1,704 / 1,903
新しい魔法具研究開発のためのヒント
しおりを挟む「でも、ロジーナはわからない感じだったけど?」
「あれは、頼られるのは嫌いじゃないけど安易に聞かれて、すぐにヒントを出したりするのが嫌だっただけなの。ロジーナはツンデレなの」
「デレがあるような気はしないけど、確かに素直じゃないって感じはするね。まぁ急に凄い協力的になられても、何かあったのかと心配してしまうだろうけど」
ロジーナがツンデレ、とユノが言ったあたりでこちらを見ていたロジーナ本人の目が吊り上がったけど、そこは気にしない。
地獄耳なのかな? 小声で話しているし、他の皆には全く聞こえていないようなのに。
……自分に関して何か言われている、と感じたのかもね。
自分に関する事や、興味や関心を持っている事に対しての言葉って聞こえやすいらしいから。
ともあれ、そんなこんなで内緒話を終わらせ、皆の元へ戻る。
話した内容はさすがに皆に言えないようだし、そのための内緒話なんだから、皆から見られていてもとりあえず笑って誤魔化すしかない。
「ははは……えっと、ユノがに何か思いついたみたいんだ。カイツさん、いいかな?」
「なんでしょう?」
から笑いをしつつ、カイツさんに話を振る。
強引だけど、とりあえず誤魔化せた……と思っておこう。
「ほら、ユノ。ヒントくらいならあげられるんだろう?」
この場には、マティルデさん以外ユノの素性を知っている人ばかりなので、ユノからエルフでもわからない事や、ヒントを伝える事に対して、何か言う人はいない。
というか、信じてくれる人ばかりだ。
マティルデさんは、ヒントと俺が言ったのに対して訝し気にしているけど……マティルデさんにユノの事などを伝えるかどうかは、あとで皆と相談してからってところかな。
「うん。あのね、個別に魔力の性質を詳しく調べる事はできなくても、ちょっとだけならできると思うの」
「それは……確かに。ですがそれだと、爆発する人間を見極める事は難しいかと」
「詳しく調べないとわからない、と思うからいけないの。さっきレッタが言ったように、混ぜ物が魔力にあるの。だから、その魔力を調べればいいだけなの。本来の魔力に、別の魔力が混ざっているっていう事なの」
「……ふむ」
つまり、何かしらの魔力が混ざっているかどうか。
少量だろうけど、別の魔力が入り込んでいる事がわかれば、爆発する可能性のある人間だとわかるって事、かな?
腕を組んで俯き、考え込むカイツさん。
その頭の中では今、ユノに言われた事に対して考えを巡らせているんだろう。
「そうか……! 二つの魔力がある、という事があればいいだけで何も魔力を全て調べる必要はない。なら、変質している魔力、もしくは混ざり合おうとしている魔力を調べるようにすれば……!」
「何かわかったみたいね」
「そうみたい」
急にハッとなったカイツさんが、一人で話し始める。
いや、話すというよりは独り言のようだけど。
「わかったなんてものじゃないですよ、研究者からすればほとんど答えのようなものです!」
俺と姉さんが顔を見合わせて話していたのを聞いたのか、カイツさんは喜色満面、興奮した様子だ。
ユノの言葉は、俺が聞く限りではまぁそういう事もできるのかも? ってくらいだけど、魔法具に詳しく研究もしているカイツさんにとっては違ったんだろうね。
「それじゃあ、さっき言った魔法具の研究と開発。急いだとしてどれくらいかかるかしら?」
「一日や二日、なんて短期間ではさすがに難しいですが……一週間もあれば形にできるかと」
「一周間!? それはまた、随分と短縮されたわね……それだけ、そちらの子が言った内容が凄かったって事かしら」
姉さんの問いにカイツさんが答えたないように、マティルデさんが驚いていた。
ユノから、という部分も驚いているみたいだけど……そちらに関してはマティルデさん以外さもあらんといった様子。
ロジーナだけは少し不満げだったけど。
もしかしたら、自分が言いたかったのかもしれない。
「ただ、魔力パターンの把握も含めて色々な人に協力してもらう必要があります。混ざったとは言っても、それは帝国にいる者達の魔力。エルフも協力しているから、エルフに……それからもちろん人間も……それと……」
「要請しているのはこちらだから、協力するのは当然だけど……まだ他にもあるの?」
混ざった元々の魔力をある程度は調べておく必要がある、とかだろうか? よくわからないけど、複数の種族や数から魔力を調べておく必要があるみたいだ。
カイツさんがあれこれ言うのに対し、姉さんが頷きながらも問いかける。
協力できる範囲とかもあるし、姉さんはそれも考えなきゃいけないからね……。
「量産の問題です。ある程度は既存の魔法具を改良して使えるように……やってみなければわかりませんが、そうして数を用意しようとは考えております。ですが、新しく作るとなると素材や人でも必要です。私とアルネ……他のエルフもそうですが、単純な作業もあるはずですので」
もし望む物が完成したとして……一つだけじゃ足りないから、量産する必要がある。
帝国を警戒するなら、それこそ数十とか数百発くらいは作らないといけないかも。
魔法具を作るのだから、エルフに協力を仰ぐのは当然として、他にも人手やお金などなどが必要なんだろう。
カイツさんは改良って言っているけど、魔法具自体が結構なお値段だったりするからね。
新しく作るにしても、そのための素材に対する費用が掛かって当然だし。
「要は人手と費用ってわけね。いいわ、事は国の危機にも発展しかねない事だから。無尽蔵にというわけにはいかないけど、できる限りの協力を約束する。それと、エルフに関しては村の方から幾人かが来ているわ。もし足りないようなら、村からエルフを呼んでもらう必要がありそうだけど……そちらは?」
「それに関しては、問題ありません。我が村はアテトリア王国に帰属し、協力を惜しみません。幸いエルフの村は現在大きな問題を抱えてはいない……はずですので、足りなければ補充もできるかと」
強力を約束する姉さんの問いかけに対し、カイツさんの代わりにフィリーナが答えた。
カイツさんは研究熱心なのはいい事なんだけど、それで村の事とかあまり考えていないようだからかもね。
フィリーナが最後の方に少し言い淀んだのは、センテにいる間エルフの村との連絡ができず、現状を把握していないからだと思う。
まぁそれでも、村を主導する役割になっているエルフに似合わない筋骨隆々としたエヴァルトさんなら、大きな問題もなくやってくれているだろう。
長老達も取り込んでいたようだからね……半分以上、俺に対する崇拝みたいな刷り込みとか、洗脳に近いものを感じなくもないけど。
そういえば、どうでもいい話だけどエヴァルトさんって、ヴェンツェルさんやマックスさんと話が合いそうだよなぁ、筋肉にこだわりを持っていそうだ。
なんて、俺が本当にどうでもいい事を思い出して考えている間に、姉さんがある程度考えをまとめたのか、カイツさんに微笑みかけながら話し始めた――。
0
お気に入りに追加
2,152
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる