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熱烈歓迎は魔力補充のため
しおりを挟む「そう言えばそうだったな」
「リク様なら魔法が使えなくても、やってしまいそうなのですよね」
「本当にやっていないからね? まぁ一部で広場みたいなのはできたけど……あと、かなり大きな穴というか荒野も……」
否定しつつも、そういえばと思い出し、ラミアウネと戦った結果の広場や、レムレースが原因の荒野を思い出して小さく呟く。
ただそれは、ソフィーとフィネさんに聞こえていたようで。
「やっぱりか……」
「リク様ですから」
なんて、呆れ混じりの息を吐いていた。
「広場は……まぁ俺が原因と言えなくもないけど、最終的にはリーバーとか……そもそもラミアウネと戦うためだからね? あと、荒野はほとんどレムレースがやった事だし」
「広場や荒野ができるくらいの戦闘を、単独でやって平気な顔をしているのが、リクらしいって事だ」
「そうですね。単独に限らず、冒険者のパーティ単位でも絶対耐えられませんし、できません」
「そ、そうかな?」
「この分なら、リクの軌跡を追うだけで何かしらの目印ができそうだ」
「確かに。リク様の歩みですね」
「いや……」
「そのうち、地名にリクの名がついて呼ばれるだろうな」
「リク様の森、リク様の丘、とかでしょうか?」
「からかってるよね、二人共?」
「そんな事はないぞ」
「えぇ、そうですとも」
なんて、ソフィーもフィネさんも首を振って否定するけど、顔が笑っているんだよなぁ。
「リクの名を地名に付けて、ここはどういう事が起こったのか、なども伝承されそうだな」
「では私は語り部になりましょう。リク様の偉業を伝えつつ、危険も同時に伝えるんです」
「危険を伝えるのは重要だな。リクの名が付く程の場所だ、深い穴でも開いて、落ちたら助からない場所とかもありそうだ」
「さすがにそんな、落ちたら危険な穴を作った事はないんだけど……多分」
俺が知らないだけで、もしかしたらそういった穴もできていたのかもしれない……ヒュドラー戦前の、先に迫っていた魔物を殲滅するために放った魔力弾とか。
ともあれソフィー達は、俺の否定などに聞く耳を持たず、こちらを笑って見ながらいろいろ話している。
これまでやってしまった事もあるため、強く否定できないせいだろうけど……こういう時、相手が女性だからってのもあるかもしれないけど、あまり言い返せない俺は無力だ……。
そんなこんなありつつ、二人にからかわれたけど料理が美味しかったので気分良く食事を終え、交代で別の人が休憩に来るまで談笑した……ほとんど俺をからかうのに終始していたけど。
くそう、いつかソフィーとフィネさんの事を、逆にこちらからからかってやる。
なんて、おそらくできそうにない事を考えながら、マックスさんや獅子亭の人達に挨拶して、外へ出る。
料理のお金は、最初マックスさんは遠慮していたけど、ちょっと強引に払っておいた。
ちなみに、ソフィー達が話していた通り払ったお金は本当に安かった……あの美味しいステーキが、銅貨十枚で食べられるって、安すぎる。
ステーキ以外にも、スープやパン、サラダとかもあったし、肉だけでもかなり量が多かった。
大食漢でも満足できるくらいの量で、俺はちょっと食べ過ぎなくらいだし……美味しいから全部食べられたけどね。
そんな事を考えながら、リーバーと合流してセンテへ向かう。
アイシクルアイネウムを哨戒していた兵士さん達の言っていた、俺の魔力弾が隔離結界まで届いて薄くなっていたというのを確認しようかな、と思ったけど、暗くて多分ほとんど見えないだろうからやめておく。
兵士さん達は、ちゃんとレムレースの事も含めて回収班や王軍に連絡をしてくれていたのも確認した。
回収班の人達は、俺とレムレースが戦っている時、とんでもない音が響いていたのでおそらく俺が何かしているんだろうと、近付かなかったらしい。
来ていたらほぼ間違いなくレムレースの魔法に巻き込まれていただろうから、被害がなくて良かったと安心した。
「ふぅ、ただい――」
「リクが帰ってきたのだわー!」
「おっと!」
センテに入り、宿の庭に行くリーバーにお礼を言って別れ、中に入ると飛び込んで来るモフモフ……というかエルサ。
ポスッという音を立てて俺の腕に収まった。
「あ、間違えたのだわ……ふわぁ、だわ」
「目的はそっちか……」
熱烈歓迎されて嬉しい限り、と思う暇もなく、エルサが俺の腕から抜け出し、いつものように頭にドッキング。
魔力補充を始めてまるでお風呂に入った時のような息を漏らしていた。
せっかくモフモフが腕に収まったから堪能しようと思ったのに、ちょっと残念。
「ん、いつもよりお漏らし魔力が少ないのだわ。何かあったのだわ?」
「そんな、俺の魔力がいつも粗相しているみたいに……まぁ、色々あってね」
意識していない事とはいえ、俺の魔力はおしっこじゃない。
漏れ出ているのは間違いないだろうけど、それで迷惑を掛けたり汚したりなんてこれまで……きっとない。
レムレースとの戦いとかで、かなり魔力を消費しているせいで総量が減り、漏れ出す魔力が少なくなっているのは本当だろうけど。
「そうなのだわ? まぁいいのだわ。それより疲れたのだわ、こうしてしばらく充電しておくのだわ」
「一瞬で興味をなくしたね……はぁ、まぁいいか」
エルサにそっけなく言われて、ちょっとショック。
宿に入ったばかりで、森に入ってからの事とかを話すのはあれだし、まぁいいか。
というか、充電って電気じゃないんだから……。
「おかえりなさいませ、リク様」
「ただいま帰りました。モニカさん達は……」
「リクさん!」
宿の人に迎えられ、挨拶を返すとともにモニカさん達がどうしているか聞こうとすると、階段の上から俺を呼ぶ声。
モニカさんの声だな。
「ただいま、モニカさん」
「えぇ、おかえりなさいリクさん」
……ちょっとだけ、ジーンと心に来る物があった。
飛び込んで来る程の歓迎をしてくれたけど、すぐにそっけなくなったエルサと違い、俺階段を降りて笑顔を見せてくれるモニカさん。
おかえりなさいと言われるのも、嬉しい。
色々と自覚できたから、感じる事ができているんだろうね。
「森で魔物と戦ったんでしょうけど、どうしてそんなに……?」
「あ、そういえば……」
笑顔から心配そうな面持ちになったモニカさんが見ているのは、俺の全身というか服。
気にしていなかったというか、頭からすっぽり抜けていたけど、そういえばレムレースとの戦いで来ていた服がかなりボロボロになっていたんだった。
だから、厚着していたのに、氷の大地を離れて暑いと感じなかったのか。
というかよく考えたら、所々破れたり、部分によっては滲んだ血が付いているような服で、ヘルサルやセンテを歩いていたのか。
道理で、すれ違う人達が目を逸らすわけだ……なんて、戻ってくるまでの事をようやく気にして思い出した。
そういえば、ヤンさんとかマックスさんはともかく、エレノールさんやソフィー、それにフィネさんも何やら俺を見る時にチラチラと視線が下がり気味だったような?
おへそが見えるくらい、お腹部分が破れているからかな? というか、男のへそ出しはどこ需要だ……やっているのは俺だけど――。
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