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アルケニーとの戦闘の終了

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「ふぅ、驚いたけど……対処は難しくないってか、他の足と同じでいいね。まぁ、これまで縦ばかりだったのが、横からも来るとなると避けにくいけど」
「リクさんって、結構戦いながら呟くわよね。まぁそれだけ余裕があるって事なんだろう……けどっ! フレイムブラスト!」

 周囲を警戒しながら、どこから足が来ても対処できるよう構えつつブツブツと独り言を呟いていると、後ろからモニカさんの声が。
 なんとなく、癖で考えを口に出しちゃんだよねぇ……なんて、俺が答える間もなく頭上で面のように重なった黒い糸を、モニカさんが炎を炸裂させて燃やした。
 糸を吐き出すだけじゃ足りないと考えたのかな、こんな事もできるのか。
 燃やして焼け落ちたけど、重なる黒い糸はまるで目の細かい網目のようだった……俺達、アルケニーからしてみれば投網漁の対象とか?

「なんてね……そっちがそうならこっちは……てぁっ!!」
「KISI!?」

 体を叩き潰す、のではなく潰しながらも飛ばすように鞘を思いっきり薙ぎ払う。
 左手の鞘をぶつけたアルケニーが、別のアルケニーと足を絡ませ、打ち上げられて遠くへと飛んで行く。
 ホームラン、って感じかな? なんてのんきに考えていたら……。

「こらー!! 突然空からアルケニーが降ってきたら危ないだろうリク!!」
「あちゃー……」
「あっちは、ソフィー達のいる方ね。リクさん、もう少し味方の位置とかを考えてね?」
「はーい」

 アルケニーに対してとか武器を振るう際の掛け声ではなく、ソフィーの怒声が響いた。
 飛ばしたところの近くにいたみたいだ……うん、これは俺が悪い、ごめん。
 心の中で反省し、モニカさんにも返事をして縦横と迫るアルケニーの猛攻に対処しながら、今度は皆の邪魔をしないように……。

「な、なんだ!? 空からアルケニーが!? 増援か!?」
「ご、ごめん!! そっちに飛ばしちゃった!!」

 と、逆の方向でルギネさんの叫びが聞こえたので、反射的に叫ぶようにして謝っておく。
 うーん、森で魔物と戦っていたのもあるせいか、一人で戦うのに慣れちゃって周囲……見える範囲ならともかく、離れた場所の事まで考えない戦いの癖が付いちゃってるのかも。
 さすがに、すぐ近くにいて援護してくれるモニカさんには、何か被害が及ぶような事はしないようにできるけど……力が強すぎるのも考え物ってところかな? いや、俺の戦い方が悪いだけなんだと思うけど。
 なんて、見える範囲なら大丈夫と思っていた時期が俺にもありました……。

「ちょ、ちょっとリクさん!?」
「あ、ごめん……」

 アルケニーの体の下に滑り込んで後ろに出た後、アルケニーが振り向く前に白い剣で一刀のもと斬り裂く。
 すると飛び散ったアルケニーの緑色の液体が、モニカさんに降り注いでしまったようだ。
 おかしいな……モニカさんやカイツさんと森の中で魔物と戦った時は、こんな事はなかったのに。
 ……あの時は、大きめの魔物と戦う事はなかったし、モニカさんとカイツさんの援護で簡単に倒しているだけだったからかもしれない。

「でもモニカさん、こういう戦い方はどうかな?」

 なんて、懲りない俺は魔法で黒い糸を燃やすだけになってしまっているモニカさんに、アルケニーに対する戦い方を提案。
 溜め息を吐きながらも、勢いよく斬り裂いて緑色の液体を撒き散らさないのなら……と渋々了承するモニカさんに頷き、思いついた動きを実行。

「ほら、こっちだ! モニカさん、合わせて!」
「KISI!?」
「えぇ!――相手はりくさんだけじゃないわよ!」
「KI……」
「「せい!」」

 再びアルケニーの体の下に滑り込んで、後ろに出た後挑発するように叫ぶ。
 こちらを振り向こうとしたアルケニーに対し、飛び上がって体の中心辺りに剣と鞘を突き刺す……それと同時、逆側に残っていたモニカさんが槍を突きだし、顔付近に深々と突き刺した。
 同時に攻撃を受けたアルケニーは、断末魔の叫びすら上げられず、そのまま体を支えていた足の力を失い、地面に落ちる。

「うん、これならいけそうだね」
「まぁ、リクさんが囮になってくれるからだけど……それでも、あまり使える手じゃないわ」
「え?」
「フレイム! っと。糸の対処もあるし……ほら、そろそろ終わりよ?」
「あー、そうみたいだね……」

 吐き出される黒い糸を焼くため、モニカさんは魔法を使う必要があるし、そもそもアルケニーは俺達が突撃した時点で二十体を切っている数だった。
 そのうえ数体を俺達が倒していくのと同じく、他の場所でも皆が戦っているわけで……。
 気付けば、残っているアルケニーは俺達の近くに一体動いているだけだった。
 他の場所では、まだ少し戦闘音が聞こえるから多少は残っているんだろうけど。

 大きなアルケニーの残骸が邪魔で、離れた場所を見る事はできない……でも音の数自体は確実に減っているようだし、モニカさんの言う通りそろそろ終わりのようだ。
 それじゃ、こっちも決着を付けようかな。

「モニカさん!」
「わかってるわ! 最後だから大盤振舞よ! フライムバーン! ついでにこっちもっ!」

 近くにいるアルケニーの最後の一体が、俺に向かって口を震わせるのが見えた……黒い糸を吐き出そうとしているんだろう。
 予備動作としては小さいけど、他に注意を向けなくていい状況になれば何が来るのか予測するのは簡単だ。
 モニカさんに声をかけると、既に準備を終えていたのか、自身の魔法と槍の魔法を発動。

 これまで以上に大きく燃え上がるアルケニーの顔。
 黒い糸は吐こうとする先から燃やされているはずだ。

「KISISI……!!」

 それでも、最後のあがきと炎が邪魔で俺の事なんて見えていないだろうにもかかわらず、こちらへと足の刃を数本振り下ろしてくる。
 見えなくなる直前まで見ていた俺のいた場所、そこに闇雲に振り下ろされる刃なんて怖くもない。
 少し移動しただけで当たらないし、このまま白い剣で斬り裂いて終わりでもいいけど……。

「よし! せぁっ! っと……そしてこれをっ!!」
「KISI!?」 

 やる事を決め、振り下ろされ、地面を抉って再び持ち上げられた足の刃の一つに狙いを定め、下から掬い上げるように白い剣で半ばから斬る!
 宙に浮いて行き場をなくした刃の先、クルクルと回転する軌道を見極めて飛び上がり、足の刃の斬った部分を蹴った!

「硬い外皮も、自分の足の刃には貫かれるんだ……ねっ!」
「KI……」

 俺の毛った足の刃の先は、アルケニーの顔の下辺りに深々と突き刺さる。
 外皮の硬さよりも、刃の方が硬かった……もしくは鋭かったってところだろう。
 さらに追撃として、一度着地した後再び飛び上がり、燃えている顔を越えて背中に深々と白い剣を突き刺してとどめを刺す。

 ……あんまり、蜘蛛の体に乗っていたくないけど、足から伝わってくる感覚は石の床に近い硬さを感じるね、それだけ外皮が硬いって事なんだろうけど。
 蜘蛛らしく、短い産毛のようなのが背中を覆っていてうにょうにょしているのが気持ち悪いけど。
 というか、毛も動かせられるのかな……? いや、それはどうでもいい事かと、突き刺した白い剣を抜いてアルケニーの背中から降りた――。


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