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魔力誘導で可能になる範囲

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 アルケニーの素材やらの話のついでに、初めて王都というか王城に来て姉さん達と会う人達の事を紹介しておく。
 ロジーナに関しては、とりあえずユノと同じように知り合いとか親類など、結構ぼかして伝えておいたけども……破壊神だとかは姉さんだけならともかく、マティルデさんもいるからとりあえずね。
 あとは、一番問題になりそうなのはレッタさんに関してかなぁ。
 経緯はどうあれ、あのクズ皇帝に近い所にいたわけだし、狙いはともかくこちらから見ると帝国に協力していた人物だと見れるわけで……しかも、そのせいで色々と被害も出ているから。

「……細かい事はまた話すけど、一応レッタさんは今ではこちらの協力者、でいいのかな?」
「まぁそうね。正直、こんなに易々とアテトリア王国の女王陛下に会えるとは思っていなかったけれど……とにかく、今のリクを見たらこちらに付くしかないわ」
「そう。りっくんがそう言うのなら、一応信じておく事にするわ。でももし、何か怪しい行動をしようものなら……」

 そう言って、レッタさんを見る目を細める姉さん。
 女王として、敵国でこれから戦争が始まるかもしれない、これまで何度もちょっかいを出されて色々と実害を出して来た相手でもあるんだから、警戒するのも当然だよね。
 さすがに、ロジーナがいて今のところは情報を聞き出せているうえ、ロジーナに対して以外は特に変な行動を起こしていないけど、俺も完全に信頼しているとまでは言えないし。
 まぁロジーナを監視するついでに、ユノが見ていてくれるからある程度は安心できるんだけども。

「もちろんわかっているわ。私の生き甲斐、生きている理由はあの帝国のゴミをゴミらしく掃除する事。それとロジーナ様を見守る事だけよ。そしてそれは、リクに付いていた方が確実だとわかったから。敵対する事はないとは言っておくわ」
「ロジーナを見守るっていうのはどうかと思うけど……まぁいいか」

 俺と初めて会った時もそうだったけど、母娘みたいな感じで保護者として動いてもらった方が、細かい事情を知らない人にはいいかもしれないしね。
 ロジーナ自身は帝国そのものにはあまり興味がなさそうだし、そのロジーナと一緒にいればレッタさんがおかしな事を考えないだろう。
 まぁ考えていても、近くで見ていられるのもあるかな。

「一応、信用する事にするわね。それで、その帝国であの皇帝に近い人物の見解が聞きたいのだけれど?」

 姉さんがレッタさんにそう言う。
 心の底から信用してるわけではなさそうだけど、とりあえず話を聞いてからと、おかしな行動をしなければってところだろうね、さっきも言っていたし。

「そうね……まぁ大方予想通りだろうけど、帝国の仕業で間違いないわ。まず、人間を使う事についてだけれど、そちらは魔物を復元するうえでの副産物から派生した研究ね。私は直接かかわっていないわ。私の特殊な能力の事もあって関わったのはもっぱら魔物に関してよ」
「さっきりっくんが言っていた魔力誘導、だったかしら。それで魔物を操れってというわけね……」

 レッタさんを紹介する時に、姉さん達には魔力誘導の事は教えてある。
 だからこそ帝国に利用されて、それを今度はレッタさんが利用して復讐を……というのがあるし、どうしてマルクスさんやヴェンツェルさんなどに引き渡さず、ロジーナと一緒に俺が連れて来たのか、という部分になるから。

「魔力誘導はそうね……人間よりも魔力が生態に見説に関わっている魔物だからこそ、ではあるのだけど。ちょっとやってみるわ」
「え……?」

 そう言って、俺の方へ指を向けるレッタさん。
 例を見せた方が早いって事なんだろうけど……なんで俺?
 なんて戸惑っている間に、レッタさんの指先から以前にも見た赤い糸のような物が、俺の体へと延びて来る。

「……っ! これは、全力でリクの魔力を私のものにしようとしているのだけど、さすがに魔力量が多過ぎるわ。どれだけやっても、リクの魔力は操れないし、同じく意思も」

 俺のお腹辺りに伸びた糸はだけど、接触しても俺にはなんの感触もない。
 レッタさんの様子を見るに、特に動いているわけでもないのに汗を流しているから、全力というのは本当なんだろう。
 魔力量によって、誘導できるかどうかも変わるのか……。

「ふぅ……そして今度はこちらに……」
「え!? 体が勝手に……!」

 大きく息を吐いたレッタさんが、今度は俺の隣に座るモニカさんへと指先……そこから出る糸を伸ばす。
 すると俺の時とは違って、モニカさんが驚きの表情のままで服をつまんでお辞儀。
 カーテシ―だったっけ? 貴族のお嬢様とかがやるような礼だね。
 モニカさんはそんな事をこれまでしたのを見た事がないので、つまりこれはレッタさんが魔力誘導を使っているからなんだろう。

「これくらいが限界ね。今みたいに、魔力を外部から操作してほんの少し動かす事ができるの。本来は精神に作用するのだけれど、今のはわかりやすく体を動かした。ただ、これには色々と問題もあって……」

 レッタさんが教えてくれた内容は、魔力誘導も万能というわけではないという話だ。
 体を動かすにしても、さっきモニカさんがやったようにお辞儀をする程度で、ほんの少しの間しか続かない事。
 さらに今のようにほんの一メートルから二メートル程度の距離でしかできない事。
 本来一番効果を発揮できる精神への左様なら遠くても可能だけど、それも少しだけこう動こうか、あちらに行こうか、という程度に思考を誘導するくらいのものらしい。

 多少動きを鈍らせる事はできるけど、人間など意思が強い生物には大きな効果は期待できないんだとか。
 逆に、本能で動く事が多い魔物などには、もう少しはっきりと思考を誘導できるみたいだ。
 ただし、それも一度に大量に動かす事はほぼできないに等しいので、多くの魔物を操るみたいなのはできないと。

「あれ? でもセンテの時は……」
「あの魔物達は、全て復元された魔物よ。復元する際に色々とできるように研究していたのは、リクも知っているでしょ? 私がやっていたわけじゃないけど……でも、魔物を集めて操る方法として、私の魔力誘導の影響を受けやすくしているの。そうね……今リクが従えているワイバーン。あそこまで意思があれば別だけれど、本能が強い魔物は大体なんとかなるわ。それでも、完全に手足のように操れるわけじゃないけど、それでも多くを動かす事ができるの」
「つまり、帝国で研究している魔物を使うのなら、という限定条件なわけね」
「でも、それも一部のみ。全ての魔物に同じ復元の仕方をしているわけじゃないから……」

 姉さん、というか女王陛下相手でも臆する事なく、いつもの調子で話すレッタさん。
 まぁ帝国の皇帝の近くにいたんだから、そういう偉い人相手でも気後れしないのかもしれないけど。
 ともかく、レッタさんの話によるとセンテに集めた魔物達が魔力誘導を受けやすくした魔物の全てで、他の場所、これから先復元される魔物に関してはそういったのは付加されていない可能性が高いとか――。


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