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シュネーウルフとの戦闘開始

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「目指すは、綺麗な毛皮と牙と爪の入手! って事で」

 手に入れても使い道はないけど、できるなら価値の高い物を残す形で倒したい。
 一人で戦っているからか、少し前くらいからどうやって戦うか、倒すかにこだわり始めちゃっているけど。
 まぁ悪い事じゃないし、ただ単にとにかく魔物を倒す、というよりは考えて戦う方がいいだろうと、自分を正当化しておく。

「さて、それじゃ環境に適応して変化した魔物がどんななのか、試させてもらおうかな」

 ちょっとだけ、楽しくなっている俺。
 戦闘狂とかではないと思うけど……ユノ命名のバーサーカーモードとかやらかしているから、あまり自信はないけど。
 でも、こういう色んな魔物と戦うっていうのは、日本じゃ考えられなかった事だし、異世界ならではだよね。
 まぁその異世界に来てから、随分経っていて今更だし何度も戦ってきているけど。

 ちなみに、シュネーウルフやフォレストウルフなどのウルフ種とは別で、ゴブリン種も色んな種類がいたっけ。
 あっちもある意味環境に適応したとも言えるんだけど、ゴブリンウォーリアーとかゴブリンマジシャンとかね。
 ただあちらは上位種と呼ばれて、明確に通常のゴブリンよりも強い。
 ゴブリンウォーリアーは武器を扱いが通常のゴブリンより上手く、ゴブリンマジシャンは魔法が使えて、さらにそれらを統率する上位種がいてとからしい。

 人間で言うと、道具を使ってちょっとだけ戦える人が、魔法や武器の扱いを覚えて兵士になるとかそんな感じだ。
 ちょっとだけ、体が大きくなったりと身体的特徴の変化もあるみたいだけど。

「……あ」

 なんて考えていたら、シュネーウルフ二体が俺の方へ顔を向けた。
 まだそんなに近くないけど、なんとなく鼻をひくつかせているように見えるから、おそらく匂いでバレたんだろう。
 風上や風下とか特に意識していなかったからか……このまま見つからずにと思ったけど、無理そうだ。
 シュリーガーラッテの時といい、ちょっと迂闊だったかな、今後注意しよう。

「GURURU……」
「おぉ、唸ってる。まぁ警戒しているんだろうけど……」

 俺に向かって姿勢を低くし、唸るシュネーウルフは完全に臨戦態勢だ。
 逃げようとしないのは、俺一人だからか、それともラミアウネではなかったからか。
 ともあれ、魔物を相手にしてやる事は変わらない。
 さっき決めた、できるだけ素材に傷をつけたり汚したりしない、というのを忘れないようにして……ゆっくりとできるだけ刺激しないように剣を抜き、左手に鞘を持つスタイルにする。

「んっ!」
「GURAU!!」
「GURUU!!」

 おぉ、結構身軽だ……まぁウルフだからね。
 木々の合間を縫って、シュネーウルフに向かって駆けると、その場から後ろに飛んで距離を離された。
 フォレストウルフより一回り大きい体だけど、その動きは同等の速さがある気がするね。
 なんて、悠長な事を考えていると、俺から見て右側のシュネーウルフが口を大きく開けて飛び掛かって来る!

「GAU!!」
「うぉっと! あたらないよっとぉ!」
「GIYAHIN!」

 俺の身長より高くまで軽々と飛んで襲い掛かって来るシュネーウルフを、体を横にずらしてよけ、左手に持った鞘で横っ腹を撫でるように当てる。
 それだけでも結構な痛みだったのか、シュネーウルフは大きく悲鳴のような鳴き声を上げて、近くに木に叩きつけられていた。
 おっと、やり過ぎないように……強めに鞘で殴ったら、破裂とかしちゃって毛皮が台無しになるからね、これまでの魔物との戦いで何度かやっちゃってたし。
 あと、牙が折れないように注意しないと。

「GURUU!!」
「っと!」

 仲間がやられたと思ったのか、それとも俺の隙を突いたつもりなのか、もう一体のシュネーウルフが同じように飛び掛かって来る。
 とはいえ、直線的だし同じ攻撃だから、こちらは難なく躱す。
 フォレストウルフみたいに、飛び掛かる振りをして近くと通り過ぎ、木の幹に着地してからもう一度飛び掛かる、なんてフェイントを織り交ぜた方向転換はしないようだ。
 まだ接敵直後だから、本当にしないのかは定かじゃないけど。

「ん……?」

 俺に避けられた後のシュネーウルフは、通り過ぎて地面に着地した後、何故かちょっともたつきながら体の向きを変えた。
 なんだろう、怪我でもしているのかな? 見る限りじゃ、特に目立った外傷はなさそうだけど。
 俺が鞘を当てた方は別として……あ、あっちも立ち上がった。

「GURURURU……」

 緩い顔つきはどこへやら、俺を睨んで長い牙だけでなく他の牙もむき出しにしつつ、凶悪な顔のシュネーウルフ。
 涎も垂らしている姿は、他のフォレストウルフなどと同じで野生や魔物としてのどう猛さを感じさせた。
 ……お腹でも減っているのかな? まぁラミアウネに端まで追いやられたのなら、食べ物を探す余裕とかもなかったんだろうけど。

「お腹を空かせているのはかわいそうかもしれないけど、どっちみちやる事は変わなないからね。てぁ!」

 ひとり呟きながら、二回目に飛び掛かってきたシュネーウルフに対し、鞘を下から掬い上げるように振るう。
 姿勢を低くしているから、剣で喉元を狙おうにも狙いづらいためだ。
 まず顎を狙いって顔を上げさせてから、剣を突き込む狙いだ。
 だけど……。

「GURU!」
「っと。さすがに素早いか……」

 再び、後ろに飛んでシュネーウルフが距離を取る。
 いつもなら、適当に鞘でぶん殴る、剣でぶった切るといった戦い方をしているためか、シュネーウルフの顎という小さな的を狙っての攻撃はかわされやすいのかもしれない。
 止めは決めているため、やり過ぎないよう加減して鋭さがないせいもあるか。

「GURAU!」
「GAU!」
「うぉっと!」

 一体ずつだと駄目だと思ったのか、シュネーウルフが左右から俺に向かって飛び掛かって来る。
 示し合わせたわけではないのに、こういった連携ができるのは同種族だからだろうか……特にアイコンタクトとかそういう素振りも一切なかったのに。
 ともあれ、中々の速度で飛び掛かってきてはいるけど、シュネーウルフがしたように後ろに飛んで避けるだけで事足りる。
 もちろん、狭い場所だから木の根に足をとられないよう、また木の幹に当たらないよう注意しながら。

「ふぅ、さてどうす……あれ?」
「GIAHIN!」
「GAHU……」

 シュネーウルフ二体の挟撃を避け、息を吐いてどう戦うかを考えようとした時、思わぬ事が起きた。
 飛び掛かっていたシュネーウルフが、両方とも着地した勢いのままよたっと前に出て頭同士がごっつんこだ。
 悲鳴を上げていたけど、相当痛かったんだろうね。

「連携していると思ったけど、できていないのかな? いや、待てよ。あれは……?」

 頭の痛みに耐えつつ、バランスを崩して地面に転がったシュネーウルフが、ヨロヨロと足を踏ん張って立ち上がる。
 その足元をよく見てみると、長く鋭い爪が地面に深々と突き刺さっているのがわかった。
 少し視線をずらすと、飛び掛かって着地した場所には小さな穴がいくつか――。


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