1,266 / 1,903
リク対ヒュドラーの決着
しおりを挟む「ある一定以下の魔力量になると、活動をほぼ停止するのかな? 多分、周辺の魔力を吸い取って回復しようってところなんだろうけど」
この状態なら、石像のように体を固めて動かないため、簡単に首を斬り取れるだろうし再生もしない可能性が高い。
でもそれなら、剣のほうはまだまだ大丈夫そうだし、完全に魔力を吸い取り切ってからでいいかと思い、おとなしくなったヒュドラーに突き刺さっている剣を握りしめた。
周囲では、やっと近付けた複数の魔物が俺に向かって突撃したり、魔法を繰り出したりしている。
まぁ、あちらは結界で防いでおけば問題ないね……ヒュドラーのように、結界を突破する攻撃を仕掛けて来るような魔物もいないみたいだし。
「……こうなるんだ」
さらにしばらく……体感では剣を突き刺して数分程度くらいか。
剣の輝き弱まり、流れてくる魔力がなくなったから、ヒュドラーの魔力吸収完了したんだと思う。
ヒュドラーはピクリとも動く事はなく、体も首も全て力なく地面に横たえている。
「一応念のため、首は斬っておこう。……結界!」
広めの結界で俺とヒュドラーを包み、魔物を近付けないようにしながら剣を抜き、地面に横たえている首に近付く。
こうして近くで落ち着いて見ると、ヒュドラーの首が堅かった理由がわかるね……ワイバーンやリザードマンのように、硬いうろこがびっしりと表面にある。
というか、ワイバーンのより硬いね……と、剣の先をコツコツと当てて確かめた。
「うん……再生はしないみたいだ。もう完全に倒したって考えていいかな」
まずは一首を、剣を振るって斬り取る……その際、地面もちょっと切れちゃったけど……まぁ、仕方ない。
ヒュドラーの首内部は、黒い石のような肉が詰まっていて、これも斬り取る時にかなりの抵抗になっていたんだとわかる。
多分その肉だけでも、ワイバーンの皮よりかなり硬いと思う。
「ヒュドラーが抵抗しないからなのか、それとも剣の切れ味が上がっているのか……動いていた時よりも斬りやすい」
次々と、ヒュドラーの首を斬り取って行く。
再生をする様子は一切なく、絶命している証拠でもあるけど……念のためだね。
首を斬る際、剣が短くなったために首の左右から二度振り下ろして斬る必要があったけど、戦っていた時のような……剣身が黒かった時のような抵抗は感じられない。
多分、呟いた理由の両方が原因なんだと思う。
「ん? あぁ、成る程……こう、かな? ふぉ!? ちょ、ちょっと行き過ぎかなぁ。ほんの少し、ほんの少し……よし!」
五首まで斬り取って、残り四つとなったくらいで剣の輝きが失われ、今度は柄から俺の魔力を吸収し始めた。
剣身に触れた時とは違い、緩やかな吸収……というか、以前よりも少しだけ多くの魔力を吸う程度だね。
ただ俺の魔力を柄から吸収して、剣身が少し伸びたような気がしたので手に魔力を集中させてみると……輝く白い刃が数メートルの長さになった。
さすがに大きすぎて驚き、魔力を抑えるとすぐに元に戻る剣。
魔力吸収モードと、魔力放出モードがあると仮定。
吸収モードは剣身から斬ったり刺したりした相手から、ものすごい勢いで魔力を吸って変換し、使用者に提供する。
魔力放出モードは、吸収とは逆で使用者の魔力を使って剣身を伸ばしたりするみたいだ……他にも何か効果があるかもしれないけど、今はまだわからない。
剣身が輝いているのは、魔力が宿っている状態を示しているって事なんだろう、そうするにも魔力が使われているようでちょっと無駄かな? とも思えるけど。
でも、輝きを放つくらいの魔力を無駄に思う程、魔力量がひっ迫しているわけじゃないから、あまり気にしなくていいか。
今は回復量が多い状態だし、ヒュドラーにやったようにもしもの時は吸収すれば良さそうだからね。
「おぉ、ちょうどいい長さに調節できると、使いやすいね……魔力調整の練習にもなりそう」
柄へと流れる魔力……何もしなくても以前より少しだけ増えているけど、それは微々たるもの。
さらに魔力を調整して流してやると、その量によって輝く剣身の長さを調整できるみたいだ……使う魔力量の練習にもなって、長くも短くもできるのは便利だね。
「よし、全部の首を斬り取った。うん、大丈夫そうだ」
剣身の長さ調節のおかげで、後半はヒュドラーの首の太さに合わせた長さにできたから、一度振り下ろすだけで簡単に斬り取れて楽できた。
斬り取った首は、これまでのように酸のようになって消えて行ったけど、ヒュドラーの体は残っている。
動かないからだは、首を再生させる事なく沈黙しているし、鼓動とか生きている感じはないから大丈夫だろう。
首は融けて消えるけど、体は残るのか……首は全て、魔力的な何かで作られていたのかもしれないね。
だとしたら、なんで首を全て斬り取ったら倒せるのか、理由がわからないけど……まぁ、そういった探求的な事は他の人に任せよう、アルネとかカイツさんとか。
「さて、次のヒュドラーに行く前に……モニカさん達の方が気になるね」
ちょっと高めにジャンプして見ても、さすがに全体の状況は把握できないけど……中央は今のところまだ魔物とヒュドラーは石壁に到達していない様子。
マックスさん達が頑張ってくれているからだろう、エルサもいてくれるからね。
南側の様子は一切わからないけど……あっちにはユノとロジーナがいるから、きっと大丈夫。
けど、俺の後ろ……北側の侯爵軍とモニカさん達の方は、少し押されているような感じだった。
というか、いつの間にか兵士さん達と合流していたんだね。
カイツさんが改良したと思われる、青っぽくて大きな盾がずらっと並んで魔物の進行を食い止めているのが見えた。
「けど、なんかよくわかんない霧みたいなのから、魔法で吹き飛ばされているのも見えたから、ちょっと心配だ。モニカさん達も頑張ってくれていたんだろうけど、危険な気配を感じる気がするし、まずはそっちだ……!」
思い立ったらすぐ行動、時間に余裕のある状況じゃないのは当然なので、すぐさまヒュドラーから離れてモニカさん達のいる方へ。
いつの間にか、周囲は完全に魔物達に囲まれていたけど……それは特に問題にならない。
すれ違いざま、キマイラを顔からお尻に向けて一振りで斬り裂き、ガルグイユの体に剣を突き刺して魔力吸収。
数秒もかからず、砂のように崩れたガルグイユから剣を抜く動作で、ついでに後ろから迫っていたオルトスの顔二つを斬り飛ばす。
「少し慣れてきた……この剣、やっぱり切れ味も凄い!」
魔力吸収、魔力放出の切り替えが柄を持つ手にある魔力で切り替えられる事がわかり、多少慣れてきた。
魔物によって使い分ける事で、多くの魔物に対応できるし、切れ味自体も以前より上がっているような感覚がある。
まぁ、ガルグイユは斬るよりも魔力を吸い取った方が簡単に倒せるのは、なんとなくわかった事だけど、多分最近は魔力の流れや自分の魔力を意識的に感じる事ができるようになったからかもしれない――。
0
お気に入りに追加
2,152
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~
平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。
しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。
カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。
一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる