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レムレース撃破
しおりを挟む急いでレムレースを倒すための方法をひらめき、頭をフル回転させて考え始める。
今は地上から離れた空にいるわけだし、あまり加減はしなくていいはず。
レムレースも小さいし、広範囲というより限定的でいい……レムレースを消滅、もとい焼滅(やきめつ)させられる魔法。
「確実に倒すために、一応限定的にしておこうか……」
一つ参考にするのは、アマリーラさんを治癒した時の事。
結界でレムレースを囲んで逃さない以上に、魔法が周囲に広がるよりも内側に威力を存分に発揮できるよう……。
ついでに、俺達が戦い始めてアマリーラさんが後退したためか、他の魔物達も進行を再開している……おそらく、他の冒険者さん達も今は下がっているんだろう。
というか、レムレースとヒュドラーが連携している時すでに、退却し始めているのを走ってきた俺自身が目撃しているし。
だから、レムレースを焼滅させた直後に地上の魔物の足止めをしつつ、すぐにユノ達の助けに、というかヒュドラーを倒す……!
頭の中で魔法のイメージを固めつつ、これからの行動の流れも考えた。
「よし、これなら……まずは多重結界!」
レムレースから剣を抜きつつ、結界を発動。
魔法の威力が強すぎた時のために、多重結界にしておく……急造のイメージだから、加減をしている余裕がないためだ。
そして魔力吸収がなくなったレムレースが、再び黒い霧の体をうごめかせているのを見つつ、抜いた剣の刺さっていた場所、結界に少しだけ空けていた穴に手を添えて、イメージしていた魔法を発動!
「ブレイズストーム!」
手を添えた結界の穴から、小さな二、三センチ程度の火がレムレースに向かう。
小さいながらも、内包した魔力は多い……もう少し魔力を込めたら、魔力弾になるくらいだと思う。
それがゆっくりと結界内に閉じ込めている黒い霧、レムレースに近付き……。
「ギ……!?」
触れたのが見えた瞬間、荒れ狂う炎の嵐になった。
レムレースから一瞬だけ、驚きとも恐怖とも取れない声のような音が聞こえたけど、多重結界の中で吹き荒れる炎によって全てが燃えて行く。
……自分でやっておいてなんだけど、強すぎたかもしれない……多重結界の内側数枚が、炎の嵐になった瞬間に数枚割れたのがわかった。
通常の結界だったら、今頃俺も巻き込んで燃え盛っていたと思う。
「結界。かーらーのー……」
手を添えていた、内部に魔法を発生させるための穴を数枚分の結界で閉じておき、衰えるどころかさらに勢いを増しているように思える炎の嵐を完全に閉じ込める。
多分もう、レムレースは焼滅しただろうな……黒い霧はかけらも見えないし。
結界は封をしたから、すぐに酸素がなくなって炎も消えるだろうし、威力が強い魔法を使っても周囲に影響を及ぼさずに済んだ。
俺にしては上出来だと思うし、成功と言っていいはず……そんな満足感を得ながら、眼下に向かってイメージしていた魔法を解き放つ。
ここに来るまでに何度も使っているから、もうイメージをしっかりと固める必要はない魔法。
魔法名をイメージの補助にするだけで、すぐに使える……。
「マルチプルアイスバレット!」
足場にしている結界を避けるように、地上へ向けて氷の弾丸が降り注ぐ。
魔力の調節は上々、ちょっとガルグイユを頭から真っ直ぐ貫通したりしているけど、威力より弾丸数を重視している。
無数の氷の弾丸に貫かれ、俺の真下かから周囲数十メートルくらいの魔物達が動きを止めた。
驚いたり戸惑ったり、恐れたり……まぁ、大体が氷の弾丸に貫かれて動かなくなっているけど。
「よし……ユノ達の方は……!」
レムレースを倒し、眼下の魔物の進行を止めるのに数秒程度……剣をただ突き刺すだけよりも、少しだけ短縮できたはず。
満足感に浸る時間を惜しんで、まだ囲まれているはずのユノ達の方を振り返る。
「なのー!」
「はぁ……さすがに疲れてきたわ……手も痛いし、空間が空間だから全部避けきれないし……」
再生するヒュドラーの首、それとは別の首に何度か斬り付けたようで、斬り取る事に成功するユノ。
ロジーナもヒュドラーから吐き出される魔法を避けながら、剣先を突き刺し、投擲し、折れた剣で斬りかかる。
離れていてもわかるくらい、ユノもロジーナも疲れが見えた……動きがいつもより鈍く感じるから。
そりゃそうだろう、戦闘開始直後からずっとヒュドラー相手に足止めで戦い続けていたんだから。
時々誰かと話をして、休息っぽい時間ができていた俺とは違うよな。
服も所々破れているようだし、剣先を握った手からは赤い血が滴り落ちている……擦り傷っぽく見えるけど、怪我もしているようだ。
ヒュドラーの首は、ユノとロジーナから思わぬ反撃を受けつつもその囲みを少しずつ狭めており、炎のような広範囲の魔法は優先的に阻止できていても、全てを避けきる事は難しくなっている様子。
それに、地目に落ちていた打ち捨てられている剣も、その数をかなり減らしているようだ……ほとんどが、酸で融かされたりヒュドラーに突き刺さったままだったりみたいだ。
多分、刺さったままの剣はヒュドラーの首を斬り取った時、酸になって融けて行く首にそのまま融かされているのもあるんだろう。
酸を吐き出す首は炎と同じく、優先的にユノとロジーナが攻撃しているのに、かなりの数の剣が溶け散る……それは地面も同じだけど。
「ヒュドラーの首は……あと五つか」
ユノ達は、基本的に三つの首を斬り落としている状況を続けている。
一つ首が再生したら、また別の首を斬り落とすの繰り返しだ……体力や武器を気にせず、延々と戦えるのならいずれ消耗したヒュドラーを倒せるだろう。
まぁ、そこまでずっとヒュドラー自身が囲むために首を地面に近い位置に降ろしているかどうか、は疑問だけども。
ともあれ、あと五つを一気に斬り取る事ができればヒュドラーは倒せるってわけだ。
輝く剣はレムレースに突き刺していた時から、魔力吸収の限界……かどうかは予測だけど、吸収速度が遅くなっていた。
このまま後ろからヒュドラーの体に突き刺してもいいけど、大して魔力吸収ができなければあまり意味がない。
「五つならなんとかなるはず……! んっ!」
魔力吸収という、輝く剣に頼り切った倒し方ではなく、正攻法でヒュドラーを倒す道筋を頭に浮かべて、足場結界を蹴る。
落下の勢いも加わって、自分自身が弾丸になったような気分のまま、固めていたイメージを解放。
「エアソード!」
「フシュ!?」
弾丸のように飛び出しながら、横からヒュドラーの首を狙ったエアソードを放つ。
地上にいるユノ達に向かって、全ての首を下げているから狙いやすい事この上ない。
エアソードは、ヒュドラーの首を二つ斬り取ってくれた……三つは行きたかったけど、ユノ達が斬り取った首の残りが邪魔だったみたいだ。
まぁ、再生を阻止したという意味では良かったと思っておこう。
気持ちを切り替え、同時に持っている剣を魔力吸収モードから魔力放出モードに切り替え、弾丸のようにヒュドラーへと近付いた――。
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