上 下
1,204 / 1,903

モニカさんと一緒に行動

しおりを挟む


 スピリット達を召喚して、魔物の殲滅をした後南門の様子を見ていなかったから、一度見ておこうかと思ったんだ……あれ以来、南門の外側には一度も行っていないから
 ワイバーンを連れてきた時は上空から見下ろしたくらいだったし、あの時は門の内側に降りた。
 まぁ、スピリット達任せで魔物を倒した時も、エルサに乗って見守るくらいだったけど……アマリーラさん達を助け出す時くらいかな、地上に近付いたのって。
 あと倒したワイバーンの、素材回収の進捗とかも聞きたいからね。

 ユノもそっちに行っているみたいだし、ちゃんとやっているかを見るのもいいかもしれない。
 子供扱いすると怒りそうだけど……ロジーナの事もあるから。

「そう。それじゃあ私も今日はリクさんと一緒に行動するわ。あまり、東門には近付きたくないのよね……」
「え? でも、マックスさんやマリーさんもいるのに……」

 俺の予定を聞いて、頷いたモニカさん。
 今日は俺と一緒にという事だけど、東門に近付きたくないのはどういう事だろう?
 昨日までに何度も行っているし、両親のマックスさん達がいるのに、嫌がる理由がわからない。

「手伝わされるのよ。兵士や冒険者の世話というか、食事なんかの用意をね。少しくらいなら、私も問題ないと思うんだけど……ソフィー達と違って、獅子亭にいる頃のようにこき使われるから。今は母さんもいるからね」
「あー、成る程。マックスさんやマリーさんは、今食事担当になっているから……」

 溜め息交じりのモニカさんの話を聞いて納得。
 掃討作戦が本番に差し掛かって、冒険者は後方に回り、魔物と直接戦うのはシュットラウルさん配下の侯爵軍がメインになっている。
 一部の冒険者……ルギネさん率いるリリフラワーの人達や、元ギルドマスターさん、ヤンさんやセンテのギルドマスターであるべリアエスさんなど、作戦に参加している人もいるけどね。
 でも、盾部隊が前面に出る機会が減って、マックスさんが食事担当をするようになり、さらに魔法部隊もマリーさんが別の人に任せてマックスさんと一緒にいるようになった。

 そのため、東門内側の広場は今、獅子亭の出張所のようになっている。
 まぁ、食材の種類は少ないし、賄わなければいけない人数も多いため、質より量にはなっているんだけど。
 でもそこはそれ、さすがマックスさんと言うべきか、ちゃんと獅子亭で出している料理の味に近い。

 モニカさんがそこへ行けば、マリーさんによって獅子亭の時のように半強制的に手伝わされるからね……それを嫌がってって事だろう。
 手伝う事が嫌というわけじゃなく、東門に行けば一日中手伝わされて、そのために行くだけになってしまうからだと思う。

「わかった。それじゃ、準備をして宿を出ようか。あ、一応その前にカイツさん達の様子を見ないとね」
「……時々、ワイバーンが吠えている声が、ここにまで聞こえてくるのよね」
「ま、まぁ、研究の合間に皮を剥いでいるみたいだから。悲鳴じゃないし、そこは聞かなかった事にした方がいいと思う」

 モニカさんに頷き、カイツさんにも挨拶する事を伝えると、ちょっと微妙な表情になった。
 確かに朝起きてから何度か、ワイバーンの声が宿の中にまで聞こえている……ワイバーンにおねだりされて、皮を剥いでいるんだろうと思う。
 でもまぁ、最初の頃に建物が揺れる程の振動や音はないから、俺とモニカさんは見守るというか聞かなかった事にするしかないと、苦笑しながら言って、椅子から立ち上がった。


「街も大分、元に戻りつつあるみたいだね」

 カイツさんと、相変わらず特殊な趣味を持つワイバーンやボスワイバーンに挨拶して、モニカさんとエルサを連れて宿を出る。
 ボスワイバーンはもう色々と諦めたのか、ちょっと深めに地面に穴を掘って、体を丸めてその中でのんびり昼寝をするつもりのようだった……目が少し、達観したように見えたのは俺の気のせいか。

「えぇ。昨日聞いたんだけど、魔物を排除する見通しが立ったから、順番に住民達を戻しているんだそうよ」

 準備している、というのは俺も聞いたけど……既に街の人達を元に戻すよう、動き始めているのか。
 まぁ、趨勢が決まっていて万が一って事ももうなさそうだし、元の生活に戻るのが早いに越した事はないよね。

「賑わいと言う意味では、やっぱりヘルサルの方があるけど……センテも前みたいに、賑わってくれるといいよね」

 平常時の人の多さでは、やっぱりヘルサル程ではないんだけど……以前はセンテも十分に賑わっていた。
 それが今はまだ、兵士さんや冒険者さんが行き交っている事が多く、人がいないわけじゃないけど以前と比べると静かだ。

「そうね。センテは作物が集められるから、父さんみたいなお店をやっている人が多く行き交っているわ。商人とかもそうね。だから、そう言った人達の喧騒も戻って来るといいわね」

 俺の言葉に頷いたモニカさんは、目を細めながら周囲の景色を眺めている。
 獅子亭で生まれ育ったモニカさんにとって、隣街のセンテには何度も来ているんだろうし、慣れ親しんだ光景ってのがありそうだ。
 回数としては多くない俺でも、今のセンテはやっぱり寂しい気がするからね。
 以前は、街中を歩いていたら卸問屋から、仕入れ交渉する商人さんと問屋さんとの喧々諤々なやり取りが聞こえて来る事だってあったし。

 モニカさんと少しだけ感傷的になりながら、街の様子を見て回った。
 王軍の人と思われる兵士さんも行き交っていて、物資を運んでいるのも見かける。
 人手不足、物資不足もじきに解消されそうだね。


「リク様に、敬礼!」

 南門に到着し、魔物がいなくなったおかげで夜間以外は開け放たれている門を通り、外に出る。
 一応周辺の警戒はしていて、平常時よりも見張りが多くいるけど、それでも南側の魔物がいなくなった事で人の出入りが頻繁になっていた。
 そんな中、門を出た俺達の前にワイバーンに乗ったアマリーラさん達が降り立って、何故か整列。
 上司でも上官でもないのに、ワイバーンと横に降りた騎乗者が、それぞれ敬礼をしていた。

「えっと……何故?」
「これらワイバーンは、リク様から借りております。ですので、感謝のしるしと受け取って頂ければ」
「はぁ……わ、わかりました」

 思わず首を傾げる俺に、先頭にいるアマリーラさんが教えてくれる。
 敬礼が感謝のしるしになるというのはよくわからないけど、そういう事なら受け取っておこうと思う。
 リネルトさんもだけど、アマリーラさんの尻尾が左右に大きく振られていて嬉しそうだし、萎れさせる必要はないよね。

「と、とりあえず、ワイバーンの方はどうですか?」
「はっ、非常に従順で我々の指示に従ってくれて、助かっています。馬よりも扱いやすいですね」
「そうなんですか?」
「はい。馬だと……」

 このままだと、感謝と言いつつ俺を讃え始めてしまいそうなアマリーラさんに、話題替えとしてワイバーンを使っての様子を聞いてみる。
 ワイバーンからの言葉はわからなくとも、人間の言葉を理解して従っているので、馬よりもやりやすいんだとか。
 馬は、人間の言葉を全て理解しているわけじゃないから、仕方ない事だけどね――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

処理中です...