1,848 / 1,913
リク射出法
しおりを挟む「リク!」
「ユノ! 計画の第二段階だ、追いかけよう!」
「こっちも何体か抜かれたわ! ユノよりはマシだけど!」
「私は、オークも一緒に相手にしてたの! だから、ロジーナより多く倒してるの!」
自分の持ち場での戦いは終わったんだろう、俺の所にユノが駆け付けて来るのと共に、ロジーナも合流。
それはいいんだけど、こんな状況でも張り合うんだね君達……。
どちらが多く倒したかとか、抜かれた数が少ないかなんて今はどうでもいいのに。
「まぁまぁ、とにかくアマリーラさんのいる所へ戻るよ!」
「わかったの!」
「またあれをやらないとね……」
ともかく、残っているオークや足を切り取られただけでまだ動いているデュラホースはすべて無視。
村へ向かっているのを追いかけるため後退し、アマリーラさんの待つ場所へと駆ける。
「アマリーラさん!」
「リク様! こちらは準備できております!」
アマリーラさんの待機していた場所は、先程ユノ達を射出した場所より少し村に近い。
数体のデュラホースには抜かれるのが当然として考えて、それを追いかけるのに備えるためだ。
ちなみにアマリーラさんの周囲には、レッタさんのものと思われる魔法によって倒されたのと、アマリーラさんに斬り割かれたデュラホースの残骸が数体。
俺やユノ達が抜かれたデュラホースの一部を倒してくれたんだろう……余裕がないから、何体か数えられないけど。
「まずは私なの!」
「いきますよ……どっせぇい!!」
一国の王女様が、そんな掛け声でいいのかな? とちょっと疑問に思うくらい、気合の入った叫びを発しつつ、先程と同じようにアマリーラさんの大剣に乗ったユノが射出される。
「見様見真似だから、着地点がずれたらごめんね……とぁ!」
「多少の誤差なら、こちらで修正するあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ユノが射出される横で白い剣を魔力放出モードに、アマリーラさんの大剣と同等の大きさにして、そこにロジーナを乗せ、想いっきり振り抜いて射出。
ロジーナは言葉の途中で射出され、数秒先に射出されたユノを空中で追い越して行き、村へとただひたすら走るデュラホースへと飛んでいく……。
……ちょっと強く力を入れすぎたかもしれない、アマリーラさんが射出するより速度が出ているようだ。
決して、以前空を飛んでいる降りた時、空中で蹴られてゴブリンの集団中央に着弾させられた事を恨んで、とかではない……と思う。
「ではリク様、行きます!」
ともかく、ユノとロジーナを射出した後は俺の番。
あまりやりたくなかったけど、デュラホースが抜けてしまった以上やるしかないし、最初の予定通りではあるけど。
「は、はい。お手柔らかに……なんて言っている状況じゃないので、思いっきり来てください!」
デュラホースのいる方向に背を向け、大きくしたままの白い剣を体の前で縦に構えて、バックステップの要領で大きく後ろに飛ぶ。
そしてそこへアマリーラさんが駆け込んで、勢いを加えて思いっきり大剣を横薙ぎに振り抜く!
「ぐっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
重い衝撃を白い剣で受け止め、間抜けな声を出しているのを自覚しながら、俺の体ごとデュラホースへと飛んでいく。
俺が射出したロジーナ程ではなくとも、ユノより勢いよく飛んでいる気がするのは、アマリーラさんの気合の表れか。
俺が思いっきりって言っちゃったからかもしれない……。
さらにそこへ、暴風が俺や先に飛んでいたユノ、ロジーナを後押しする。
レッタさんの魔法だね。
射出された俺達をさらに勢いづけるため、風の魔法でさらに遠くまでってわけだ。
もうこれ、大砲で打ち出されたよりも凄い事になっているんじゃないだろうか? なんて、滅茶苦茶だからこそどこか冷静な頭で考えつつ、村へ走るデュラホースを追い越し、その先へと着弾。
着地なんて生易しいものじゃなく、着弾だ……おそらくレッタさんの風魔法のサポートのおかげだろう、頭からではなくちゃんと足から着弾したけど、周囲には軽いクレーターっぽい物ができている。
ユノの提案に乗った計画通りではあるけど、かなり無茶をしちゃったなぁ。
こっちの班にモニカさん達が含まれていなくて良かった。
まぁ含まれていても、射出される役目は変わらなかっただろうけどね。
「リク、本当に加減というものを覚えて!」
「ごめんごめん」
「私もリクの方が面白そうだったの。今度はそうするの。で、来るの!」
「今度があるかは、議論の余地があるけど……行くよ、ユノ、ロジーナ」
正直、同じ事はもうしたくない。
エルサから何度も飛び降りていてなんだけど、もうどこの遊園地のジェットコースターとかの絶叫系も、冷静に受け止められそうな気がする。
まぁそんな事はどうでもいいんだけど……。
「うんなの!」
「わかっているわよ。まったく、自分が創った汚点が目の前に迫ってきているなんて、今更だけど何の悪夢だか……」
神様も悪夢とか見るのかな? なんて疑問を押し殺し、白い剣を扱いやすい長さに戻して、ただひたすらに走り続けるデュラホースへと構える。
ユノやロジーナも、それぞれ剣を構えて備えた。
「……いい加減、この剣も扱いづらいわね。リク、これだけ私に協力させているんだから、もっと使いやすい武器を買ってもらうわよ」
「デュラホースは割とロジーナも対処する気満々だったと思うけど……まぁそれくらいなら全然」
ロジーナの持っている剣は、適当に王城にあったのを一応許可をもらって使っているだけなので、ロジーナ自身の背丈には全くあっていない。
まぁ、大人の兵士さん達が使うようなものだからね。
どんな武器がロジーナに合うのかはわからないけど、ちゃんとした武器を用意するのはやぶさかじゃない。
今回はともかく、色々協力してもらっているのは間違いないしね。
「ズルいの! 私もリクに買ってもらうの!」
「あんたはもう持っているでしょ!? リクからお小遣いなんてのももらっているみたいだし、完全に見た目通りの子供になってるじゃない……」
なんて言い合いながら、ユノとロジーナが左右斜め前方に飛び出して迫るデュラホースに肉薄。
俺も遅れないように真っ直ぐ踏み込む。
ユノが俺から見て右、ロジーナが左、俺が正面と、先程オークを弾き飛ばしていたデュラホースへ向かったのと同じだ。
「……ふっ!」
先頭の一体の足を斬り裂く。
その間にユノとロジーナは、それぞれデュラホースの足を斬り裂いた後、胴体を蹴り上げ、斬った後の足を別のデュラホースに投げつけたりもしていた。
さっきと違って距離が違うから、ユノとロジーナの戦いが近くでよく見えるけど……あんな事をしていたのか。
デュラホースがオークと同じように空を舞っていたのは、蹴り上げたからみたいだね。
「あれくらい、できたらなぁ……とは思うけど、俺は俺でやれる事を……とぉ!」
デュラホースの足を斬るのが精いっぱいで、俺にはそこからさらに蹴り上げたり、体を流れるように動かして斬った後の足を掴んで投げるとかできない。
けど、とにかく高望みをするよりも、今の優先は走るデュラホースの数を減らす事だ。
やりたい事を試す余裕もないしね――。
0
完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~
現在更新停止中です、申し訳ありません。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~
投稿スケジュールなど、詳しくは近況ボードをご確認下さい。
よろしければこちらの方もよろしくお願い致します。
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~
現在更新停止中です、申し訳ありません。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~
投稿スケジュールなど、詳しくは近況ボードをご確認下さい。
よろしければこちらの方もよろしくお願い致します。
お気に入りに追加
2,170
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

森だった 確かに自宅近くで犬のお散歩してたのに。。ここ どこーーーー
ポチ
ファンタジー
何か 私的には好きな場所だけど
安全が確保されてたらの話だよそれは
犬のお散歩してたはずなのに
何故か寝ていた。。おばちゃんはどうすれば良いのか。。
何だか10歳になったっぽいし
あらら
初めて書くので拙いですがよろしくお願いします
あと、こうだったら良いなー
だらけなので、ご都合主義でしかありません。。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる