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着々と対応策が決められていく

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「小さな村とかだと、急にそんな人が入ってきたらわかりやすいし、ほぼそうなのだろうと決まったようなものだけど……王都や大きな街では……」

 人口の少ない場所であれば、住民がお互いの顔を知っている事も多いだろうし、目が虚ろとか話がおぼつかないなんて怪しい人はすぐにわかるからね。
 わざわざ小さな村などにそういった人が入り込むなんて、特別な事情でもない限りあり得ないとも言えるし、そうならほぼ確定と見ていいだろう。

「人の出入りはある程度管理されていますが、完全ではありません。必ず抜け道があります。ですから多数の人に紛れてしまえば、見つけるのは難しくなるかと。ですが、逆に言えば見つけられないわけでもありません」

 人口がある程度多い街などでは、衛兵さんが見張っていて出入りを管理しているけど……抜け道っていうのは当然あるみたいだ。
 俺が考えるのは、馬車の荷物に紛れるとかそのくらいだけど、とにかくネズミ一匹見逃さないくらい完全に管理できないのなら、気付けば入って来ているとかがあってもおかしくない。
 まぁそれでも、レッタさんに教えられた特徴であれば見つけられないって事もないみたいだね。

「人の出入りに関しては、入り込むのを防ぐためにこれまで以上に厳しく管理する必要があるわね……絶対に見逃さない、とまでは言わなくても入り込む数は減らせるはずよ」
「冒険者達の方は私が管理して、怪しい者がいないか調べますが。治安活動などで、人とを見るのはそちらの方が得意でしょうし、お任せします」
「そうね、わかったわ。――ありがとうレッタ。今の情報をもとに、至急王都、それから国内の全ての街や村に警戒とそういった人物がいないかを調べさせるわ。まぁ、目が虚ろだったり、話がおぼつかない人がいないわけじゃないから、確実性には欠けるかもだけど。それでも助かるわ」
「冒険者にも、そう言った者がいないか探させます。報酬を出すようにすれば喜んで調べるでしょう。まぁ間違いなどもあるでしょうから、こちらで確かめる必要はあるでしょうが……爆発するかどうかにかかわらず、そう言った危険人物とも言える者であればと。確認が取れた後は、引き渡しても?」
「もちろん。冒険者ギルドにもあるでしょうけど、今は一部の建物が破壊されているから仕方ないわ。こちらで拘束と隔離を行うわ。直に調べるための魔法具が完成して、確実な選別もできるようになると思うし……問題は、その後の対処ね。いつ爆発するともしれない人間を、いつまでも隔離しているわけにはいかないし、事にあたる者達も危険がある。もしかしたら、ちょっと刺激するだけで建物が吹き飛ぶ勢いで爆発するかもしれないし……」

 姉さんとマティルデさんの間で、とんとん拍子に話が進んでいく。
 俺達が蚊帳の外、というわけではないだろうけど、二人のやり取りを聞きながら俺達は余計な口を挟むことはせず、ゆっくりとお茶を飲んで待つ事にした。
 長く話をしているから、少し冷めているけど……ヒルダさんは出て行ったばかりだし、仕方ない。
 おかわりが必要なら、俺が淹れるかな――。


「ふぅ、とりあえずの目途は立ったわね。あとは、どれだけ被害を減らせるか……」

 途中で、レッタさんに意見を求めたりと、姉さんとマティルデさんの話が終わり、冒険者さん達への指示なりなんなりがあると、退室するマティルデさんを見送って、一息。
 姉さんが溜め息混じりに呟いた。
 ちなみにマティルデさんには、退室前にクランの事やリリーフラワーという冒険者パーティがいる事などを伝えておく。
 クランに関しては、ヤンさん達からも報せが言っていたらしく、すぐに開始できる準備を進めると請け負ってくれたけど、色々大変な時期なので手が回らない可能性がある事も、マティルデさんから言われた。

 まぁそれも仕方ないよね……冒険者ギルドの建物すら吹き飛ばされているんだから。
 何はともあれ、そちらの方も進めるのと同時、リリフラワーの皆の事もマティルデさんに任せたので、とりあえずは一安心だ。
 その際、ついでに中央冒険者ギルドの副ギルドマスタ-、ミルダさんはどうしているのかも聞いてみた。
 マティルデさんの補佐もしているから、王城とかこの場にいてもおかしくないはずだからね。

 すると、ミルダさんは王都以外にも破壊工作が仕掛けられていると知り、ロータ君が心配過ぎて飛んで行ったのだとか……年の差で、行き過ぎると問題がある趣味だけど……ロータ君に嫌われなければいいんだけど。
 ともかく、追ってミルダさんには帝国方面の街などにある冒険者ギルドに、こちらから指示を出したりなど連絡の中継役を頼んでいるとか。
 転んで……いるわけではないかもしれないけど、ただでは済ませないのはさすがマティルデさんってとこかな。
 とりあえず、クレメン子爵領のオシグ村、以前俺達が魔物討伐に行って子爵家の騎士が素質があるかもしれないと言っていたロータ君が、無事ならいいんだけどね。

「遅くなったけれど、りっくん。それからモニカちゃん達も、おかえりなさい。よく戻って来てくれたわね。それと、センテだけでなくアテトリア王国を救う程の功績、改めてお礼を言わせてもらうわ」
「ただいま戻りました、でいいのかな? とりあえずこの部屋の中だから、いつも通りにさせてもらうけど」
「それでいいわ」
「陛下からのお言葉、ありがたく……」

 等々、姉さんと改めて戻って来た挨拶を交わす。
 ようやく王都に戻って来たのに、こういった挨拶よりも先に魔物の集団やら爆発する人間の話など、悪い意味で盛沢山な話ばかりだったからね。
 レッタさんやロジーナも、改めて姉さんに紹介。
 創造神であるユノと対になる破壊神のロジーナ……という話に、姉さんが椅子からずり落ちそうになっていたり、エアラハールさんの口があんぐりと開いていたりはしたけど。

 何故か二人共、俺を見て妙に納得したというか無理矢理咀嚼して飲み込んだような感じになった。
 どうして、俺を見たら納得できるんだろう……不思議だ。
 とにもかくにも、一応は信用するとしたレッタさんの身の上話というか、センテの事も含めて報告と事情説明をしていると、部屋の扉が外からノックされる。
 それと共に外から聞こえる声はヒルダさんで、カイツさんの案内を終えて戻って来たみたいだね。

「ん、どうぞ」
「失礼いたします。戻りました、リク様、陛下」
「えぇ。案内の方は、無事済んだのね」
「はい。少々……いえ、色々とありましたが実際には滞りなく。おっと、皆様のお茶がもうないようですので、新しい物をご用意させて頂きます」
「あ、すみません。お願いします」

 部屋に入り、一礼するヒルダさん。
 姉さんに答えつつも、顔を上げて俺達に用意されていたお茶のカップが空になっているのを見て、すぐに新しいお茶の用意を始めてくれる。
 話し続けているから、喉が渇くのは当然とも言えるけど……必要なら俺が淹れようとしていたんだけど、ヒルダさんにそう言われたら断れないので、素直にお願いする事にした。
 ヒルダさん、こういう時俺がやるからと言って任せてもらえないと、むしろ不満そうにするからね。

 そしてその不満は、それとなーくチクッとした言葉で姉さんに向き、その姉さんから俺に刺のある言葉で戻って来るという……。
 結果的に、申し訳なさを感じつつもヒルダさんに任せた方が俺のためになるわけだ――。


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