1,841 / 1,903
魔力感知で急所を調べる方法
しおりを挟む「あ……違いというか、他よりも濃くて魔力が集まる場所がいくつかあるね。それが三人分。微妙に位置が違うから、これの事かな?」
人の形に感じる魔力の中で、循環しているのとは別に各所に濃く固まっている魔力があるのを感じた。
それは人でいう、頭や心臓……それにこれは、肘とかかな?
細かな場所は三人それぞれで少しだけ違いがあって、濃さなども違う。
「人によって魔力の大小があるから、その違いもあるけどね。その感覚があれば、どこに急所があるか、どこを狙えばいいかわかるでしょ?」
「あぁ、成る程。確かに……」
濃さの違いなどは、魔力量の違いなんだろう……よくよく考えると感覚として捉えている魔力自体も、少しだけ違うし、捉えやすいか捉えにくいかという違いだけども。
それはともかく、確かにロジーナの言う通り体のどこに濃く魔力が集まっているのかがわかれば、そこが急所なんだとわかった。
濃く集まっているのは、ほとんどが頭や心臓などの内臓がある場所で、特に心臓と頭というか脳がある部分が濃くなっているから。
「でも他にも集まっている場所は……んー、もしかして。――ソフィー、左肘が少し痛んだりしない?」
「む、確かに少し痛むな。怪我をしたとか、使い過ぎたからではなく、単純に先程のオーガとの戦いで打ち付けてしまったからだが」
「成る程、そういう事かぁ」
「人は意識的か無意識かに関わらず、痛みのある場所や怪我をした場所を庇おうとするわ。そこに、魔力が集まるのよ」
ソフィーの左肘と思われる場所に、少しだけ魔力が集まっているように感じたから聞いてみたら、当たってしまった。
急所などを隠そうとする、というよりは守ろうとする防衛機能に近いか……だから、心臓とか脳などの場所には濃い魔力が集まっているんだろう。
つまり……。
「この感覚を、オーガと戦っている際に掴むのはさすがに無茶がある気がするけど……そういう事なんだね」
「えぇ。ユノが言いたかったのは、それがわかれば例えオーガのように剣を二度三度突き刺した程度では、中々倒せない魔物であっても、一撃で仕留められる急所がわかるでしょ? って事よ」
戦闘中とは違って、ほとんどの意識を魔力へ向けて集中しているおかげで、なんとかつかめた感覚だから、攻撃を避けるために体を動かしながらなんて、かなりの無茶だとは思う。
けど確かに、これがあればオーガをもっと簡単に倒せる事ができたのは間違いないだろう。
錆びた剣を突き刺すのは、大きく斬りつけるのとは違って急所を狙うのに適しているし、これなら心臓などの場所もなんとなくわかる。
オーガだって魔物であっても生き物だ、人間とは心臓の位置は違って近い場所を何度突き刺しても起き上がって来たけど、さすがに本当に心臓もしくは近い器官がある場所を貫けば、それで倒せるはずだしね。
だからユノは、俺が外側の魔力を掴み始めた戦闘後半から、オーガをどんどん倒す事を考えていたんだろう。
実際は、難しくてそこまで集中というか意識を深く外へ溶け込ませられなかったけど。
あの状況で、しかも初めてでそこまでっていうのは中々厳しいというか、難しすぎるよユノ……。
「さすがにあの戦闘中に気付くのはなぁ……何度も殴られていたし、外側の魔力に意識を向けてからは避けるのに必死だったし……」
魔力を放出しているから、もしオーガの攻撃が直撃したら吹っ飛ばされていてもおかしくなかったからね。
そんな中、よく説明されていない事に不慣れな状態でというのは、やっぱり難易度が高い。
「自分ができるからって、ユノはリクにも同じ事を求め過ぎなのよ。人間は、というより全ての生き物はそこまで優秀じゃないわ。手取り足取り教えなきゃいけないわけではないけど、何も教えていないのに新しい事に気付くのは稀よ」
「え、ユノはできるんだ……という事はもしかしてロジーナも?」
「当たり前でしょ? 基本的に、私にできる事はユノにもできるし、ユノにできる事は私にもできるわ。ただ、性質の違いで差は出るし、絶対でもないんだけど……特に今は人としては個性が別れているから。性格とは別の意味でね」
「成る程……」
表裏一体と言っていたから、そう言うものなのかもしれない、よくわからないけど。
見た目的には年齢とかも違うけど、一卵性双生児の双子みたいなものかな?
「むぅ、やろうと思えば誰でもできる事なの。それこそ、多くの人はやっているの」
ロジーナの物言いに、頬を膨らませて拗ねた様子のユノ。
「多くの人間がやっているって……本当に?」
さすがに、あの感覚を人の多くがしているなら、もっと共有できる何かがあると思うんだけど……。
「無意識か、意識的にかは人によるの。けど、大体の人はできるの。ほら、気配を感じるとかそんなのなの」
「気配を……まぁ言わんとしている事はわからなくもないけど……」
目で見なくても、なんとなく誰かがいるのを感じるとかそういう事だろう。
大抵は錯覚だったりするけど……魔力を感知して、気配を察するようになる事もできるのか。
確かに、空気中にある自然の魔力とは別の魔力があれば、そこに誰かがいるんだと気づけるだろうけど。
「リクの場合は、体を覆う魔力が分厚過ぎて他の人が無意識にやっているようには、外の魔力を感じられないの。だから意識的に、感じ取る必要があるの」
「それって、俺が誰かの気配を感じられないって事?」
ユノの言葉に首を傾げた。
誰かの気配に敏いわけじゃないけど、なんとなくいるなぁって感覚は多少なりともある。
魔力とは別でね。
「よく達人が、見ていないのに迫る何かを避けたりするのをリクはわかると思う。けど、あれとはまた少し違うのだけどね」
「うーん……?」
ロジーナが言っている事はなんとなくわかる。
主に物語の世界でだけど、剣とかの達人が目で見なくても気配を察知して戦うとかそんなやつだ。
魔力を感知すれば、それに近い事もできるっと考えていいのかな? 探知魔法程広く遠くは感知できないけど、数メートル程度はなんとかなるし。
「気配を感じるのと、魔力を感じるのは似ているけど少し違うの。でもほとんど同じものと考えればいいの。で、リクは体を覆う魔力を薄くする事で、外の魔力を感知できるようになるの。他の人は、そんな事をしなくても元々できているの」
「つまり、無意識でなんとなく魔力を感じ取っている人もいるけど、より確実に察知するには意識して感知すればいいって事よ。感覚を尖らせて魔力を感知できればさっきのオーガと戦った時のように、容易に攻撃は避けられるし、逆に急所を狙いすませる事もできるわ。まぁ相応の技術は必要でしょうけど」
「そうする事で、近くにいる味方にも注意ができるの、多分。あとは力加減を覚えて巻き込まないようにすればいいだけなの」
「まぁその力加減が難しいから、こうして私やユノが頭を悩ませてリクに訓練をさせているわけでけどね。わかった?」
「わ、わかったようなわからないような……?」
ユノとロジーナが交互に話す内容に、あまり頭が付いて行かない。
頭はいい方じゃないからなぁ……。
0
お気に入りに追加
2,152
あなたにおすすめの小説
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる