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魔物の集団を発見
しおりを挟む「上位の個体が紛れているなら、油断はできないね」
上位というのは、ゴブリウォーリアーなどのように単一からなる魔物の集団の中で、突然変異的に強い個体が現れたその種族の事だね。
センテから戻る際に戦った、アルケニーもアラクネの上位個体だ……突然変異というわりには、アルケニーのみの集団だったけど。
ともあれ、上位というだけあって元になった魔物の種族よりも強くなっているから、油断していると予想外の攻撃がきて危険だというのは、魔物を相手にする冒険者あるあるらしいから。
長所がさらに伸びているだけなのか、全体的になのかなどは、種族によって違うけども。
「まぁ私達はね。でもワイバーンを主体に戦っている方、まぁ今は私もそうだけど……こっちはそこまで問題にはなっていないみたいね。油断は良くないけど、余裕はありそうよ」
「空からっていうのはやっぱり、飛べない魔物を相手にする時は大きすぎるアドバンテージだよね」
一部の魔法が使える、飛び道具を持っているなどの魔物もいるけど、空を自由に飛べるワイバーンにとって地上からの散発的な攻撃は特に怖い物じゃないから。
多少攻撃に当たっても、持ち前の再生能力で一瞬で再生して問題にもならないし……もはやチートとか卑怯と罵られてもおかしくないかも。
誰が罵るのかって話ではあるけど。
ただその代わり、リーバー以外のワイバーンが魔法を使えないので、結局空から急降下などで奇襲をかけるくらいしかできないし、それを改善するために兵士さんを乗せるわけだけども。
多い利点があるとはいえ、絶対的とまではさすがに言えない……かな?
「っと、そんな話をしている間に、見えて来たわね」
「うん。えっと、あれは……」
王都から大分離れた場所、いくつかの川などを越えた場所に魔物の集団らしきうごめくものを発見。
まだ遠いからはっきりと種族とかまではわからないけど……多分、二足歩行しているタイプの魔物っぽい。
おそらく徒歩だったら一日近くかかるくらいの場所だね、川を越えたりする必要があるし。
なんて、空を飛んで移動する利点を感じつつ、後ろに合図を送って戦闘態勢。
とはいっても、俺とモニカさんは特に武器を持つでもなく、体制を整えるのは主にワイバーンとその背中に乗っている兵士さん達だ。
さらに、しばらく自由に空を動いていたのもあって、乱れがちだったフォーメーション? も整えておく。
リーバーを先頭兼頂点にした三角形の形になり、魔物のいる場所へと向かう。
兵士さん達もワイバーンも、集団で空を飛んでの行動に慣れてくれているおかげか、編隊を組むのも割とスムーズだ。
「……リザードマン、かな?」
「以前リザードマンと戦った時もそうだけど、本来湿地帯にいるはずのリザードマンが、こんな平原にいるのを見ると、異常なのだとはっきりわかるわね」
「そうだね」
俺がリーバーやワイバーン達がリザードマンと比べていたから、というわけではないだろうけど……距離が近付くにつれてはっきり認識できるようになった魔物達は、リザードマンだった。
爬虫類、それも二足歩行しているトカゲで、人間と同程度のサイズになっているあれだね。
「でもなんか、前に見たリザードマンとは少し違うような……?」
地上でうごめくリザードマン達……大まかに見て二十体前後いるだろうか。
それを観察していて少しだけ違和感を感じた。
本当に少しの違和感で、何が違うとかは言葉にできないけど……。
チラッと後ろ、ワイバーン達よりもさらに後ろを飛んでいるエルサを見ても、特に何も合図などはないので凄く危険な魔物だとかそういう事はないんだろうとは思う。
……俺がエルサではなくリーバーに乗っているのを、まだ拗ねていなければだけどね。
キューをあげてご機嫌取りをしたから、そこは大丈夫だと思うけど、とにかく。
「じゃあ目標はあのリザードマンだね。リーバー、任せたよ?」
「ガァゥ!――ガァー!!」
リーバーが、後ろにいるワイバーン達に向かって大きく吠える。
空を飛んで編隊を組んでいるとはいっても距離があるので、人の声が届きにくい代わりに、リーバーがワイバーン達への指揮を執ってくれているんだろう。
背中に乗っている俺達人間は、手旗信号のように手を使って簡単な合図をおくっておく。
「目標、眼下のリザードマン!! 皆、力を示せ!!」
集団で固まっているリザードマンの上空で、円を描くように旋回しているワイバーンの編隊。
その真ん中、隊長さんが風の魔法で大きく響く号令を発し、魔法を使える兵士さん達が一斉に炎の魔法を発動し、地上へ降り注がせた。
「ガァ!」
兵士さん達に続いて、地上に大きな炎の弾を打ち出すリーバー。
それらを観察しながら、呟く。
「全部炎の魔法だね。バラバラだと打ち消し合う事もあるからかな?」
「それと、リザードマンだからでしょうね。見た目は少し似ているけど、ワイバーンと違ってリザードマンは火に弱いわ。だからでしょうね」
「成る程」
「ガァ、ガァゥ」
「あぁ、ごめんねリーバー。リザードマンとワイバーンは全く別の魔物よね」
「ガァゥ」
抗議するように鳴いたリーバーに、謝るモニカさん。
リザードマンとワイバーンは似ていても、そこはワイバーンとしてのプライドみたいなものがあるんだろう。
ともかく、地上へと降り注ぐ魔法は全て炎の魔法で、それぞれいろんな形の炎が降り注ぐ光景は壮観だ。
リーバーみたいな弾のようになっているのが一番多いかな? その中でも、特にリーバーの打ち出した炎の弾が一番大きいようだけど。
「着弾……したけど、半分も減っていないかな?」
「そう、みたいね。通常のリザードマンだったら、さっきのでほとんど倒せていそうだけど……」
兵士さん達の魔法がリザードマンへと降り注ぎ、止めとばかりに一瞬遅れてリーバーが放った大きめの炎の弾が着弾。
空を飛んでいるこちらまで、熱を帯びた風が届くくらいの爆発も巻き起こったけど……完全に動きを止めているように言えるのは数体程度。
先制攻撃による無力化はできなかったようだ……まぁ、数を減らせただけでも十分と言えるけどね。
ようやく空に敵がいると気付いた様子のリザードマン達は、突然の魔法攻撃に驚いて混乱しているようだし。
「うーん……やっぱり前に見たリザードマンと違う気がするなぁ。ちょっと色が薄いような?」
以前、ロータ君の村付近に出たリザードマンと戦った時は、もっと肌というか鱗が濃い青だったと記憶している。
空を飛んでいて距離が離れているため、光の加減もあってそう見える気がするだけかもしれないけど……今眼下にいるリザードマンは、どちらかというと水色に近い。
「色が薄いリザードマン……もしかして!?」
「モニカさん、何か思い当たる事でも?」
「リザードマンの特殊個体……上位個体とも言えるのだけど、リザードブレイドかもしれないわ」
リザードブレイドはリザードマンの上位個体の一種で、本来炎に弱い部分が強化され、また魔法が使えるようになっているとの事らしい。
全部が上位個体って事は、もしかしたら厄介な魔物の集団を見つけたのかも――。
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