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スピリット達の形や性格は

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 安全な場所に行く気はない、とこちらを窺いながら聞いて来るロジーナからは、さっさとどこかへ行けばいいのに……という言外の圧を感じる。
 俺だけならなんとでもなるというか、どこかにロジーナに対して考えたように、逃げる事も簡単にできるだろう。
 それこそエルサに頼めば、モニカさん達などの近しい人達を連れて逃げる事だってできる。
 けど、センテにはセンテに住んでいる人がいて、シュットラウルさにゃマルクスさんを始め、必死に守ろうとしている人達がいる。
 そんな人達を見捨てて逃げるなんてできない……俺にしかできない事があるから尚更だ。

 あと、モニカさん達を連れて逃げたとしても、そうした自分を自分自身でずっと悔やむ事になるし、モニカさん達にも顔向けできないからね。
 誰も犠牲にならない……というのはどう考えても不可能かもしれないけど、できる限り被害を減らしてセンテを守るのが、今の俺の役目だ。
 やる事は変わらないけど、皆を守りたいと考える思いはもしかしたら、怪我人の治療をしている時多くの人と触れ合ったからかもしれないね。

「ほんと、人間は面倒だわ。今の私じゃ、無理矢理リクをこの場から引き剥がす事は無理だし、どこかへ連れて行く事もできない。できるのは、私自身への危険を避けるために協力するしかないじゃない……ほんと、厄介な人間に関わってしまったわ」
「……俺からじゃなく、そっちから関わってきたんだけどね」

 そもそも、ロジーナが俺を利用して……みたいな計画を立てたからなんだけど。
 まぁそれは、破壊神としての役割を全うしようとしたからだろうから、今は特に何も言わない。
 人間の方で裁けばいいって事でもないからね……ロジーナを処罰すれば、破壊神もいなくなるのかもしれないけど、それはそれで人間側の勝手な考えのような気もするから。
 ……あまり、他の人には言えない事だねこれは。

 その後、ついでだからとスピリット達の事を聞いてみた。
 四体を一度に呼べた事を驚いていたみたいだから、詳しそうだからね……決して、また暇になりそうだから、話し相手になってもらおうというわけじゃ、ないわけでもない。
 とにかく、スピリット達の事……ロジーナ曰く、あれらは神様が作った存在ですらないらしい。
 この世界で自然発生的に生まれたんだとか。

 世界そのものは創造神であるユノが創ったのだから、ある意味ユノが創ったとも言えるんだろうけど。
 そして本来、形もそうだけど性格などの思考能力もなく、ただただたゆたう存在だったのだと。
 性質としては神様に近くはあって、生物とは言えないとかなんとか。
 でも、スピリット達はそれぞれに個性があって、形もちゃんとしていたけど……と思ったら、それは俺が召喚する際のイメージが関係しているからだろうとの事だ。

 火や水といった物に対する、俺のイメージが形を固定させて性格を決定させた。
 だから、それぞれのスピリットに似ている人が近くにいるんじゃないか? とロジーナに聞かれて考えてみると色々思い当たる節があった。
 アーススピリットのアーちゃんは土だから男性的なイメージで、特に印象の濃かったララさん。
 ウォータースピリットのウォーさんは水だから女性的なイメージ、だけど芯は強くて男勝りというか……俺の周辺には色んな意味で強い女性が多いから、その影響っぽい、マリーさんとか姉さんとか。

 ウィンドスピリットのウィンさんは、風のイメージから飄々としていながらも丁寧なイメージを勝手に思い浮かべていて、ヒルダさんの影響が強い気がする。
 フレイムスピリットのフレイちゃんだけはちょっと特殊で、初めて召喚したから少しずつ形が変わって行ったけど、燃え盛る炎のイメージと無邪気なイメージが重なった感じだ。
 無邪気さという部分で、ユノとロジーナからの影響が大きいかもしれない。
 もっとも、ロジーナの影響は乗り合い馬車で話した時のイメージだけど……まさか色々企んで仕掛けて来る破壊神だとは、夢にも思わなかった頃の事だ。

 そんな風に、俺が想像力を創造力に変えて召喚したスピリット達が、今の姿と正確に固まったというわけらしい。
 そもそも、ドラゴンの魔法でイメージが発現させられると言っても、本来召喚なんてできる存在じゃなかったらしいけども。
 結局召喚できるはっきりとした理由は俺には難しくてわからなかったけど、ロジーナは日本人だからとか、四大元素のイメージがこの世界の人間よりやりやすかったから、なんてブツブツ言っていた。
 結論としては、アニメや漫画からの影響でイメージしやすい素地があったから、と言われたけど本当にそうなのか微妙に怪しいところだったね。

「それで、さっきからきになっていたけど、そこに積まれている石は何? 尖っていて凶悪なんだけど」
「これ? これは暇潰しに俺が作った、石の矢だよ」

 スピリット達の話を終えた後、ロジーナが話題に出したのは俺が作った石の矢。
 端の方から少しずつ兵士さん達が運んでいるけど、本当に数を作り過ぎたのか、まだ半分も減っていない。
 石の矢、人の手の平くらいの大きさしかないのに、土などを凝固させているせいなのか結構一つが重いみたいだから。
 一つで五キロとか六キロくらいだろうか……小さいからと、一度に大量に持とうとした兵士さんが取り落としている場面もあったけど、腰を痛めていないか心配だ。

「……つっ……硬いわね。どんな作り方したのよ」
「ただ土とかを凝縮して固めるようにしただけだけど……一応、剣を軽く当てたくらいじゃ、壊れないくらいに作っているよ」

 転がっていた石の矢に向けて、ロジーナが両手で剣を振り下ろす。
 ガチッ! という音が聞こえたが、石の矢には欠けた様子は一切ない。
 手が痛かったのか、剣を収めて手をプラプラと振りつつ俺をジト目で見るけど……別に変な作り方はしていないんだけどな。
 次善の一手とかならまだしも、剣を振り下ろして当てるくらいで壊れていたら、魔物を貫けないし。

「今の……次善の一手だったかしら? 兵士達が使っている魔力の応用法よりも、強力な力を込めたつもりだったのだけど?」
「……え?」
「……リク、耐久テストをしていなかったのだわ。一度試してみるのだわ」

 次善の一手よりも強力な一撃? まぁ、ロジーナならそれくらいできそうではあるけど、そんなに強い一撃だったの?
 よくわかっていない俺に、エルサが頭から離れて浮かんで石の矢のテストをするように促す。
 確かに、石壁は試してもらったけど石の矢はただ作っただけだったね。

「私が魔力の輪を作るのだわ。そこを通るようにそっと投げてみるのだわ。何かに当てないと意味がないから……だわ?」
「私!? リクの作った物なんて、絶対当たりたくないわよ! こっちに来たら避けるからね!」

 的、と言った後ロジーナを見るエルサ。
 ザザ! と音を立てて後退りをして俺から距離を取るロジーナ……距離としては的にちょうど良くなったけど、さすがに人に向けるのはな。
 当ててテストするのが目的だし、避けられたら意味がないからね――。


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