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冒険者ランクによるちょっとした特典
しおりを挟む「少なくとも、リク様であればSランク以上は間違いありません。ただ少々承認するのに各ギルドへの確認もせねばなりませんので、今回の報告と共にその提案をしておこうかと」
「Sランク以上になれば、リク様に対しても特権が与えられますからね。ただ、これは私やベリエスさんにとっては、良い事とは言えない部分もありますが……」
「Sランク以上がというのはわかりましたけど、良い事と言えないというのは?」
正直、ランクに関しては現状維持でも構わないくらいだから、時間がかかりそうなのは別にどうでもいいかなと思う。
ただ、特権というか……ヤンさんやベリエスさんにとって不利益になるのなら、無理してランク昇格させなくてもいいんじゃないかと思うんだけど……。
ちょっとだけ、特権の内容は気になるけどね。
「まぁ、リク様の功績や実力を考えれば、Sランク以上にしなければ冒険者ギルドのランク評価による信頼が損なわれかねませんので、これはほぼ決定と考えて良いでしょう。国内のギルドで反発するような支部もないでしょうから」
「特権についてですが、冒険者のランクに応じて国によって多少の扱いの差はありますが……」
とりあえずベリエスさんが言うには、俺はSランク以上になった方がいいという事らしい。
実力とか功績に伴わないランクだと、冒険者ギルドの信頼に関わると言われたら、俺は何も言えないし不利益があるわけじゃないなら任せるしかないか。
ともあれ、ヤンさんによって冒険者ランクの特権についての説明だ。
冒険者ランクは、そのランクに応じてある程度の特権……とは言っても、豪遊できるとかそういうものではなく、ちょっとした優遇措置がされるというくらいみたいだ。
冒険者ランクDまでは、街などに入る際の身分証として、一定の信頼を得ている人物だとみなされる。
アテトリア王国ではほとんどないけど、街に入る際の関税のような……入市税みたいなのが免除されたりとかだね。
Cになると、さらに信頼できる人物であり一人前の冒険者と認められ、お金を冒険者ギルドに預ける事ができる……これは、依頼で大金を得る機会が増えるためだとか。
さらにBランクだと、預けたお金を同じ国内の冒険者ギルドであれば、どこでも引き出せるようになる。
さすがに、大量の金貨を小さいギルド支部とかで引き出そうとすると、多少時間がかかったりはするらしいけどこれは仕方ない。
あと、依頼の達成率や達成した依頼の難度によって、報酬とは別に預けたお金にボーナスが付く。
銀行のシステムにちょっと近いかなと思う。
そして、俺の今のランクであるAは、大抵の依頼を受ける事ができるうえ人物、実力も冒険者ギルドお墨付きと見なされてギルドカード一つで国外に出る場合の身分証になってくれる。
Bランク以下だと、身分証としての他に手続きが必要でちょっと面倒らしい。
あと、冒険者ギルド支部のある街や村では、提携している宿に格安で泊れるとか。
まぁ宿の割引みたいなのは、Aランクじゃなくてもあるみたいだけど、その割引率がAランク以上は最大になっていい部屋も用意されるらしい。
……シュットラウルさんに宿を用意してもらっている、今の俺にはあまり関係ない事だけど、どの国に行っても冒険者ギルドの支部さえあれば割引と宿の斡旋を頼めるので、使い方次第では便利だ。
Sランクにもなると、ギルドカードを身分証にするだけで国境関税がいらなくなる……つまり、冒険者ギルドのある国であればどこでもお金を掛けずに出入り自由ってわけだね。
この世界では現在、ほとんどの国に冒険者ギルドがあり、少なくともアテトリア王国周辺の国々には間違いなくあるので、実質国境を気にせず旅をしたりもできると。
まぁ、帝国のような怪しい国に自由に入れるとしても、行ったらいったでマークされそうだから、あまり行きたくはないけどね。
「Sランクになると、冒険者ギルドの本部の場所なども知らされます。これは特権というより、ただ与えれられる情報というだけですが……」
「本部ですか」
各国にまたがっているという、冒険者ギルド。
その本部がどこにあるかなどは、基本的に冒険者には知らされない。
理由は様々だろうけど……ヤンさんの言う通り特権という感じではないね、本部の場所を知ったからって絶対行きたい! とまでは思わないし。
「そしてSSランクになると……」
「……」
少しもったいぶったようなヤンさんの言い方に、誰かの喉が鳴った気がする。
ベリエスさんではないだろうから、フィネさんかな。
「……これに関しては、実際になってみないとわかりません」
「え?」
もったいぶった割には、明確ではない言葉がヤンさんの口から放たれた。
「SSランクは、先程も言いましたが歴代で到達した人物が一人しかおらず、その特権なども明かされていないのです。ギルド支部のマスター程度では、詳細まで聞かされません」
「そ、そうなんですか……」
肩透かしを食らった気分ではあるけど、これまでに一人しかいなくて一般的には最高位のランクがSになっているため、SSランクに関しての事はよくわからないんだろう。
ヤンさん達でも知れないのは最重要機密というより、希少すぎて教える意味もなかったからって理由のような気がした。
「それで、特権についてはわかりましたけど、どうしてヤンさん達には良い事ではないと?」
深く溜め息を吐くフィネさんの隣で、気を取り直して本題を聞く。
特権に関して聞いていたけど、それでヤンさんやベリエスさんにとって不利益になる事はないように思ったけど。
「Aランクの特権でもそうですが、Sランク以上の国境を自由に行き来できる、という部分ですね。まぁ、あまり私がリク様本人にいうのは憚られるかもしれませんが……現状アテトリア王国は、国も冒険者ギルドも、リク様に頼る部分が大きいのです」
「俺に頼る……大量の魔物が迫って来るのに対して、戦ったりはしましたから国はなんとなくわからなくもないです。けど、冒険者に関しては……正直、あまり積極的に依頼をこなしているというわけでもないですから……」
実際、依頼を達成した数だけで言えば、二桁は行くけど多いとは言えない。
地道にランクを上げた冒険者、それこそソフィーとかトレジウスさんとかだと、三桁の依頼をこなしていてもおかしくないから。
冒険者ギルドへの貢献や頼られるという意味では、俺よりもそういった真面目に冒険者として日々依頼をこなしている人の方が、重要なんじゃないだろうか?
「Aランクの冒険者、というだけで数は限られます。さすがにSランク程ではありませんが……それでも、そのランクの冒険者が滞在している、付近にいるだけで職員の安心感に繋がるのです」
「何かあれば、依頼を出せるという状況なわけですね。特にリク様は、エルサ様とご一緒に各地を短期間で回れます。なので国外に出ても多少は、という部分はありますが、やはり国内に、付近にいるという事が大きいのです。それに……」
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