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ワイバーンは食糧消費が少ない

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 ボスワイバーンからワイバーンが増えた理由を聞きながら、一応もう再生して復活しそうなワイバーンがいないか、確認するようお願いした。
 素材を回収しに来た人達が、再生して完全に復活したワイバーンと鉢合わせると不味いから。 

『ソウイエバ、ミオボエガアルヨウナ、キガスル、デスマス』
「いや、仲間なんだろうから、覚えておこうよ……」

 ボスワイバーンは、増えたワイバーンの事を見覚えがあるのを思い出したらしいけど、一応仲間なんだから覚えておいて欲しかった。
 まぁ、そこらは人間と感覚が違うんだろうけどね。
 俺から見ると、ボスワイバーン以外のワイバーンは他と見分けがつかないけど……同じ種族のワイバーンだから、ちょっとした違いとかで見分けがつくんだろう。

「それじゃ、ここにいるワイバーン達も全て、再生するって事なのね?」
「そうみたい。全部、核から復元されて命令されていたんだって」

 見た目には違いがわからないけど、ここにいるワイバーン達は全て再生能力が強化されているみたいだ。
 まぁ、通常のワイバーンに人間が指示をして従わせるというのは、ほぼ不可能に近いからそうなんだろう。

『スベテ、ツレテイク? ソレトモ、イチブヲマビク?』
「マビク……間引く? さすがにそれは……」

 魔物だからなのか、シビアな考えをしているボスワイバーン……今の言葉で、何体かのワイバーンが諦めたような雰囲気を出して項垂れたんだけど。
 ボスワイバーンは思ったより頭がいいみたいで、受け入れる場所に限りがあると考えているんだろう……さすがに、どれだけでも連れて行って全てを受け入れられるわけじゃないからね。
 でもまぁ、多分三十体くらいならなんとかなるんじゃないかと思う。
 五十とかになるとさすがに考えないといけないし、数が増えれば増える程、兵士さん達だけでなく街の人達にも不安を与える可能性が高い。

「大丈夫だと思うよ、俺からもお願いしてみるから。まぁ、もし多過ぎて受け入れが困難だったとしても……」
『シテモ?』
「街に連れて行かなきゃいいだけだから。ワイバーン達はここでものんびり過ごしているみたいだし、しばらくはここにいてもらおうかな。まぁ、扱いというか色々差が出ちゃうとは思うけど」

 主に、食べ物たとかそういった部分だ。
 連れて行ったボスワイバーンやワイバーンには、ちゃんとした食べ物が用意されているし、ここから街に連れて行くワイバーンもそうなるだろう……あまり凝った物は用意できなくてもね。
 ただここにいるワイバーンまで世話をする事はできないので、残ったワイバーンは食料を自分でなんとかする必要がある。

「もしもだけど、お腹が減って人間を襲うなんて事をしたら、討伐対象になっちゃうから気を付けて」

 残った場合の事と、もし人間を襲った場合の事をボスワイバーンに伝える。

『ダイジョウブ、デスマス。ワレワレハ、シバラクタベナク、テモ、ヘイキ。オナカ、アマリヘラナイ、マス』
「そうなんだ。しばらくってどれくらいだろう?」
『ニンゲン、ニ、マモノヲハコブヨウ、イワレテ、カラ、ズットナニモ、タベテイナカッタ。デモチョットクウフク、カンジルクライ』
「魔物を運び始めてからって事かな? って事は……」

 センテが囲まれたのは、大体一カ月くらい前……それ以前は、俺が倒したワイバーンが魔物を食べていた場面を見たし、南側に捨てていた魔物の死骸も食い荒らした跡があった。
 だから食事はある程度していたんだろう。
 けど一カ月飲まず……はわからないけど、食べなくてもちょっとお腹が減ったくらいなら、平気って事か。
 一度に食べる量は体の大きさから、相当な量を食べそうだけど……食べる回数が少ないならなんとかなるか。

『イゼン、ハ、コンナコトナカッタ……キガスルデス。デモイマハ、ダイジョウブ、フシギ。アト、ワレワレハ、ニンゲンハ、タベナイ。マリョク、ニンゲンノモ、マジッテイル、カラ』
「なら、核から復元されたのが影響しているのか」

 つまり、人間の魔力を使って復元されているから、人間は食べない……逆に言えば通常のワイバーンは食べるって事だけど、それは今考える事じゃないか。
 復元されてから、空腹になるペースが遅くなったって事でもあるんだろうけど、これにも再生能力が関係しているんだろうか?
 欠損した部位すら再生するなんて、体のエネルギーを大量に使って栄養を欲し、すぐにお腹が減るように思うんだけど……それすらも再生? うーん、さすがによくわからない。
 このあたりは、ワイバーン研究に興味津々なカイツさん辺りに任せよう。

「リクさんとボスワイバーンが平然と話しているのを見ていると、不思議な気分ね。話がちゃんとできているのは、様子を見ればわかるんだけど、私にはボスワイバーンが何を言っているのかさっぱりだし……」
「ははは、まぁエルサを介してでモニカさんにはボスワイバーンが、何を言っているのかわからないから、仕方ないよ。とにかく、ここにいるワイバーン達はボスワイバーンの言う事を聞くし、人間といるのも嫌じゃないみたいだから、センテまで連れて行こう」
「こんな大量のワイバーンが、空を飛んで街に飛来なんて、よく考えなくても悪夢と言えるのよね。でも、今は心強い味方ってわかっているから、悪くない光景に見えるのかしら?」
「それは……見る人次第じゃないかな?」

 ワイバーンが味方だとわかっていても、魔物だし本来は恐怖する相手。
 戦えない人からしたら特にだけど、一部の人を除けば手も足も出ない魔物だから。
 いくら味方ってわかっていても、良い感情になるとは限らない……逆に、頼もしい味方と思ってくれる人もいるだろうけど。
 後者の考えの人が多いといいなぁ……。

「あ、それと……ボスワイバーン、昨日連れて行く時にも行ったけど人間を襲ったりしないよう、新しく加わったワイバーンにもよく言い聞かせておくんだよ?」
『モチロン、デスマス! ニンゲンオソウ、リク、ト、ソラノハシャ、ニ、ツブサレル』
「いや、潰しはしないけど……」

 まぁ、討伐する事になるだろうから、潰すのと大差はない……のかな?

「まぁ、何はともあれ人間とはできるだけ穏便にね? 困った事があったら、俺やエルサに行ってもらっていいから」
『アリガタク、デス』

 ボスワイバーンだって初めての事だろうし、他のワイバーン達もそうだ。
 魔物だからと攻撃するような人がいたら、反撃しないとも限らないし……俺も注意して見ておく必要があると思う。
 なんだかんだ言って、俺もボスワイバーン達に情が沸いているのかな? まぁ、懐いているのとは少し違う感じだけど、今のところ言う事を聞いてくれているからね。

 お互い歩み寄るために連れて行くと決めた俺が、間に入るのは当然の事だと思う。
 シュットラウルさんが受け入れると決めたっていっても、個人の感情は別だから。

「それじゃ、全員準備は整ったかな?」
「ガァゥ!」
「GRA!」
「本当に、この数のワイバーンを連れて行くのね……凄いわ」


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