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モニカさんに気持ちを伝える

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 真剣に俺のためにと訴えるモニカさんだけど……そもそも、俺は仲間をそんな自分の役に立つかどうかで見たりしない。
 そりゃ、モニカさんに危険が及ぶ可能性っていうのも、今後あるだろうし……でもそもそもに、モニカさんは気付いていないようだけど、これまでもよっぽど危険があったと思うんだよね。
 ヘルサル、エルフの村、王都、ルジナウム……他にも色々。
 むしろ、そんな危険な目に遭わせていると考えたら、俺の方がろくでなしに思えてきてしまうくらいだ……。

「モニカさん、えっとね……俺が破壊神によくわからない空間に隔離されて、戦っていた時の事なんだけどね?」
「え、うん……」

 モニカさんを置いてどこかへ行くなんてない、それをわかってもらうために、できるだけ声音を穏やかにするように意識しながら、話して伝える。
 急にまた破壊神との話に戻ったから、モニカさんはキョトンとしていたけど……でも、あの時の戦いはモニカさんのおかげで切り抜けたと言っても過言じゃないからね。
 それを伝えて、決してモニカさんを置いて行くなんて事がないと、わかってもらわないと。
 そうして、俺は隔離されていた空間での事を事細かに……はちょっと長くなるから、多少省略しつつ語って聞かせて行った。

 空間とこちらでは時間の流れが違う事などもだね、そのせいで、戻ってくるのが遅くなったから。
 ちなみに、長話になっているので本当ならもうワイバーンの所に到着しているはずなんだけど、エルサが高度を上げて広く地上を見下ろせる状態で、ゆっくりとセンテ付近を飛んでくれている。
 さすが相棒、気が利くじゃないか……なんて考えたら、エルサからリクは気が利かなさすぎなのだわーと、返されたような気がした。

 ボスワイバーンの方は、速度を緩めたからのんびりと空を飛べるようになって、楽しそうに満喫している様子だった。
 センテ出発直後は、エルサの速度について来るのに必死だったみたいだからね。

「まぁ、そんなこんなで……圧倒的な差、という程じゃないけど俺にはどうしようもないかなって、諦めかけたんだ」

 破壊神が加減をしていたのもあって、結果的にはなんとか対処できたとはいえ、最初はどうしようもないように感じられた。
 ただの結界ならほぼ素通りする閃光に、結界が破壊されてしまう衝撃。
 こちらから思いっ切り剣を当てても、傷一つ付かないし……冷静に考えたら、勝てる要素はほぼないよね。

「でも、なんとかエルサを先に外に出して、俺も脱出できた」
「そう、なのね……」

 あの時諦めてしまっていたら、破壊神は俺を殺すつもりはなかったみたいなので、生きてはいただろう。
 けど、干渉力を消費させずにいた場合、こちらではもっと長い時間が経っていたのは間違いない。
 それこそ数十日どころではなく、一年以上であってもおかしくない。
 まぁ、破壊神が途中で出してくれそうではあったけど……少なくとも数カ月は経っていただろうし、破壊神の干渉力を残したままでは、この先も不安がある。

 それに頑張ってエルサを先に脱出させ、俺も出てきたからこそセンテに魔物が侵入する前に間に合った。
 エルサも外に出ていなければ、多分センテはほぼ壊滅に近い状態になっていたかもしれない……破壊神の言っていた予想より、持ち堪えていたみたいだから、避難して助かる人は多かっただろうけど。
 でも、犠牲者は少なくできた。
 それもこれも……。

「全部モニカさんのおかげなんだよ」
「私の……?」
「うん。破壊神の前で、諦めそうになった時とかにね……その、ちょっと言うのは恥ずかしいんだけど……」
「え?」

 モニカさんから視線を外して、頬を指先でポリポリとかきながら言葉を躊躇う。
 破壊神の事など、出来事を話すだけならともかく、これから先は俺の考え……心情を話す事になるから、やっぱり恥ずかしい。
 しかも、空の上で他に人のいない状況だ。
 ……周囲に人がいても恥ずかしいだろうけど、それはそれ。

「えっと……モニカさんの笑顔がね、頭の中に浮かんだんだ」
「わ、私!?」
「うん。それでね、絶対にもう一度モニカさんの笑顔を見たいなって。そう思ったら、絶対にここから息て出てやるぞ! って、そう持ったんだ……」
「……」

 思い切って、あの時考えていた事をモニカさんに話す。
 破壊神の企みがわかってからは、俺自身の生死はあまり関係なくなったけど、それでもできるだけ早く戻りたい。
 センテで魔物と戦っているはずの皆、特にモニカさんを助けに行きたい……って考えていた。
 実際外に出てみると、マックスさん達が来ていて驚いたし、緊急の助けはいらなかったわけだけど……俺も、魔力が少なくてすぐに休まなきゃいけなかったし。

「だから、魔物がセンテに侵入する前に戻れたのも、エルサが先に外に出られたのも、全部モニカさんのおかげなんだよ。モニカさんは自分が置いて行かれるって思っているかもしれないけど、俺はモニカさんを置いてどこかに行ったりはしないよ」

 一時的に、役割を別けて別の場所にいるって事はあるだろうけど、ルジナウムとブハギムノングの時みたいに。
 でも、二度とモニカさんと会わないような、そんな離れ方は決してしない。

「少なくとも、モニカさんが俺を嫌ったりしない限りは、ね……」

 気恥ずかしさに、誤魔化そうとする気持ちがもたげて来るけど、それを振り切ってモニカさんをしっかりと見る。
 そうして、視線を外したい衝動を自制して笑いかけた。

「そ、そんな! 私はリクさんを嫌ったりは! それどころか……っ!」
「そうだね、モニカさんは理由もなく俺を嫌ったりはしない。それくらいは俺にもわかるよ」

 俺は真っ直ぐ見ていたのに、今度はモニカさんの方が勢いよく顔を背けて叫んだ。
 うん、モニカさんは俺を嫌ったりしない……それは、右も左もわからず無一文で獅子亭に飛び込んだ、そこで出会った時からの付き合いでわかっている。
 それこそ、俺がろくでもない事をしたり、悪党にでもなれば別だろうけど。
 あ、エアラハールさんみたいに、隙あらば女性に触ってトラブルを起こすとかだと、さすがに嫌われちゃうかな?

「だから、モニカさんが俺の役に立っていないとか、俺がモニカさんを置いてどこかに行くとか、そんな心配をする必要はないんだよ」
「そ、そう……」
「俺がセンテに戻って来た時、宿の前で倒れそうになったでしょ? あの時、モニカさんが支えてくれて、すっごく安心したんだ。あぁ、戻ってきたんだ、戻ってこれたんだ……ってね」
「う、うん」

 そっぽを向いているモニカさんに、この際だからと俺の心情をぶちまける。
 置いて行かれるかもなんて心配をしているモニカさんには、知っていて欲しかったから。

「だから、モニカさんにとっては迷惑かもしれないけど……俺にとって、そうだね。モニカさんのいる場所が帰る場所っていうのかな? そんな風に思っているんだ」
「え、えぇ……そう、そうなのね。うん、もうわかったから……リクさん、これ以上は私がもたないわ……」


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