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直近の方針を決める会議兼昼食
しおりを挟む王都を出発し、騎竜隊とは別れて俺達は魔物の集団が多い方角へ向かう。
王都へと近づいていた集団をいくつかを潰しつつ、さらに探索の範囲を王都から離れるように広げていく途中、一旦地上に降りてお昼休憩。
エルサも体を縮めてキューを頬張ってご満悦だ。
潰した魔物の集団は、王都から離れて行っている動きをしているからなのかはわからないけど、王都の方角へ動いている集団は数の多いものではないのがほとんどだった。
ロジーナがまたデュラホースがいたりしないか、とちょっと警戒していたけど、そんな事はなくアラクネやオーガ、オーク、ゴブリンなど、これまでにも見た魔物ばかり。
まぁアラクネは本来、広い平原などにいる事はないから異常事態であるという事を否応なく思い知らされるんだけど……結構珍しい魔物の部類だしね、デュラホース程じゃないけど。
あと、アルケニーのような上位種や特別個体、突然変異的な魔物は特にいなかったと思われる。
もしかしたらどれかの集団の中に一体や二体いたのかもしれないけど、個別に気にしている余裕はなかったから。
何せ、昼食前で空腹だったし、王城を出る前にこれまでで一番疲れたうえに痛い訓練をしていたからね。
動くと打ち身になっている部分が痛んだりして、それはモニカさん達も同じだったようで、魔物を個別に種族の認識をする余裕もなく、割とっていうかかなり必死で戦っていたわけだ。
その魔物の集団との戦いは、昨日までの実践訓練とほぼ変わらず、俺は自分と外側の魔力を意識して感知しつつ錆びた剣で戦う。
監視役として、基本的にユノやロジーナが俺に付いていた……ついでにロジーナの付属品ぽくなっているレッタさんもだね。
モニカさん達は、ソフィーやフィネさんと一緒に連携の訓練で、時折アマリーラさんやリネルトさん、エアラハールさんの中から一人を加えたり加えなかったりで、色んなパターンを試していたようだ。
ユノとロジーナがいてくれるけど、基本は見ているだけで戦闘に参加しないし、俺も誰かと一緒に戦いたいというちょっとした孤独感を感じて羨ましかったりもするけども。
「王都周辺からは、大体魔物の集団がいなくなったかな?」
「近くはそうね。でもやっぱり、魔物は王都から離れようとしていて……それが、魔物が何かしらの意思を与えられていたからではないと思うけど、離れた所にはまだまだいるわね」
「まぁ、冒険者や兵士など、王都から討伐に出ているのもいるからな。付近にいれば真っ先に討伐査定るだろう。改めて、外側から近付いてきていなければ、だが」
「ですが、先程までで王都へ近付こうとする魔物の集団をいくつか潰しました。王都の周囲全てを見回ったわけではありませんが、ほとんどいなくなったものと思って差し支えないでしょう」
お弁当、というか王城で用意してもらった物を頂きながら、周辺状況の確認。
王都からは、マティルデさんが忙しそうにしていたように、冒険者さん達が近付く魔物の討伐をしているし、当然兵士さん達も協力している……騎竜隊だけじゃなくね。
移動には馬も使っているはずだけど、徒歩で往復に数日程かかる距離であればほとんど討伐されている状況とみて良さそうだ。
ソフィーが言うように、外側から近付いてくる魔物の集団もあるだろうけど、その一部はフィネさんが言うようにさっきまでの間でいくつか潰した。
これからも、王都に近い場所は冒険者さんや兵士さん達に任せて良さそうだし、元々そうだったけど、エルサに乗って空から見た限りでは発見する事もほぼないと言っていいので、少しは王都の人達も安心できるだろう。
マティルデさんとか、多少なりとも仕事に余裕が出るんじゃないかな。
まぁそれはともかく、外周というか王都から離れた村や街方面にはまだ魔物の集団がいると見られ、冒険者ギルドなり王城なりに、外からの情報というか魔物の発見報告は入ってきているらしい。
それをもとに、毎日地図上の魔物の集団がいると思われる情報は更新されているわけだ。
「西側は、昨日のリクさん達がデュラホースを討伐したし、私達もフォレストウルフを倒したわ。それに、魔物を討伐する戦力もいるみたいだから……」
「昨日みたいに南北から魔物が村に近付いている、とかでなければ大丈夫そうだよね。放っておいていいとまではならないけど」
「そうですね。王都から見て西から南方面はほとんど私達に任せられている状況ですが、こうなると南側も気になります」
フィネさんの言葉で、食事とは別に地面に広げられた地図のうち、王都から南へと視線を移す。
あまりマナーがいいとは言えないけど、昼食休憩ついでにこれからの方針を話し合っているわけだけど……ユノとロジーナ、それにレッタさんとエアラハールさん、あとアマリーラさんやリネルトさんは参加していない。
実践訓練にもなっているけど、これまでの戦いでこういう事は俺達に任せても大丈夫だからという考えらしい。
まぁアマリーラさんは、まだ獣王国へ向けた手紙の修正内容を考えているようで、リネルトさんに色々と突っ込まれつつ話し合っているから、参加できていないというのもあるけど。
戦闘になったら切り替えてちゃんと戦ってくれているようだし、そこはまぁ気にしないでおこう。
ちなみに、フィネさんが言うように西から南を任されていると言っても、さすがに全てではなく王都近辺では他と同じく冒険者さんや兵士さん達が頑張ってくれている。
俺達だけで広範囲に及ぶ全てをというのは、さすがに無茶だからね……俺が魔法を使えたら別かもしれないけど。
「西側の魔物が、さらに西へと向かっていたのであれば当然、南側の魔物も南下していると見て間違いないだろうな」
「ソフィーの言う通りね。南にある村や街は……ここね」
「街が一つと、村が二つだね。ちょっと距離が近いなぁ」
地図上では王都からの距離として、昨日行った村よりも離れている場所にそれらが記されている。
街はヘルサルだけでなく、ルジナウムとかよりも小さいようではあるけど、村との距離が近くてほとんどそれで一つの人口集中地のようにも見えた。
完全な測量とかはされていない地図のようだし、縮尺がどうなっているのかわからないうえ、実際に行ってみたら地図よりも大きかったり小さかったり、距離が近いように見えて遠かったり、はたまたその逆だったり、という事はあるけど……。
ともかく、地図で見る限りは村二つと街の距離は、徒歩でも半日くらいでそれぞれを回って戻れるくらいに見えた。
余談だけど、その街から西へ行くとクレメン子爵領に入り、野盗からヴァルニアさんやミラルカさん達を助けた森がある。
かなり距離は離れているけどね。
「ここは、あまり大きな街ではありませんが、近くの村二つに支えられています。街はこの国内では一番と言われている程に鍛冶生産が盛んで、そのため二つの村との交流が欠かせないようです」
と、地図を見ながらフィネさんからの情報。
さすが、俺達よりも冒険者として各地を回った期間が長く、さらに貴族に付く騎士でもあるね、頼りになる――。
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