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原因はリクなのかもしれない
しおりを挟む魔物の指揮をしていた……少なくとも、突撃する俺やロジーナに魔物をけしかけるくらいの事はしていたし、自分がいる場所と俺達の間に魔物を固めさせていたのは間違いない。
その事を話すと、マルクスさん達は言葉を失い、信じられないといった風に首を振りながら話すシュットラウルさん。
モニカさんも、あの人が……と驚いている様子だ。
何をしていた人なのかは、まだ話していなかったからね。
「ロジーナの部下、みたいなものですかね? 人間かと聞かれると、断言はできませんけど……見た限りでは人間でした。獣人やエルフみたいな身体的な特徴はありません」
そのレッタさん、隠していたらわからないけど……少なくとも俺の目には人間に見えた。
それに、ロジーナと一緒に俺と初めて会った時も、他の人達に紛れていたし……センテに向かう乗り合い馬車の中には、種族として人間以外にいなかった。
あ、そういえばソフィーもあの時いたんだったっけ。
ロジーナの事も詳しく話していないけど、レッタさんの事ももしかしたら覚えているかもしれないし……事態が事態だったから、俺を問い詰めるような事はしなかったんだろう。
あとで、ソフィーにもちゃんと説明しておかないとね。
もちろん、他の皆にもだけど……。
「とにかく、レッタさんを発見した俺とロジーナはそれから……」
レッタさんの所に到達したあたりから、説明の再開をする。
とは言ってもそんなに多くの事があったわけじゃない。
俺を……というか、センテ周辺に溜め込んでいた負の感情を使って、俺の体を支配させ全てを破壊する存在へとしようと計画していた事くらいか。
ロジーナと一緒にいる俺を見て、レッタさんからロリコンという謂れのない非難を受けたけど、余談過ぎるので言わなかった。
今考えるとそれも、俺の感情とか意識を揺さぶって負の感情に支配されやすくするためだったのかな? と思わなくもないけど。
「……」
俺の意識を負の感情に支配させて、全てを破壊する……と伝えた辺りで部屋にいる全員が押し黙った。
重い沈黙が流れる。
まぁそうだよね、それはつまり俺一人いればセンテどころじゃなく、国そのもの……場合によっては世界も破壊してしまいかねないって事だから。
上手くいくかどうかはさておいて、それができるだけの人物だとレッタさん達は俺を見ているって事でもある。
誰も言葉を発する事ができず、俺を見るだけしかできないのも理解できる……かな?
特級の危険人物だ。
実際に植物があのままだったら、世界を飲み込んでいた可能性もあったっぽいし。
レッタさんのやった事というか、計画そのものは人間としてこちらに来る前のロジーナも、画策していた事ではあるけど。
「……俺一人で本当に全てを破壊できるかはわかりませんが、レッタさんの計画としてはそうだったみたいです」
沈黙に耐え切れず、俯き加減で声を出す。
結局のところ、今回のセンテに対する魔物襲来は俺が原因だったって事だし、巻き込んでしまった皆には申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
ただ、俺がたった一人で国や世界を破壊なんていうのは、ロジーナやレッタさんの買い被りだと思う部分もある。
だって、今の俺だと魔力がどれだけあっても赤い光はもとより、緑の光……あの植物をもう一度発現させらないと感じるから。
あれは一人の意思や魔力で出せるものじゃない。
複数の意識や魔力がない交ぜになった、負の感情があったからこそだと思う。
「いや、リク殿一人で破壊できるかという部分に、疑いようはないのだがな?」
「そうですね。ヒュドラーに討伐不可とされているレムレース。それらを倒したリク様です、やろうとすればこの国どころか、世界を相手取る事もできると、私は確信しています」
「え……?」
あれ? シュットラウルさんにマルクスさんも、俺が一人で全てを破壊できるかどうかという部分に、特に疑いを持っていないようだ。
てっきり俺は、俺だけでそんな事ができるわけがない……と考えられるって思っていたのに。
それにレムレースは黒い剣が割れて出てきた、白い剣の魔力吸収のおかげな所が大きいいし。
もしなかったらもっと苦戦していたのは、対ヒュドラー戦でも活躍してくれたから間違いない……討伐できないとは言わないけど
「ヒュドラーを単独で討伐できる者など、リク殿以外に存在せん。そもそもに、リク殿のこれまでの功績……というよりも戦果だな。それを考えれば、一人でという部分を信じられないという事もあるまい」
「私もそう思います。私はリク様が戦うところを見た事は何度か。今回と違って、かなり加減はされていたようですが……それでも十分です」
シュットラウルさんの言葉に頷き、続いてこちらを見るマルクスさん。
マルクスさんとは、クレメン子爵領に行った時一緒に行動していたからだろう……あと、ツヴァイの地下研究所の時もね。
ツヴァイと直接対峙している場面は見ていないだろうし、ヴェンツェルさんとオーガを蹴散らしていた時は傍にいなかったけど……。
「はぁ……リクさん? リクさんがちょっと変わった人間だっていうのは、皆大分前から知っているのよ。一人で国を壊せる程だって、リクさんならやれると考えているわ」
「えぇ……?」
「……言いたい事はわかるが、リク殿をしてちょっと変わったで済ませるモニカ殿は、さすがだな」
「ですね。だからこそ、リク様とモニカ殿は行動を共にしているのかもしれませんが」
溜め息を吐いたモニカさんが、俺に対して言い聞かせるというより少し強めの、注意するといった風に言う。
戸惑う俺に、シュットラウルさんとマルクスさんの話声が耳に入った。
もしかして二人共、俺の事を変わっている以外にも変な事を考えていませんか?
いや、他の人間と同じで普通、なんて自分では言ったり思ったりできないような事をしているし、してきたのは自覚しているけどね。
「というかリクさんって、人間なの? 見た目は確かに人間で……私にとっては……はっ! いえ、なんでもないわ」
疑いの視線を向けるモニカさん。
何故か途中でボソボソと呟きつつ、頬が赤くなっていたようだけど……よくわからない。
それはともかく。
「れっきとした人間だよモニカさん! ほら、どこからどう見ても……」
あんまりな疑いに、自分が人間である事を示すため両腕を広げて人間アピール。
どうやれば人間だと証明できるのか、アピールできるのかはわからないけど、見た目は間違いなく人間だと思うから。
フィリーナ達みたいに耳が尖っていたり、特別美形だったりしないし……考えていてむなしくなるけど。
アマリーラさん達みたいに、獣耳や尻尾が付いていたりしない。
他に人間に近い種族がこの世界にいるかはわからないけど、少なくとも俺自身はここにいる他の人達と、体のつくりに関して大きな差異はないはず。
こちらの世界に来る前も、人間の両親から生まれて人間の姉がいたんだから……。
そうだ、姉さんなら日本の時の記憶もあるし、俺が人間だって証明してくれるかも!?
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