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話と休憩が終わって再び練習開始
しおりを挟む「偶然ですけどね。ロータ君がいなかったら、もしかしたら森の野盗を見つけ出してなんて事もなかったかもしれませんし。でもまぁ、謙遜してばかりもなんなのでそれは受けます」
感謝して欲しいからの行動ではなかったとはいえ、助け出した人達からすれば、そうもいかないんだろう。
謙遜してばかりなのもあまり良くないかな、と考えて謝辞は受ける事にする。
「ありがとうございます。後は、希望者の中から数人程、リク様のお世話係に選んでもらえればと考えますが……」
「うーん、それはさすがに。まぁお世話されるのが俺なので、わがままを言うつもりはありませんけど……そういった人を選ぶ自身がありませんね」
お世話をされる側で、選ぶなんて烏滸がましいとすら思うくらいだ。
それだけ多くの人がというのは、素直にありがたいと思うけどね。
「でしたら、私共の方で選ばさせて頂きます」
「すみません、お願いします」
こういった事は、俺じゃなく色々とわかっている人に選んでもらった方がいいだろう。
人を見る目があるとはあまり思えないし、そもそもお世話してもらう人は誰が相応しいかなんて俺にはわからないから。
ヒルダさんの仕事を増やして申し訳ないとは思うけどね。
「休憩のお邪魔をして申し訳ありませんでした。あの者達の事を、リク様に伝えておかないといけなかったもので。急いでいるわけではありませんが、早い方がよろしいかとも考えていました」
「いえ、お邪魔って程ではないですし、大丈夫ですよ。あ、そうだ。ヒルダさん」
「なんでしょうか?」
「その人達の中で、走るのが得意な人がいたらちょっとだけ……本当にちょっとだけでいいので、優先してあげて下さい」
「走るのが……その程度であれば、すぐにわかるはずですが……」
ヒルダさんの表情と返答から、何故そんな事を優先するのか? という疑問を持っているのが伝わる。
まぁ、当然だよね。
走るのが得意かどうかなんて、誰かの侍女やメイドさんにはあまり関わりがなさそうだし。
「いえその、センテでそうだったんですけど……」
そう前置きをして、理由をヒルダさんに伝える。
ユノがちょっとうれしそうにしていたけど……要はユノの遊び相手みたいなものだ。
実際の中身は違うはずなんだけど、見た目通りの小さな女の子、ちょっとやんちゃな女の子っぽく、センテでは宿の使用人さん達とかくれんぼや鬼ごっこみたいな遊びをしていたからね。
どうせなら、気楽にそういう遊びができる人がいればいいかなって……さすがに、王城内でかくれんぼをしたり、走り回ったりは難しいと思うから、ワイバーン達がいる運動場の一部とか借りられればってところだけども。
「成る程、畏まりました。ユノ様も含めて、皆様の余暇を満足させるのもお世話のうちでしょう。そういった事が得意な者も調べて、選ぶようにいたします」
「お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」
「よろしくなの!」
遊び相手ができるとわかってか、ユノが元気な声と共にヒルダさんへと九十度のお辞儀。
その姿は、さっきまでのスパルタ指導員や、創造神だという威厳は微塵もなく、ただの可愛らしい女の子にしか見えなかった。
「さて、それじゃあさっきの続きを……あ、ヒルダさん。今話した人達と会うのはいつになりそうですか?」
「そうですね、リク様がよろしければ本日の夕食前か夕食後か、といったところでしょうか。もし都合が悪ければ、明日以降でも構わないかと」
特に夕食前後に予定があるわけでもないし、待ってもらうのも悪いから今日でいいかな。
なら早い方にしよう。
「だったら、夕食前でお願いします」
「承りました。彼女たちにもそう伝えて心の準備をさせておきます」
「心の準備が必要なほど、大層なものでもありませんけど……はい」
感謝を伝えてくれる、というだけで俺と会うのは別に心の準備とかそういう事は必要ないと思うんだけど……まぁいいか。
この国では英雄とか言われてしまっているし、その人達からすれば助けてもらった相手。
いざ会うとなると緊張するものなのかもしれないから。
「それじゃ、さっきのようにまた魔力を調節しながら放出して、練ってみるの。結界を作るまでは試そうとしなくていいの」
「わかった。結界がまだ作れない事はもうわかったし、無理はしないよう気を付けるよ」
ヒルダさんのお茶を頂いて喉は潤ったし、そのおかげと話をしている間に、全身にあった疲労感はほぼなくなっている。
まだ多少気怠い感じはあるけど、これも無理をした代償として我慢しよう……ずっと引きずるような程ではなく、いずれ取れるだろうしね。
「とりあえず次は、この場所全体を包むくらいの魔力量にするの。ちょっと多めなの」
「えーっと……」
いまだに俺達を包み、ロジーナが手で触れているプニプニ結界は健在だ。
さっきはその結界の内側に作ろうとするくらいの魔力量だったから、そこからどれだけ魔力を増やせばいいかを少し考える。
フィリーナの作った結界の大きさは、訓練場のほんの一部。
屋内とはいえ兵士さん達が百人単位で訓練できるような場所なのだから、広くて当然だね。
しかも、天井が高いから空間という意味ではプニプニ結界の数倍どころか、数十倍くらいの大きさになりそうだ……なかなか難しいな。
とりあえずさっきよりも多めに魔力を放出しつつ、練っていく中で調整した方がいいかな。
ユノが把握してくれているようだし、もし足りなかったり多過ぎれば、厳しい言葉が飛んで来るだろうけど。
「ん……」
「できるだけ、一気に放出するんじゃなくて少しずつ放出していくの。そうすれば、魔力量の調節もしやすくなるはずなの。あと、できれば少しずつ放出しながら魔力を溜めて練っていくの」
「同時にやれってか。なかなか難しい注文だけど……やらないといけないね」
魔力量を調節する事になれるのと同時に、魔力を練る作業をする事で、結界が作れるようになったら素早くできるようになるかもしれないしね。
そう思い、ユノの言葉に従うようにしながら、しばらくの間集中して練習した。
大きめの結界のための魔力放出の練習が終わった後は、逆に俺一人を包むくらいの小さな結界のための練習になったりも。
大小様々な調節をする事で、俺が魔力放出量をコントロールするのに慣れさせようとかそういう事なんだろうな――。
「はぁ……動いていないのに、結構汗かいたな……」
ユノ指導員の厳しい指導を終えて、一人で王城内の廊下を歩く。
あ、違った……頭にエルサがくっ付いているから、完全に一人というわけではないか。
フィリーナは大量のクォンツァイタに魔力が充填されたと、ホクホク顔で研究室へ。
運ぶのも大変な量があったけど、そこは王城の人にも手伝ってもらうらしい。
ユノやロジーナは、レッタさんと一緒に大浴場へ行っている……気に入ったらしい。
ともあれそういうわけで、練習を終えてエルサと俺だけになったわけだけど……。
「やっぱり、魔力を放出し続けていたからかなぁ? 無理して結界のイメージをした時とは違う疲れもあるし――」
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