ちる。

…だが、職員の人はそんな様子を気にすることなく、また腕を振りかぶった。

バヂンッ!

「い゛っ、さ、さぁぁんっ!!…おはようございまずぅっ!!」

ぼやける視界でしっかり職員の人を見上げ、大きな声で“挨拶”をいう。

3回打たれた性器は腫れ上がり、そこだけ熱を持っている。

本当はうずくまってさすりたいほどの痛みだが、そんなことをすれば“もっとひどいこと”になるのは長年の生活で身に染みていた。

「次っ!」

職員の人はわたしの隣にいるロングヘアの少女、ミアのほうへ移動する。

ミアはわたしより1歳年下で、1年前にこの施設に入れられた。
4ヶ月前から部屋が同じになってから、わたしはミアの“姉のような存在”として、身の回りの面倒を見ている。

そんなミアはすでに涙目で小刻みに身体が震えているようだ。

…だが、“残念な姉”はその様子を祈るように見つめることしかできない。

時より助けを求めるような視線を感じるが、わたしにはミアに手を差し伸べる手段はなかった。

バヂンッ!

「いい゛っ!……い、いちぃっ!……おはようございますっ!!」

そんな罪悪感がわたしを包み込む中、ミアの挨拶も始まる。

もともと薄い傷痕が残る性器は赤く腫れていき、痛々しさが漂っていた。

バヂンッ!

「ああ゛っ!!…に、にいいっ!お、おはようございますっ!!」

続いて2打目が幼い性器に与えられる。

始まる前よりも震えは大きくなり、目からは大粒の涙が溢れ出していた。

…わたしは頭の上に組む手に力を入れながら、その様子を見守るしかない。

バヂンッ!!

「いっだぃっ!!……さ、さぁぁぁんっ!!おはようございまずっ!!」

わたしの時よりも威力が強い3打目は、恐らく“警告”を含んだ1発なのだろう。

ミアは姿勢を崩しそうになるがなんとか耐え、震える顔で職員の人を見つめていた。

「…いいわ、特別に見逃してあげる。……最後はあなたよ。」

正直、職員の人の気分次第で“挨拶の時間”は長くなるため、今日のミアは運がいい。

そして、職員の人はその隣にいるショートヘアの少女“ポロネ”の方を向き、その前に立つ。

ポロネはわたしより3歳下の女の子で、2日前にこの施設に入れられた。

両親から捨てられたショックが消えないまま始まったこの生活に、初日は“ある意味”見てられないほどだった。

そして昨日、この施設のルールを厳しく叩き込まれ、今日に至る。
昨日の“跡”が痛々しく残る下半身は、思わず目を背けてしまうほど、色が変色していた。

まだまだ守ってあげなければいけない小さな身体はガクガクと震え、すでに大粒の涙が頰を伝っている。

「…ほら、もっと足を広げなさい。」

「……いや、…もう痛いのいやぁ…。…たすけてぇ、おかあさん…おとおさぁん…。」

「…聞こえなかったの?もう一度だけ言うわよ、早く足を広げなさい。」

「グスッ…、う、うえぇーん。たすけてぇ…。」

「はぁ…。だめね。」

バヂンッ!

「いぎぃっ!」

ポロネが青ざめながら震えていると、足を閉じた前太ももに鞭が与えられる。

突然の痛みに姿勢を崩し、必死に太ももをさする少女へ、わたしは憐れみの表情を向けた。

『あぁ…、この子はきっと今日も“堕天使の日”なんだろうなぁ。』
…と。

バヂンッ!バヂンッ!

「いだいっ!いだいよぉっ!!」

「ほら、いつまでも“挨拶”が始められないでしょ。…早く姿勢戻しなさいっ!」

太ももをさする左右の手の甲へ、容赦なく鞭が与えられる。
さする手に与えられる痛みに、ついにポロネはしゃがみ込んでしまった。

「いい加減にしなさい。」

「あぁっ!?み、みみがぁっ!!」

痺れを切らした職員の人はポロネの耳をつまみ、そのまま引っ張り上げる。

その痛みからポロネは耳を押さえながら立ち上がった。

「ほら、来なさいっ!」

「え…。…い、いや!いやぁぁっ!!」

職員の人はポロネの耳を引っ張りながら、部屋の出口へ歩いて行く。
その“行き先”がわかったのか、大慌てで抵抗し始めた。

「“あの部屋”は、あそこだけはいやぁっ!!もうゆるじてぇっ!?」

「だったら初めから言うこと聞きなさいっ!」

「言うこと聞くっ!聞きますからぁっ!!」

「もう遅いわよっ!!そんな口が聞けないくらい徹底的に“与えて”あげるから覚悟しなさいっ!」

「いやぁぁぁっ!!」

ガチャンッ!

…。

部屋の扉が勢いよく閉められ、ポロネの叫び声がどんどん遠くなっていく。

わたしはお立たせの姿勢を保ちながらミアの方を見ると、ガクガクと震えている様子だった。

「ポロネちゃん、また“あの部屋”に連れていかれちゃった…。」

「そうだね。…でも、仕方ないよ。わたし達じゃ助けられないし。」

「で、でもぉ…。」

「それに、わたし達も初めは嫌というほど連れて行かれたでしょ?」

「そ、そうだけど…。」

ポロネが連れて行かれた場所は、“天使の部屋”というところだ。

そこに職員の人の言うことを聞かない“堕天使”となった子が入れられ、厳しい罰を与えられる。

わたしも過去に何度か行ったことがあるが、二度と行きなくないと思えるほど“残酷”な場所だった。

2日連続で行くことになったポロネには、正直同情する感情が生まれてくる。

……まあ、わたしにはどうしようもないことだが。



…それから10分ほどした頃。

ギイッ…ガチャ

「あなた達の部屋の子はもう少し“時間がかかる”から、先に2人で掃除を済ませておきなさい。」

「は、はい。わかりました。」

先程ポロネを連れて行った人とは別の職員の人がやってきて、わたし達に指示を出した。

その言葉を受け、わたしとミアは部屋の隅にある雑巾を手に取り、部屋の外にある水場で濡らし戻ってきた。

水場ではもちろん冷たい水しか出てこない為、この時期では冷たさから手が悴んでしまう。

…ただ、部屋には先程の職員の人が見張りとして付いているため、わたし達は必死に床を掃除するのだった。

『はぁ…。こんなところ抜け出して、早く“お外”に行きたいなぁ…。』

そんなことを考えながら、古い汚れがこびりついた床を濡らしていく。
隣ではきっとおんなじことを考えているだろうミアがせっせと掃除をしているところだった。



そして、さらに20分ほどが経過する頃、ようやく全てを掃除し終え、わたし達はお立たせの姿勢に戻っていた。

バヂン

その状態でポロネを待っていると、廊下から何かを叩く音がする

バヂンッ!バヂンッ!

音は次第に大きくなり、この部屋に近づいているのだとわかる。

バッヂィィンッ!!

「ああ゛っ!!」

ギイッ…ガチャ

一層大きい音とともに、扉が開く。
するとポロネが四つん這いの姿勢のまま、部屋に入ってきた。

部屋に戻ったポロネは、服を全て脱がされ裸の状態だ。
下半身は全体的に痣だらけとなり、顔を真っ赤に染めて涙が溢れ出している。

その腕には歪な“輪っか上の痣”ができていた。

それが今日も一日“堕天使”として罰を受けなければいけないポロネの姿だった。

「ほらポロネ、掃除を代わりにしてもらった部屋の子達にお礼は?」

「うぅ…。」

バッヂィィンッ!!

「いっだぁぁいっ!!…お、お姉ちゃん達っ!ポロネの分までお掃除してくれて、ありがとうございますっ!」

すでに真っ赤なお尻に鞭を入れられ、ポロネは叫びながらお礼を言う。

「…いいわ。じゃああなた達、部屋の外に出なさい、ご飯の時間よ。」

わたし達は言われた通り部屋の外に出ると、そのまま廊下の端に正座し、手は後ろに組む。

そして目の前に薄汚れたお皿が置かれ、その上に液体と固体の中間くらいの“それ”が注がれた。

それはおかゆの上へ雑に切った野菜を混ぜたもので、味は薄く、見た目は残飯のようなものだった。

毎日食べさせられるこれはわたし達の“ご飯”で、正直吐き気がするほどの味だ。

しかも、食事は床に置かれ、犬のように四つん這いで食べる。
もちろん、手を使ってはいけないため、より惨めさが込み上げてくる感じだった。

わたしの内心が嫌悪感で満たされるころ、職員の人はポロネの前に立ち、靴と靴下を脱ぎ始めた。

「あなたには特別に、食べやすくしてあげるわ。」

職員の人がそういうと、その足でポロネの“ご飯”を踏みつける。

ベチャッ、グチャッ

何度も何度も踏みつけられ、ご飯は汚らしく原型を変えていく。

「…そろそろいいかしらね。」

職員の人が足をあげると、ご飯は水っぽいお餅のような見た目となり、もともと雑に切られていた野菜は潰れ、より食用が失せる光景だった。

「足が汚れたわ。掃除しなさい。」

職員の人はポロネの顔に足を押し付け、舐めるように促す。

ポロネは心底嫌そうな顔でその足を支え、足の裏を舐め出した。

ペチャッ、ジュルッ

耳障りな音を立てながら、職員の人の足から米粒が無くなっていく。

その度に、ポロネは吐きそうな表情となり必死に堪えている。

わたしも昔、“あれ”を何度か味わったことがあるが、とても酷い味だった。

職員の人はあまり足を綺麗に洗わないのか、吐き気がする“不味さ”が伝わってきたのを思い出す。

…それを思い出してしまったことで、わたしにも吐き気が襲ってくる。

雑音が鳴り響く中、わたしとミアは、ただその様子を眺めるしか無かった。




ポロネが足を舐め終わると、わたし達に食事の許可が出る。

お粥はすっかりと冷めきって、はっきり言って“ゲキマズ”の状態だ。

味は薄く、食べ応えなんてあるはずがない。
だが今日は珍しく、卵が絡めてあるから、まだ味がある方だ。

いつもは塩を軽く振られただけなので、その状況よりはだいぶマシなように思える。

正直、今ポロネの方を見ると食事が出来なくなってしまうので、自分のお皿に乗ったものを胃袋に詰め込むことだけに集中する。

廊下にはベチャベチャという音とポロネがすすり泣く声がこだましていた。



ようやく食事が終わり、わたし達は自分の部屋に戻ってくる。
次に始まるのは勉強の時間だ。

一応、名ばかりでも“施設”を語っているため、勉強させる時間は必要らしい。

だが、この勉強もただの勉強ではない。

全員職員の人にお尻を向け、四つん這いの状態で問題を解がなければならない。
…更に、間違えたら鞭打ち10発が待っている。

わたしは100問中3問のミスだけで済んだが、他の2人はそうも行かず、沢山の数を叩かれていた。

しかも、ポロネには特に厳しく、お尻だけじゃなく太ももにも同じ数だけ鞭を打たれている状態だった。

結局この時間もポロネの叫び声は鳴り止まず、お昼の時間を迎えて行った。



「今日はポロネの態度が特に悪かったから、あなた達2人にも連帯責任で罰を与えるわ。」

『そ、そんな…。』

通常はお昼ごはんの時間になる頃、勉強を終えたわたし達にそんな言葉がかけられた。

「罰として、今日のご飯は抜き、…あと夜まで“天使の部屋”で過ごしなさい。」

「え…。」

「い、いや…。」

『さ、最悪だ…。』

これまでも何度か連帯責任を受けたことがあったが、大体がご飯を1食分抜き、悪くてもその場で鞭打ちを20発ほどが普通だった。

…それが、今回は罰の“重さ”が全然違う。

「あ、あの…、どうして…私達も天使の部屋なんですか…?」

隣を見るとミアが震えながら職員の人に問いかけている様子だった。

「言ったでしょ?連帯責任だって。…ポロネは今日はずっと反抗的だったらから、当然の罰よ。」

「で、でも…、私はなにも…。」

「ミ、ミアッ!」

「はむんっ!?」

『これ以上言ったら不味いっ!!』

そう直感したわたしは大慌てでミアの口を塞ぐ。
突然のことに軽く抵抗されるが、今はそれどころではない。

職員の人の方を見ると案の定、不機嫌そうな表情をしていた。

「なに?…もしかして、何か文句でもあるの?」

「そ、そんなことありませんっ!?…どうか、…どうかわたし達も天使の部屋に連れてってくださいっ!お願いしますっ!!」

「……そう。いいわ、でも次はないわよ?」

「は、はいっ!ありがとうございますっ!!」

職員の人はそう言うと、ポロネの腕を掴んで歩き出す。

腕を掴まれたことで状況を理解したポロネが暴れ出すが、その頰に何発か平手打ちを与えられ、大人しくなる。

「ついてきなさい。」

職員の人が部屋を出て、わたしとミアもその後に続いた。

「…ねえ、どうしてさっきは止めたの?」

職員の人に聞こえないよう、小声でミアから問いかけられる。

「だって、連帯責任中に反抗したら、更に厳しい罰にされるんだよ。…これまで1回だけそれがあって、その時は罰の内容を5倍に増やされたの…。」

「ご、5倍…!?……と、止めてくれてありがと…。」

「…でも、“天使の部屋”行きは変わらないけどね……。」

わたしはその“原因”を作ったポロネの背中を睨みつける。

『…ポロネだけ、部屋に行けばよかったのに。』

そんな暗い感情が頭の中を覆う中、二度と見たくなかった部屋の扉が姿を表した。



ギイィィッ

相変わらず、より古めかしい扉を開ける音が廊下中にこだました。

ギイィィッ、ガチャンッ

わたし達が部屋の中に入ると扉が閉められる。
あまり日の差さない室内は薄暗く、昼間とは思えない状態だった。

そして、部屋にあるのは天井から垂れ下がった鎖手錠と、鞭、ケイン等の道具だ。

その様子にわたしの古いトラウマが軽くフラッシュバックし、ガクガクと身体が震え始める。

隣を見るとミアも同じようで、涙を流しながら自分の身体を抱きしめていた。

そして、ポロネは…。

「いやぁぁぁっ!!もう“ここ”いやだぁっ!?おうぢにかえじてぇぇっ!!」
 
本日2度目の天使の部屋で、もはや気が狂っている状態だった。

力ずくで逃げようとするところを職員の人に抑え込まれ、また頰に何度も平手打ちを受けている。

だが、今回はそれでも効かず、今もなお大泣きしながら扉へと手を伸ばしている有り様だ。

「ほら、大人しくしなさいっ!」

バヂンッ!バヂィンッ!!

「やだぁ!もうやあだぁっ!!」

…結局、ポロネの抵抗は収まることなく、そのまま強引に天井から垂れ下がった手状に繋がれてしまった。

唯一自由な足がバタ脚をするように暴れるが、疲れて力尽きるのも時間の問題だろう。

「ほらっ、2人ともこっちに来なさい。」

職員の人はそんなポロネに目もくれず、わたし達へ手招きする。

ここで抵抗しても“無駄なこと”はわかっている為、素直に従い、2人でそこに向かった。

「じゃあ、着てる服を脱ぎなさい。」

もはや、羞恥心など気にする余裕もないわたし達はそのまま従い、ボロボロのシャツを脱いで裸の状態となる。

そして職員の人に抱き抱えられ、ポロネ同様、手錠に手を繋がれた。

ガチッ、ガチンッ

「うぅ…。」

…手首に全ての体重がかかり、とても痛いが、もちろん、これで終わりではない。

職員の人はテーブルの方に向かうと、置いてあったケインを手に持ち、わたしの方に向かってきた。

「じゃあ、これから3人に罰を与えるわよ。しっかりと受けなさい。」

そう言うと、わたしのお尻目掛け、ケインを振り下ろした。

ビッヂィィンッ!!

「ああ゛っ!!」

無防備のお尻にケインが食い込み、やけつくような痛みが襲いかかってくる。

「まったく、悪い“堕天使”達。」

ビッヂィィンッ!!ビッヂィィンッ!!

「ひぎぃぃっ!?」

「しっかり反省できるように、心を込めて打ってあげるわっ。」

ビッヂィィンッ!!

「ひぎゃぁぁぁっ!?」

一つ、また一つと痛みの跡が増えていき、わたしの足がバタバタと宙をこぎ出す。

「動かないのっ!」

ビヂィンッ!ビヂィンッ!ビッヂィィンッ!!

「ああ゛っ!いっだぁぁいっ!!」

太もも・ふくろはぎ・足裏にそれぞれ1発ずつケインを入れられる。

お尻よりも薄い部分に当てらる痛みは想像を超えており、より足をバタつかせてしまう。

「…そんなに足打ちが好きなら、しばらく打ってあげるわ。」

ビヂィンッ!ビヂィンッ!ビヂィンッ!ビヂィンッ!ビヂィンッ!ビヂィンッ!ビッヂィィンッ!!

「うわ゛ぁぁぁっ!!い、いっだいよ゛ぉぉっ!!」

足全体にケインが入り、わたしの悲鳴が部屋に響き渡った。

正直、どうにかなりそうな精神状態だが、まだ罰は始まったばかりなのだ。

「ほら、次はあなたよ。足をバタつかせたらどうなるか…わかってるわね?」

「ひ、ひぃっ!?」

どうやら、次はミアの方に移ったらしい。

……この時のわたしはミアの心配よりも、自分から罰が遠のいたことに安堵している状態だった。

『もう、ずっとミアとポロネ“だけ”が叩かれればいいのに…。』



…“ここ”での時間ははっきり言って地獄だ。

職員の人は“天使になるための時間”というが、わたしにはただの拷問を受ける時間という認識しかない。

なんでも、“堕天使”と呼ばれる子にこの時間を与えることで、立派な“天使のような人”になれるのだと言う。

結局、天使なのか人なのかはよくわからないが、わたしからしたら、ただの迷惑でしかない。

手錠で繋がれている手には血が行き渡らず、どんどん冷たくなっていく。
逆に下半身は鞭やケインで打たれ続けるため、灼熱のような痛みが休みなく与えられる。

泣き叫んでも暴れても、この時間から逃れることはできないのだ。



「…そろそろいいかしらね。」

職員の人がそう言うと手に持っていた鞭を置き、わたしの方に近づいてくる。

「あ、あぁ…。」

ガチャッ

もはや、泣き叫ぶ気力もなくなったわたしの身体が抱かれ、手錠の鍵が外された。

そのまま床に降ろされると、わたしはへたり込み、立ち上がることが出来ないでいた。

ふと近くの床を見ると、薄く黄色に光った液体が、水たまりとなって広がっていた。
しかもその水たまりは、他にも2つ出来ている。

…きっと罰を受ける時間にみんなお漏らしをしてしまったのだろう。

普段は恥ずかしがるところだが、今のわたしは“罰”が終わった安心感の方が満たしている状態だ。

自分の手を見ると“手錠の跡”がくっきりと残っている。
恐らく、この跡はしばらく消えることはないだろう。

ミアとポロネも順番に降ろされ、放心状態となっているようだった。

「…立ちなさい。」

ピクッ

わたしの耳に職員の人の言葉が届くと同時、身体が勝手に行動する。

他の2人も同じようで、直立不動の気を付けの姿勢となっていた。

「少しは薬になったみたいね。…じゃあそのまま“お礼の挨拶”をしなさい。」

もはや条件反射と言ってもいいほどに、わたし達の身体は動き出す。
そして、“お祈り”をするため、横に並んで膝立ちとなり、手を組んで祈るような姿勢になった。

「「「今日も“ご教育”ありがとうございました。明日もよろしくお願いします。」」」

まったく心にもないセリフを唱え、職員の人を見つめる。

この“お礼”を言って、ようやく今日1日が終わるのだ。

「はい、いい子達ね。じゃあ部屋に戻っておやすみなさい。…あ、ご飯は明日の朝までお預けだから、そのまま寝ちゃいなさいね。」



…。

こんな“奴隷”のような日常が、今のわたしの1日なのだ。

……そして、この生活は、わたしが施設を出る15歳になるまで続くのであった。


「完」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...