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この世界のドラゴンとは
しおりを挟む「ユノに聞くけど、ドラゴンってなんなの? どういう存在か、とかはもちろん知っているわ。けど、そんな誰とでも契約するはずじゃないわよね? 少なくとも、私が近くにいるような人間、それも魂にまで刻まれているのかと思うくらい、破壊の性質に傾いている人間にはね。ドラゴンはユノが創った、だとしたら創造へと傾いていなければいけないはずよ。リク達がドラゴンと呼ぶ、想像魔法……いえ、創造魔法のようにね」
「……」
ロジーナが問い詰めるように体を乗り出し、アマリーラさんに抱き着いているユノへと口早にまくしたてる。
想像魔法とはよく言ったもので、確かにイメージを魔法にするのはその通りだと思う。
けど、言い直した方の創造魔法……? 創造神であるユノが創ったドラゴンが使う魔法だから、創造魔法? いや、そうじゃないな。
想像した事が魔法になって、新しい魔法を創り出すから、創造魔法か。
ドラゴンの魔法、というだけでもパワーワード的な響きなのに、想像魔法とはまた。
そんなのを、これまで俺は使っていたんだね……今は使えないけど。
とはいえ、今明かされる真実! という程でもないか。
「……」
「あら、ユノちゃん?」
ロジーナに言われて黙っていたユノが、アマリーラさんから離れる。
真面目な話をするからだろうか、居住まいを正した。
エルサというか、ドラゴンの話か……俺も知らない事が多いし、ちょっとだけ緊張してきたぞ。
「ドラゴンは……私が創ったの。この世界を見張るため、見守るため。そして条件を満たさないと直接干渉できない私の代わりになってもらうために。結構可愛く作れたの、リクも気に入っているみたいなの」
真面目な声音で話していたのに、最後に付け加えた言葉はいつもの無邪気な子供として過ごしているユノの口調に戻った。
ほんの少し、緊張して損した気分。
まぁ確かに、見た目というかあの至高のモフモフは気に入っているというか、素晴らしいの一言に尽きるけど。
「そんな事は知っているわ。私が聞きたいのは……」
「ちょ、ちょっと待ってください! そもそもドラゴンを創るって……ただリクの趣味で一緒にいると思っていたのですけど、その子供は……」
「うるさいわよレッタ。黙っていなさい」
「うっ……は、はい……」
ロジーナの言葉を途中で遮ったレッタさん、一喝されて押し黙る。
そういえばレッタさんには、ユノの事を話していなかったね……俺が来るまでに、話す余裕もなかったしロジーナから聞いていなければ、説明する時間はなかったんだけども。
それにしても、レッタさんの言い方からすると、もしかしなくても俺の好みとかでユノを連れていると思っていたのか……?
まともに話せていたから大丈夫だと思っていたけど、まだロリコンの疑いが晴れていなかったのか、それともユノといたからロリコンの疑いを掛けられているのか。
どちらが先かはわからないけど、とにかく俺にそういった趣味はない。
子供は可愛いと思うし、無邪気な様子を見せるユノはどういう存在かを忘れて、微笑ましく思ったりはするけど、断じて違う。
レッタさんのように、ロジーナに一喝されたり話の腰を折る事になりかねないので、今は弁解しないでおくけど。
後で、レッタさんの誤解を解くついでにユノの事について、説明するかな……。
「ドラゴンを創った理由なんてのは聞いていないのよ。そもそも知っているんだから。そのドラゴンが、リクはともかく何故あいつと契約できたのかって聞いているの。リクなら、モフモフがどうたらと言って付きまとったりして、仕方なく契約というのもあり得るけど」
「いや、俺そんな事していないんだけど……」
エルサを見つけた時、モフモフが素晴らしいとは思ったけど別に付きまとってなんていない。
そもそも、最初はエルサがドラゴンだって知らなかったし、契約はエルサからだったはずだ。
「リクは黙ってて」
「あ、はい」
ロリコン疑惑の否定じゃないけど、思わず声を出した俺をロジーナが一喝、素直に頷く。
やっぱり何か言おうとすると怒られるみたいだ、理不尽な……。
……人からすると破壊神は存在そのものが理不尽か。
「当初のリクの性質は、魔力量こそ異常であっても創造や破壊に傾いていなかったはずよ。まぁ、先に接触したのがユノだから、多少創造に傾いていたけど。でもだから、私はこの体を創って直接リクに接したの。いずれ破壊に傾くようにって。でも、あいつは性根が腐り果てて、私と同質と考えるのすら嫌だけど、人をここまで嫌悪できるのかってくらい嫌いだけど、性質は破壊に傾いているどころか、染まっているわ。なのに、創造の力で創られたドラゴンと契約できている。それはなんでなの?」
破壊神にすら嫌われる、クズ皇帝……。
俺を破壊側に引きずり込もうとしていたのに、クズ皇帝は同質になっているのは不服なようだ。
「ドラゴンは、人間と契約する事で制限されていた力が解放されるの。魔力とかは、特に変わらないけど……重い枷が外れるようなものなの」
そういえば、そんな事をエルサも言っていたっけ。
具体的にどんな制限かはわからないけど、重い枷か……。
「だから、ドラゴンは敵対しない限り人間を害さないの。自分達が、人間と契約する必要があるとわかっているから……」
そういえば、ドラゴンの伝説というのを俺は詳しく聞いた事はないけど、大量の人死にが出たとか、一国が壊滅させられた、とかそういう話は聞かないね。
エルサを見た人達は、傅いたり敬ったりする様子はあるけど、恐怖する事は多くない様子だったし……それは、ドラゴン側が人間と敵対しないからだったのかもしれない。
まぁ、あくまで反撃としてだけど、エルサが昔色々やらかした事もあったみたいではあるけど。
とにかく、強大な存在としては伝わっているけど、恐怖の対象や破壊の限りを尽くす存在……のようには伝わっていないと。
地球のドラゴンに関する神話とかって、大体恐怖の対象や象徴だけど、この世界、というよりユノが創ったドラゴンは違うって事だろう。
「それで……?」
先を促すロジーナ。
「ドラゴンは、自分が契約する相手というのは本能のようなもので悟るの。長く生きる中で、いずれ契約する人間が現れる時を待っているの」
エルサも、俺がこの世界に来た時契約するべき人間が現れたって、喜んでいたんだっけ。
ちょっとはしゃぎすぎて、世界中を飛び回ったら魔力が切れかけて、死にかけてもいたみたいだけど……エルサはドジっ子なのかな?
「じゃあ、その契約するべき相手というのが、あいつだったって事?」
「多分、違うの。全てのドラゴンとどの人間が契約をするのか……人の体になった今じゃ把握はできないけど、ロジーナも言っていたように破壊に傾いた人間とは、契約しないはずなの。そもそもドラゴンは創造の力で生み出し、創造の力の片鱗を持っているの。そんな存在が、破壊にのみ傾いているどころか、染まっている人間とは本来、契約できないの」
創造の力の影響で、破壊に性質が傾いている人間を相手に、契約相手だとは思わないって事か――。
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