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第13話 朝食は健康の秘訣

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「でも、魔法はどうするの? 私は、魔法が使えないと参加できないわよ? 同じような魔物は多いと思うわ」
「そうじゃな……」

 武器の事はさておいて、魔法が肝心だ。
 魔法くらいしか戦う手段を持たない種族にとっては、参加できるかどうかの境目だろうな。

「魔法の方は、何が問題になってるの?」
「それがじゃな、カリナ。魔法は使い方を誤ると、広範囲に及ぶことが多いのじゃ。なので、見境なく使うと、観客に危害が及ぶ可能性が高いのじゃ」
「戦う事に夢中になって、見渡す限り焦土にするような魔法を使う魔物もいるしねぇ……」

 いるのか、そんな危ない魔物が。
 焦土って……そんな魔法を使われたら、それこそ武器で怪我どうこうという問題でもなくなるな……。

「怪我をするのは良いの?」
「魔法での怪我なら気にしないのじゃ」
「魔法は良いのかよ!」

 武器での怪我は駄目で、魔法での怪我は良いという基準がわからない……。

「それなら、対個人への魔法だけ、許可すれば良いんじゃない?」
「ほぉ、対個人じゃ?」
「それなら、観客に被害が出ることはないわね」
「そうじゃ。それで行くのじゃ。あとは、威力のあり過ぎるような魔法を除外して……」

 カリナさんの助言で、対個人の魔法は許可。
 ただし、威力が高すぎて個人だけの被害で済まないような魔法は不許可など、細かい事が決まって行った。
 最後に、もしもの時に備えて、カリナさんは魔法反射で観客の壁になる事が決まった。

 俺のカリナさんを壁役に……と思ったが、本人が特等席で観戦できると乗り気だったため、反対できなかった……当日は、カリナさんにもしもの事がないよう、近くで見守ろう。

「あ、ユウヤ。そなたは闘技大会に参加するのじゃ!」
「は?」
「うむ。バハムーを倒した力、存分に発揮されるがよろしかろう」
「そうね。格好良いところをまた見せてね?」
「はっはっは。バハムーよりも強い力の持ち主が参加か……これは盛り上がりそうだな!」
「え、ちょ、ちょっと待っ……」
「ユウヤさん、頑張ってね!」
「よっしゃ任せとけ! 俺が優勝して、カリナさんに格好良いところを見せちゃる!」

 ……その後に俺、反省。
 カリナさんに頑張ってと言われたら、頑張らざるを得ない自分の性格が少し恨めしい。
 そうして、なし崩し的に俺も闘技大会に参加する事になり、今日の会議は終わった。


「マリー様、夕食時間でございます。今日はクックの自信作だそうです」
「婆やか。わかったじゃ。すぐに行くのじゃ」
「……一体どうやって?」

 会議が終わり、四天王の皆さんが各々退室した直後、柱から婆やさんがニョキっと生えて来た。
 夕食を報せるためなんだろうが、それは一体どうやって出入りするんだ?


「……あ、そうだ。こういうのはどうですか? 武器なんですけど……あれ? 皆は?」

 全員で食堂まで移動し、夕食が開始される寸前になって、何かが足りないとカリナさんが言い出した事で、クラリッサさんがいない事に気付いた。
 俺達が広場に残してきた事を思い出し、迎えに行った時、クラリッサさんは広場の真ん中にうずくまり、のの字を書いて泣いていた。
 ごめん、クラリッサさん。
 本当に忘れてた……。


「グロォォォォォォォォ、キャァァァァァ!」
「……今日もうるさいな」
「でも、寝坊する事が無くなって、良いかもね?」

 翌朝、朝を告げるヒュドラの雄叫びで目が覚める。
 昨日とは違う雄叫びだったな。
 三姉妹と言ってたし、昨日の次女の……ニーハオちゃんだっけ? そのニーハオちゃんとは違う顔が雄叫び担当だったんだろう。
 ……後半、悲鳴になってたが……単なる雄叫びだよね?

「おはようじゃ! 起きておるかじゃ?」
「おはよう、マリーちゃん」
「おう、おはよう」

 昨日に引き続き、再び朝からノックもせず突撃して来るマリーちゃん。
 ……もしこのタイミングで、俺がカリナさんと良い感じになっていたら、かなり気まずいだろうな。

「起きておるのじゃ。今日はどうするのじゃ?」
「どうするって言われてもなぁ……ここに何があるかわからないし……城の案内の続き、か?」

 昨日の城案内は、途中で終わっていた。
 もともと、1日で案内できる大きさじゃないのだが、他にやることも無いので、そう提案してみた。

「案内も良いけど、まずは朝食じゃないかしら?」
「あぁ、そうだね。昨日は朝食抜きで案内されたから、昼まで空腹を我慢するのが辛かったよ……」
「む? ちょうしょく……とはなんじゃ?」
「え?」

 何やら、マリーちゃんは朝食を知らない様子。
 昼食、夕食は昨日を過ごして、普通に食べてたのはわかるが、何故それで朝食を知らないのか……。

「昼や夜も、ご飯を食べただろ? あれと同じで、朝食べる事だよ。1日3食が、健康の秘訣だな」
「ふむぅ……わからんのじゃ。ちょうしょく……調色……朝食じゃ? 食べた事ないのじゃ。食事は1日2回じゃ!」

 マリーちゃんは今まで、朝食を食べずに過ごして来たらしい。
 それも、魔王としての生活なのかもしれない……と思っていたら、隣でゆらりと立ち上がったカリナさんが、俯いて何やらぶつぶつ言っている……これはヤバイ雰囲気かもしれない……。

「朝食を食べない……? 朝食は1日の力の源よ? 何か外せない用があって、朝食を抜くというのならまだしも……ずっと食べて来なかったですって? そんな、人の生活に対する反逆だわ……!」
「あのー、カリナ……さん?」
「マリーちゃん!」
「な、なんじゃ、突然大声を出して!?」

 ぶつぶつ言っているカリナさんの声を、耳を澄ませて聞いてみると、何やら憤慨している様子。
 このままだと爆発すると思い、俺がカリナさんに声を掛けた時には遅かった。
 俯いていたカリナさんが、ガバッ! と顔を上げ、ズザッ! とマリーちゃんの前に移動し、叫んだ。
 戸惑うマリーちゃんだが、俺にはもう止めることはできない……。

「朝食を抜くだなんて、それは世界への冒涜よ! ただでさえこんなに小さいのに、そんなんじゃ育たないわよ!?」
「そ、そうなのじゃ……?」
「そうなの! 朝食を頂く事は、人にとって1日の栄養を摂取するとともに、成長させる何かがあーだこーだでボンキュッボンなの!」
「ボンキュッボン……じゃ」

 どこがどう繋がっているのかは不明だが、カリナさんの押しの強さは謎の説得力がある。
 あまり意味のわからない部分もあったが、要は人に必要な栄養その他もろもろのため、朝食が一番大事……と言いたいんだろう。
 ボンキュッボンは……カリナさんとマリーちゃんには無理じゃ……すみません! 何も考えていません!

「わかった!? マリーちゃん、朝食は抜いちゃダメなの! ちゃんと食べなきゃいけないのよ!」
「わ、わかったのじゃ。しかし……朝はクックが……あ奴は昼からしか起きないのじゃ……」
「役に立たない鳥ね! それじゃあ、私が作るわ! 台所に案内して、婆やさん!」
「はい、畏まりました」
「うぉ、婆やさん!? いつからそこに!?」
「フォッフォッフォ、私はどこにでもいるし、どこにもいないのですよ……」

 朝食を食べるよう力説するカリナさんは、マリーちゃんを差し置いて婆やさんを召喚。
 ベッドの下から現れた婆やさんは、ちょっと意味のわからない事を言いながら笑う。
 ……というか、どうでも良いんだが……クックさんは朝起きないのか……鳥なのにな……それと、暗い魔界で鳥目とか大丈夫なのか?
 まぁ、元々ここは日が差してないから、関係ないのかもしれない……魔物だしな。


「それじゃ、料理を開始するわよー。皆はそこで見ててね?」
「はーい」
「ユウヤが素直なのじゃ……どうしたのじゃ?」
「カリナさんの手料理だからな。どうしてもこうなるんだ」

 台所……というより厨房と言った方が良い大きさの調理場に案内され、そこで袖をまくって香梨奈さんが料理を開始。
 久々のカリナさんが作る料理なんだ、小学生みたいな返事になるのは仕方ないというもの。
 何せ、食べようとした時に、召喚されたりしたからな……と思って、原因であるクラリッサさんを見ると、まだ寝足りないのか、部屋の隅に座ってうとうとしていた。


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