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ソフィーは別行動で

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「氷は今の所魔法で解かすしかありません。割ったりといった、ちょっとした手伝いも、俺やユノ、それからロジーナくらいしかできませんから……」

 シュットラウルさんに、ソフィーのやる事に関して俺は思いつかないと伝えるついでに、さっき外に出た時の事を話をする。
 ただ、シュットラウルさん達は既に氷が硬くて、簡単には割れないのは報告で知っていたらしい。
 なんでも、重い全身鎧を身に着けた兵士さんが、重い大きな武器を全身の重量を加えて叩きつけても割れなかったとかみたいだ。
 体重も含めると、百キロ以上の重さとさらに勢いを付けても割れない氷って……そりゃ、俺やユノ、ロジーナはともかく、他の人には割れなくても仕方ないよなぁと思う。

「まぁ、ちょっとした仕事というくらいであれば、今のセンテならいくらでもありますが……」
「ふむそうだな……確か、ソフィー殿はセンテにいた時期が長かったのだったか」
「はっ、冒険者としての拠点をセンテに定め、リクと出会うまでの数年程滞在しておりました」

 雑用という意味では、多分今センテではどこも人手が欲しいところだろう。
 建物などは壊れていないけど、外へ薪用の丸太を持ち出したり、そのための準備をしたり……街にいる人達への食糧などを運んだりとか……。
 あと、街北の駐屯地になっている場所も、整備する予定みたいだし。
 問題が全部解決して、兵士さん達がいなくなった後に何もない場所にならないよう、今のうちから手を入れておくようだ。

 ちなみに、魔法が使えないという説明をシュットラウルさん達にする前、部屋に入って来てすぐに聞いたんだけど、今回の魔物との戦いでの戦功者を讃える記念碑を作ろうと検討しているとか。
 一番の戦功者は一番目立つように……というわけで、俺が選ばれて許可を求められたけど、さすがに全力で固辞した。
 頑張ったのは皆だし、俺が一番の功労者として銅像みたいなのが建てられると考えたら、さすがにね。

 ずっと残る銅像みたいなのが建てられるとしたら、先々でそれを見て恥ずかしい思いをするのはごめんだし。
 まぁ、今は戦功者記念碑よりも、ソフィーの話しだな。
 できるだけこの話は、今後避けるようにしなければ。

「センテに住まう者達とも、面識はそれなりにありそうだな」
「冒険者として滞在しておりましたので、多少は。住民全てという事はありませんが……」
「であれば、冒険者ならば鍛冶職人、宿の者達も詳しいか?」
「そうですね……」

 シュットラウルさんの質問に、恐縮しながら答えるソフィー。
 これまで、俺と一緒にいて話を聞いている事は多かったけど、直接話す機会はあまりなかったみたいだから、侯爵様という貴族相手に緊張しているのかもしれない。
 以前、宿で一緒に食事をした事くらいはあるけど、それだけですぐになれる物じゃないのかもね……俺はわりと普通に話しているけど。
 俺がいない間は、モニカさんが主に話していたらしいし、そちらは途中からマックスさんやマリーさんもいたから、なんとか細かい話ができたんだろう。

 とにかく、ソフィーはセンテで活動していた時期がそれなりにあるので、冒険者としての武具のために鍛冶職人さん達とはそれなりに顔見知りだとか。
 初めてセンテに来た俺を案内してくれたお店も、武具店だったなぁ……エリノアさんだったか、武具店の店員さんをしている人とも親しいようだったし、あのお店は奥が工房になってもいたみたいだからね。
 宿も、滞在するにあたって知り合いになる機会が多い先だね。
 俺はマックスさんのツテのある宿に泊まったけど、数年も固定の家を持たずに滞在すれば、色んな宿に泊まるくらいはして来たんだろう、多分。

「ならばソフィー殿には、そうだな……」

 シュットラウルさんからの案で、ソフィーのやる事が決まる。
 鍛冶職人さん達の所で、アイススパイクに関する事とか、宿の再開に向けてとかみたいだ。
 こちらも雑用と言えば雑用に近いけど、シュットラウルさん達との間を行き来して、細かな話を詰めるなどもして欲しいとか。

 特に宿は、今特に忙しいらしいし、鍛冶職人さん達はアイススパイクの事もあって、逐一連絡を取っていたいらしいから。
 兵士さんでもいいんだけど、それよりは顔見知りのソフィーが主体で動いた方が、このところ魔物に生活なりが翻弄されてしまっていた住民の感情も和らぐだろうとの事だ。

「承知しました。センテは長く世話になった街。その街に住まう人達の力になれるのなら、喜んで」

 そうして、ソフィーは俺とは別にセンテのために動く事になった。
 氷を解かす手伝いもセンテのためになるとは思うけど、ソフィーとしては直接住民の役に立つような事……これまでの恩返しみたいな事をしたかったようだから、ちょうどいいんだろう。
 庁舎を出て、早速近くの宿や北の工房街に向かうソフィーを見送ったけど、掛けていく表情は晴れ晴れとしていた。


「そういえば、フィネさんは他にやる事がないか聞かなくて良かったんですか」
「はい、問題ありません。私はリク様とご一緒させて頂きます。先程の話しではないですが、こちらからもそろそろ子爵様への連絡を取ろうかと思いまして」
「あぁ、成る程。そういう事ですか」

 フィネさんが言う子爵様というのは、フランク子爵の事だろう。
 本来は子爵家の騎士でもあるから、冒険者として俺について来ていても定期的に連絡はしないとね。
 今センテからは送れないので、俺と一緒にいてヘルサルからってわけだと思う。

「コル……いえ、コルネリウス様の様子も気になりますし……」
「そうだね……」

 確か、組織からフランク子爵の所に入り込んだ人が、甘言やら何やらでコルネリウスさんの性格を捻じ曲げちゃったんだよね。
 フィネさんが離れている間に……。
 幼馴染のように、幼い頃から一緒にいたフィネさんにとっては、気になるのも仕方ないんだろう。
 フランクさんが再教育……みたいな事を言っていたから、今頃厳しくされているのかもしれないし、どうなっているかは連絡を取らないとわからないからね。

「すぐに大きく性格が変わるとは限らないけど、フランクさんに任せてれば大丈夫そう……かな?」

 コルネリウスさんは、俺より年上そうに見えたしフィネさんもそうだけど、成長してから性格を変えるのは難しいかもしれない。
 けど、父親のフランクさんが相手なら少しずつでも変われるようになるかなと思う。
 コルネリウスさん自身も、自分が騙されていたような事はわかっているだろうし。

「それに……えーと、もう一人フィネさん達と一緒にいたあの人」
「カルステンですか?」
「そうそう、その人」

 コルネリウスさんやフィネさんと一緒にいた、魔法使い風の人だ。
 カルステンさんとはあまり話していないから、名前をど忘れしちゃっていたけど……それはともかく。

「カルステンさんもいるなら、ちゃんとコルネリウスさんを見てくれていると思ういますよ」
「そうですね……ちょっと頼りない風貌ではありますが、私やコル……コルネリウス様を小さい頃から見ていてくれた人でもありますから」
「へぇ~、そうなんですね」


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