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行方不明になった冒険者の捜索
しおりを挟む「情報ありがとうございます。あとは……ギルドマスターの判断次第ですが、捜索隊を出す事になるでしょう。まぁ、既に暗くなってしまっているので、森の探索に慣れた一部の冒険者に頼む事になるでしょうが……」
捜索隊か……暗い森の中だから明りも必要だし、魔物に襲われる可能性が高いため、そこらの冒険者に頼むとか、昼と違って大勢でというわけにはいかないんだろう。
遭難者を助けに入って遭難してしまうという、二次災害とか怖いからね。
だったら……。
「その捜索、俺がやりますよ。とはいっても、俺だけだと広い森を調べるには不十分なので……」
ヤンさん達の所へ向かおうとする男性職員さんを引き留め、考えた事を提案する。
「リク様には、森の中で冒険者達の安全を担ってもらいましたが……よろしいのでしょうか?」
「構いません。むしろ、戻ってこない冒険者を探すのも、安全を確保する役目でもあると思いますから」
窺う男性職員さんに頷いて、女性冒険者さん達の捜索を請け負う。
とはいっても、さすがに男性職員さんの判断だけで行くわけにもいかず、一度ヤンさんと相談してからだけど。
そうして、緊急の案件として忙しそうにしているヤンさんに取り次いでもらい、冒険者捜索の案が練られた。
さすがに俺なら一人で森に入っても平気とはいえ、闇雲に探すわけにはいかないし、全部をカバーできないのはさっきも考えた通りだからね――。
「それじゃ、疲れているかもしれないけど頼むよ、リーバー」
「ガァゥ!」
「こっちは任せて、リクさん、フィリーナ! 気を付けて!」
再びリーバーに、今度は俺とフィリーナが乗って空へと飛び立つ。
地上で俺を見上げながら見送ってくれているモニカさんに手を振って、真っ直ぐ森へと向かった。
行方不明の冒険者パーティ「華麗なる一輪の花」の捜索は、俺が森の深い部分……俺達が発見した場所を中心に、リーバーで向かって探すのがメイン。
それ以外にも、手の空いている冒険者さん、王軍の兵士さんに頼んで、森の外側の浅い部分を捜索してもらう。
これらは、森の境界近くにいる可能性を考えてだ……とはいえさすがに、森に入って魔物と戦っていた冒険者さん達の多くは疲れているため、無理をさせられないと少数だ。
大体は早めに森を出た、もしくは出ざるを得なかった冒険者さん達だね。
怪我をしていない人に限るけど。
そこに、モニカさん、ソフィー、フィネさん、カイツさん、アマリーラさん、リネルトさんも加わってもらっている。
その他の人達は、もしかしたら先に戻っていたのかもという僅かな可能性のため、街の中での捜索。
こちらは、冒険者ギルドの職員さんが主導するみたいだ……まぁ街の中なら危険はないし、任せておけばいだろね。
……これで本当に、実は戻って来た時に受付を忘れて、街にいたとかだったら捜索している女性達、色々と言われるだろうなぁ、仕方ないけど。
それから、フィリーナが俺と一緒に付いてきているのは森の中で捜索をするためだ。
最初は、エルサを連れて来ようかと思ったけど……エルサなら、探知魔法で探せるし明りも付けられるから。
でも結局、そんな猶予があるかどうかわからないため、フィリーナと行く事になったわけだね。
エルサを連れて行く場合、一旦センテに行って合流してからになるから、時間がかかるし。
カイツさんでも良かったんだけど、その場合暗い場所では方向音痴が発動する恐れがあるとして、フィリーナが妥当となった。
昼の森では、的確に木々から情報を得て案内してくれていたけど、それはあくまで森の中でしかも明るいからみたいだ。
暗くなるとなぜか、変な方向に案内される可能性が高くなるとはフィリーナの言葉。
エルフの謎とも言われているらしいけど……カイツさん個人の方向音痴が、エルフの種族としての謎にまでなるとは。
ともあれ、状況が状況なので方向音痴が発動せず間違いなく案内できるフィリーナになったってわけだ。
「空から見下ろしているから、よくわからない部分もあるけど……大体この辺りだったと思う」
森の上空、大体ではあるけど森の中で女性冒険者さん達を発見した場所付近まで来る。
発見した時は地上からで、今は暗いのと空からだから正確な位置はわからないけど、とりあえず大まかな位置だね。
「ちょっと待ってね……ライティング! っと。ちょっと強めにやっているから、これで下も見えるはずだけど……」
「ありがとうフィリーナ。えっと……?」
リーバーに移動を止めて滞留してもらい、背中から身を乗り出して下を見ても真っ暗でなんとなく森が広がっている、というくらいしかわからない。
そんな中、俺の後ろに乗っているフィリーナが同じく身を乗り出し明りの魔法を使い、森を照射。
扇状に広がる光は、弱ければ届かないだろうけどフィリーナは強めに使ったらしく、ちゃんと地上まで照らしてくれている。
「……空から見る限りは、いないみたいだね。まぁ、木の陰にいたら明りとは関係なく見えないけど」
「そうよね……うーん、やっぱり森に降りてみるしかないかしら?」
目を凝らしてみても、明りに照らされている部分……木々の合間には女性冒険者さんは見当たらない。
なんとなく、魔物かな? と思うような影はあったけど、それくらいだ。
魔物には今構っていられないから、冒険者さんが襲われているとかでない限り無視でいい。
ただ、どれだけ明りを照らしても木の陰などは空からはよく見えないため、探している場所に絶対いないとまでは言えないか……。
「ん? リク、あれは何かしら?」
「どうしたのフィリーナ……って、煙?」
後ろから俺の肩越しに何かを指し示すフィリーナ。
森の東側を指しているそちらを見てみると、森の中からもやっとしたものが一つの線のようになってゆらゆらと立ち上っていた。
一瞬、レムレースかと頭の中で警戒するけど、よく見れば単なる煙のようだ。
「煙が上がっているって事は、狼煙……というよりは焚き火をしているって事かな?」
「でしょうね。遠くに知らせる狼煙とは少し違うわ。でも、今森の中で焚き火をするようなのって……」
森の中から立ち上っているその煙は、遠くまではっきりと何かを知らせるような太さはなく、焚き火をして立ち上る煙のように見えた。
今森の中は、魔物を除いて人は行方不明の冒険者さんだけ。
他に人はいないはずで、焚き火を必要とするのって……。
「さすがに、魔物が夜に森で焚き火をするなんて事は……ないよね?」
「……魔物によるとしか……絶対ないとは言えないわ」
魔物でも、焚き火をするようなのはいるのか……まぁ、ゴブリンとかは人とは違ってかなり原始的でも、人に近い事をするみたいだから、いてもおかしくないのかもね。
まぁゴブリンは基本的に意志疎通ができないうえ、人を見たら問答無用で襲い掛かって来るうえ、多くの群れを形成するため、人に近い事をしていても討伐対象なのは変わらないけど。
ちなみに、何かの物語であるような、ゴブリンが人の女性を捕まえて云々かんぬんというのはないらしいけど、まぁ安心できないよね。
悪食で他種族ならなんでもどころか、同種族でも食べるらしいから、捕まるはつまり単純に食料になるって事を意味するわけだし……想像したら、鳥肌が立ってしまった――。
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