1,616 / 1,903
今後のためになりかけラミアウネを処理
しおりを挟む「花粉から出るチビラウネというのは、あくまでラミアウネの分身みたいな物のようです。ですので、あちらで今モニカ殿が燃やしているなりかけとは違うのです。とはいえ、どのように発生するのかは、判明していないのですが……」
「そうだったんですね」
土の上で、じっくりとラミアウネのなりかけを燃やしているモニカさんの方を見ながら、カイツさんの言葉に納得する。
ラミアウネの増え方って、花粉をばらまいてチビラウネを発生させ、その成長で……となんとなく考えていたけどどうやら違うみたいだ。
まぁ、あの無数にばら撒かれる花粉のチビラウネが、全てラミアウネに成長するんだったらもっと大量にいてもおかしくないか。
「オークなどとは違い、先程の叫びがあったようにマンドラーゴのような植物としての特性を持っているのでしょう。花粉もありますし……」
「だとしたら、土から生えているのを抜き取った時、音を出した以外は動かなかったのも……?」
「おそらく、一定まで成長しなければ、先程戦ったようなラミアウネとして動き出せないのでしょう」
成る程なぁ、ラミアウネのなりかけを発見した事での推測も混じっているだろうけど、なんとなく生態がわかった。
植物のような特性があるのだとしたら、花粉ではなく種子とか株分けみたいな方法で数を増やしているんだろう。
もしかすると、この森で多く発生したのも木々と同じく、緑の光が影響しているとかかもしれない。
「ふぅ、こっちは終わったわ」
「お疲れ様。ただ……」
「……他にもいたのね」
モニカさんの焼却作業を待ちつつ、カイツさんと周辺を簡単に捜索した結果、木の陰などに十を超えるラミアウネのなりかけが生えているのを発見した。
それらは、カイツさんが引き抜いたのよりも花弁が大きかったり、逆に小さかったりと、それぞれ成長途中なのが窺える。
地面から生えて花を咲かせている、という部分だけ見てみれば、間違いなく他の植物と同じようにしか見えないけど……それらは間違いなく魔物だ。
「もしかしたら、ここがラミアウネの拠点というか……棲み処なのかもしれませんね」
「GYAAAAAAA!!」
「その可能性は高いですね。だからこそ、他のラミアウネもここに集まってくるのかもしれません」
「GUAAAAAAA!!」
「じゃあ、ここを潰しておけば、これ以上増えないかもしれないわね……」
「GUOAAAAAAA!!」
「他にもあるかもしれないから、絶対じゃないけど……少しでも増える速度が遅くなれば、皆も助かるかな」
「KISYAAAAAAAA!!」
「魔物を掃討するなら、そういった場所も探して潰していかないといけないかしら」
「KYAAAAAAAA!!」
「完全に森から魔物を駆逐するとしたら、そうでしょうね。森が残っていれば、いずれまた元に戻るでしょうが、今のようなバランスが崩れた状態ではなく、保たれた状態に戻るだけでしょうし」
「IYAAAAAAAA!!」
「まぁ森をどうするかは、近くのヘルサルやセンテにいる人達次第でしょうけど……というか、やっぱりうるさいですね」
「YAMETEEEEEEEEE!!」
「まぁ、マンドラーゴよりはマシですし、慣れればこうして話もできますから」
「TASUKETEEEEEEE!!」
「……段々、バリエーション豊かになっていくのは気のせいかしら」
「YURUSITEEEEEEEE!!」
「き、きっと気のせいだよ、うん」
「SINITAKUNAIYOOOOO!!」
スポンスポンと、土から顔を出しているラミアウネのなりかけを引き抜きながら、カイツさんやモニカさんと話しているんだけど……慣れたとはいえ叫び声が耳に痛い。
段々と、断末魔の叫びっぽく、それでいて助けを求める人の声のようにも聞こえて、罪悪感を抱くようにもなりかけているけど、できるだけ気にせず作業を続ける。
もしかすると、叫びを聞き続けているとそうした罪悪感に苛まれるような、精神攻撃みたいなのも叫びに混じっているとか?
いやいや、うるさいだけで特に何かの効果はないって、カイツさんが言っていたからきっとそんな効果はないはずだ。
音を発しているだけで、人の叫び声のように聞こえるのは気のせいのはずだし、そもそも魔物だから人の言葉は喋れたりはしないはずだからね。
うん、これはきっと気のせいなんだ……ラミアウネの花を引き抜いているだけなのに、何故か脳裏に襲われる人々の姿が浮かぶけど、実際にそんな事はないはずなんだから――。
「はぁ……ようやく終わったわね。この森に入って、一番疲れた気がするわ」
「木々の間を歩くのも、結構大変なんだけどね……うん、俺もなんか疲れた」
ラミアウネのなりかけ、生えていた花を全て引き抜き、ひとまとめにして燃やし終えて一息。
モニカさんが言っているように、ここまで歩いてきた事や魔物と戦った事よりも、この作業が一番疲れたかもしれない。
体力的には一切問題ないんだけど、精神的な疲労感が凄い。
「ふむ、もしかしたら声……音そのものに効果はないにしても、聞く者によっては消耗する何かに越えてしまう事もあるのかもしれませんね」
燃えて灰になったラミアウネのなりかけを見つつ、研究者らしく何やら考えている様子のカイツさん。
ラミアウネそのものには研究心を刺激されてはいなかったようだけど、俺達やカイツさん自身の疲労から少しくらいは興味を持ったのかもしれない。
まぁ多分、ちょっとした疑問でも考えずにはいられないような、癖というか習性みたいなものなんだろうけど。
「思った以上に手間がかかってしまったわね。他の冒険者はどうしているかしら?」
「……大きな動きは、特にないようです。変わらず一部の冒険者が、こちらの方向に進んでいますね」
「それじゃ、とりあえずそっちの様子を見に行こうか」
そう言って、ちょうどこちらに来たラミアウネを追加で二体ほど倒しつつ、本来の目的である冒険者さん達の様子を見るため、西へと足を向ける事にした――。
「……結構歩いたと思うんだけど、誰とも会わないね?」
「ふむ、少々お待ちを」
西へ移動を開始して、体感で数十分くらい。
最初にカイツさんが木々から得た情報によると、俺達のいる方へ向かっていた冒険者さん達はあまり離れていないようで、すぐに見つかると思っていたんだけど、今のところその気配は全くない。
お互いが距離を縮めるように進んでいれば、もう会っていてもおかしくないはずなのに……。
すれ違ってしまったかな? と思って呟くと、足を止めたカイツさんが木に手を当てて探り始めてくれた。
「まぁ、これだけ視界が悪いと、すぐ近くを通っても気付かなかったりするかもしれないね」
森の中は剣を大きく横に振るだけで、木の幹にあたってしまう程木々が密集している。
そのため、数メートル先が見えないくらい視界が悪いし、かろうじて日の光が差し込みはしているけど薄暗い。
さらには木の葉などの植物が風に揺れて擦れる音で、結構ざわざわしているため、近くにいてもすれ違う事だってあるだろう。
慣れている冒険者さんなら、魔物を集めたり見つからないよう息を潜め、できるだけ音を立てないように移動したりもするはずだから……近くを通っても気付かずすれ違う、なんて事も考えられるかな――。
0
お気に入りに追加
2,152
あなたにおすすめの小説
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。
カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。
一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる