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まずは目の前の魔物の処理
しおりを挟む「ありがとうございます、アマリーラさん!」
空にいるアマリーラさんにお礼を言って、魔物を見据える。
アマリーラさんは、他にやる事がないわけじゃないはずだけど、何故かロジーナと話していた俺の所に来て「ご命令を!」と言っていたから手伝いをお願いした。
本来命令するのはシュットラウルさんなんだろうけど、本人が凄く期待しているようだったからね……。
特に何もない、と言おうとしたらブンブン振られていた尻尾が萎れて、耳を倒してしゅんとなってしまったから。
「近付いて来る速度はそこまで早くないけど……まずは一発驚かせて動きを止めようか。その方がやりやすいからね」
「……リクの驚かせるは、敵よりも味方が驚く事が多いのだわ」
「ちゃんと気を付けるよ……」
エルサの言葉を肝に命じながら、イメージを固めるために深く集中する。
両端はエルサが結界を張ってくれているため、これ以上横に広がる事はないし、壊さなければ周囲に影響が出る事はない。
けど、魔力量が増えている今の俺だとちょっと間違えると、結界すら越えて酷い事になりかねないため、最新の注意を払う。
まずは、魔物達の足を止めてから……だ。
「……んっ!」
まずはと使ったのは魔力弾。
自分の中にある魔力をそのまま放つイメージ……隔離されていた時に、何度も使っていたおかげなのか、今ではスムーズにできるようになっていた。
前は絞り出すようにしなきゃいけなかったからね、まぁそれでも、やっぱり通常の魔法を使うよりも溜めが必要なんだけど。
イメージがほぼ必要ない分、楽ではある。
「上に打ちあがったのだわ?」
「ふっふっふー。この魔力弾はエルサが見た事のあるのとは、少し違うんだ」
使っているうちに慣れてきた魔力弾……対破壊神の時によく使っていた、ただ直進するだけの魔力弾以外にも、使い方を見つけた。
俺の手から放たれ、直上に打ちあがった魔力弾。
アマリーラさんに当たらないよう、真っ直ぐ上に伸びた魔力弾はそのまま突き進むように見えるけど、急に進路を変える。
「曲がったのだわ?」
エルサが俺の頭にくっいている状態のまま、首を傾げるのがわかる。
「そう。威力は落ちるうえに魔力消費も大きくなるんだけど、ある程度自由に軌道を変えられるんだ。放つ前に決めなきゃいけないんだけどね」
威力という意味では直進する魔力弾の方が強いんだけど、自由に曲げられる魔力弾は使い方次第で便利だと思う。
その分、放つ前にちゃんと動きを考えたり、余計な魔力も消費するようなんだけど。
そうして、曲がった魔力弾はそのまま魔物達がいる場所の上空へと向かい……大体中央付近で真っ直ぐ落ちる。
じっくり動きを見ていると、落差が激し過ぎるフォークボールを見ている気分だ。
「魔物が舞っているのだわー。でも、大きな穴が開いたんじゃないのだわ?」
「衝撃が凄いだけで、穴自体は多分そんなに大きくないと思う。深いだろうけど。まぁ、王軍が溝も作っていたしこれくらいなら大丈夫かなって。ヒュドラー達の進行も、そこで少しは遅くなってくれればいいし」
「一石二鳥、とか言うのなのだわ。リクにしてはよく考えているのだわ」
「失礼な、俺はいつだってちゃんと考えているよ」
なんて、着弾した魔力弾が激しい衝撃と共にズドンッ! とこちらまで響く音と着弾地点付近の魔物を巻き上げるのを眺めながら、エルサと話す。
その間にも次の準備だ。
魔物達は狙い通り、着弾点を中心に空からの攻撃で戸惑っているようで、こちらへと向かう速度が落ちた……一部は足を止めているのも見える。
「それじゃ次は……フレイムインフェルノ!」
混乱状態に陥った魔物達に向けて、魔力を変換し、魔法を放つ。
途端、赤い魔力が魔物達の頭上に集まり、そこから燃え盛る炎を吐き出した……ように見えるだけで、実際は魔力が炎になっただけだ。
イメージしたのは地獄の業火……とは言ってもイメージだけで、空から広範囲に炎をまき散らす。
フレイちゃんが南側の魔物を焼く時にした事を、参考にした。
あれは、空から見ている分には魔物達の阿鼻叫喚、そして地獄の様相だったからなぁ。
「結界にぶつかっているのはわかるのだわ。けど、あまり逃げようとしていないみたいなのだわ。……逃げられないのだわ?」
「多分ね。逃げる以前に燃えて動けないんだと思うよ」
火力が高いため、逃げるという動作をする事もできず、ほとんどの魔物が焼かれるだけになっているようだ。
近くとか空から見ていないからわからないけど、フレイちゃんの炎に、ウィンさんの風で火力を上げたのよりは、燃え盛っているようだ。
……ここまでの威力は求めていなかったけど、やり過ぎとも言えない程度なので成功でいいと思う、うん。
「でもあのまま燃えていたら、魔物はいなくなっても燃え広がるのだわ? ずっと結界を維持しておくのは勘弁なのだわ!」
「大丈夫、そこも考えてあるから。えっと……」
しばらく燃え盛るのを眺めて、確実に魔物達が全滅するのを待ってから、仕上げの魔法。
今度はウォーさんの魔法を参考にしたものだ……さすがに、あそこまで自由自在に扱えないし、余計な魔力を打ち上げて分散させるなんて事はできないけど……。
「……フリージング・メルティン」
「今度は氷なのだわ!?」
燃える魔物達の頭上に発生させたのは、氷。
さっきアマリーラさんに聞いた、魔物達がいる範囲と同等……両端にあるエルサの結界内に収まるギリギリの大きさ。
つまり体育館一つ分くらいの氷だね。
巨大な氷に、頭の上でエルサが驚いているけど……。
「ただの氷じゃないよ。よく見てて」
「なんなのだわ……?」
発生した巨大な氷は、その重さのまま魔物達へ向かって落ちて行く……。
ジュゥ……という燃えていた炎を鎮火させつつ、巨大な氷は火が触れた部分を融かしつつも、消火していく。
そのまま、質量任せに氷が焼かれる魔物達を押しつぶし、ズゥゥン……! と俺が立っている場所まで地響きを伝わらせた。
その瞬間。
「氷が水になったのだわ!?」
「そう。氷がそのままになっていたら、邪魔だからね。すぐに溶けてなくなるようにしたんだ」
イメージとしては、氷が炎を鎮火させつつ融ける水になって焼けた魔物を流すような感じだ。
本来は、氷が地面に落ちるまでに融けるようにしたつもりだったんだけど、実際には炎だけでなく魔物スラ圧し潰してから、形を崩して融けて水になった。
限界まで水を入れた風船が、急に破裂するような感じだった……まぁ、魔物への止めにもなったみたいだし、これも大きな影響を周囲に及ぼしていないから、結果的に成功でいいはずだ。
「でもあれだけの水、地面がびしょびしょなのだわ?」
「まぁ、それはそうだろうけど……溝も作られていたし、さっき俺の魔力弾で穴を開けたからね。そこに流れ込むだろうし、ついでに埋めてもくれると思うよ。あと、ヒュドラー達が迫って来た時に俺達が戦うのはあそこじゃないし、ぬかるんでいる方が魔物達も動きにくいだろうから、一石二鳥どころか、三鳥くらいかな?」
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