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アマリーラさん達の保護
しおりを挟む「私に怯えるくらいなら、最初から向かって来るんじゃない! そ……っ!?」
「ぶべ……!」
強制的に、アマリーラさん達と魔物達の間に壁を作って隔離する。
勢いがあまってというか、動き回っているリネルトさんのタイミングを掴むのが難しかったけど……とりあえず成功。
アマリーラさんは、剣を何もないはずの空間で結界に阻まれて動きを止め、リネルトさんは顔面を結界にぶつけていた……ごめんなさいリネルトさん、もう少しタイミングをしっかり見ていた方が良かったですね。
「な、なんだこれは!? くっ、閉じ込められた? 魔物め、珍妙な事を……だが、この程度破ってみせる!」
「……もっとやる気が漲っちゃった。おーい、アマリーラさん、リネルトさーん!」
結界が魔物の仕業と考えたのか、アマリーラさんは剣を何度も打ち付けている。
魔物達も驚いて、外から結界に対して攻撃しているんだけど、それすら目に入っていないようだ。
一応、気付いてくれる事を願って声をかける。
結界は、二人を包む形ではなく囲む形……つまり円柱状に作っていて、上部は空けてあるし俺達もいるんだけど……上を見てくれないなぁ。
こんな事なら、シュットラウルさんの所でさっきやったように、色を付けた方が良かったかも? 透明よりも外側が見えない方が、落ち着いてくれたかも。
「うぅ、鼻が痛い……あ、リク様だぁ!」
「どうもー」
あ、リネルトさんが気付いてくれた。
上を見たリネルトさんが俺達に大きく手を振ったので、こちらも振り返す。
ただリネルトさんの鼻の頭が赤くなっているから、それなりの勢いで結界にぶつかったんだろう……ちょっと罪悪感が沸く。
「そう、リク様のため……あん、なんだってリネルト?」
「リク様ですよぉ、アマリーラ様。ほらほらぁ」
「何を言って……リク様はまだお休みになているはず。こんな所にいるわけが……はぇぇぇぇぇ!?」
「えーっと……やぁ! でいいかな?」
「何か違うと思うのだわ。でもやっと気づいたのだわ」
ようやく、リネルトさんの様子に気付いたアマリーラさん。
剣を止めたアマリーラさんは、リネルトさんが上を示すのに従って、ようやく俺達のいる空を見てくれた。
大きな声を上げて凄く驚いているアマリーラさん……どう言葉を掛けたものかと、少しだけ考えて無難なものにした。
エルサは溜め息交じりだけど、他に思いつかなかったんだから仕方ないじゃないか。
「り、り、り、り、り……」
「……?」
目を見開いているアマリーラさん、何故か「り」という言葉を繰り返す。
「リク様ぁぁぁぁぁ!!」
「ぶわっ!? ちょ、ちょっとアマリーラさん!?」
「と、突然飛び乗るななのだわ! 重いのだわ!!」
「あららぁ、アマリーラさん熱烈ー!」
首を傾げる俺に向かい、飛び上がったアマリーラさんがそのまま抱き着いて来る。
驚いたせいもあって、エルサから落ちそうになったけど……なんとか耐えた。
急に抱き着いた……いや、飛び乗った状態になってアマリーラさんの体重がエルサにかかってしまったので、エルサも一瞬体勢を崩しかけたけど、怒りながわなんども羽ばたいてバランスを保ってくれた。
地上では、こちらを見上げているリネルトさんの暢気な声……。
「リク様、リク様、リク様ぁぁぁぁぁ!!」
「ちょっと、苦し……っ! アマリーラさん、落ち着い……てっ!」
「ふごっ!?」
「はぁ……ようやくおとなしくなった……」
アマリーラさんは、俺の首に腕を回して全身で抱き着いたまま、俺を呼び続ける。
尻尾が激しく振られているから、再会を喜んでくれているのはなんとなくわかるけど……さすがに色々と柔らかかったり、状況が柔らかかったり、魔物が周囲にいて柔らかかったり……じゃない!
変な思考に支配されそうになるのを振り払うように、息が詰まる中でアマリーラさんを引き剥がしつつ、頭頂部に拳骨を振り下ろす。
そこまで力を入れていないはずだど、ようやく沈黙してくれた……。
「……モニカに言いつけてやるのだわ」
「待ってエルサさん? それはなんだか嫌な予感しかしないので、止めてもらえますか?」
「知らないのだわー」
エルサがボソッと呟く言葉……非常に、そして破壊神との対峙よりも不味い事態になりそうな予感、いや悪寒。
丁寧にお願いしたんだけど、エルサは聞く耳を持ってくれない……くっ、なんとか回避する方法を考えなければ!
「ほぇー……はっ! リ、リク様、痛いです!」
「痛みを訴えるのが遅いですよ。とにかく、一度離れて……っしょっと。これで少しは落ち着いて話せますね。はぁ……」
俺の拳骨で、少し呆けてしまっていたアマリーラさんが気付き、頭を抑えながら文句を言う。
衝撃の聖だろうけど、反応が遅かったね……というか、手を離して頭を抑えたら危ないから、落ちるから。
仕方なく、アマリーラさんの体を支えつつエルサに乗っている俺の後ろに乗せた。
少しエルサの高度が下がったのは、アマリーラさんを乗せた衝撃と重さのせいだろう。
「重いのだわ……もう面倒なのだわ!」
「っとと!?」
「え、え、え?」
エルサがボソッと呟き、さらに叫んだ瞬間に発光。
二人分の体重を支えるのに耐えられなくなって巨大化した。
後ろでは戸惑うばかりのアマリーラさん……乗っている状態で大きくなるのは初めてだけど、できたんだ。
まぁ、エルサの魔力は心配だけど乗る場所が広くなるのでありがたい。
「これでいいのだわ。楽になったのだわー」
「ありがとうエルサ。――そろそろ、落ち着きましたかアマリーラさん? でも、よくあの高さを飛んできましたね……」
エルサにお礼を言いつつ、後ろにいるアマリーラさんに声を掛ける。
地上から数メートル……大体五メートル以上はある高さを、ジャンプで飛びつくのは相当だ。
……やろうとすれば、俺もできるだろうけど。
「……はっ! リ、リク様。エルサ様。も、申し訳ございません!」
「え? あぁ、飛びついた事ですか? 確かにちょっと危険だったから……落ちるかもしれないし」
「いえ、そうですはなく……リク様と洞窟での捜索。リク様を見失ってしまいました……そして、リク様が戻って来るまでに魔物達を殲滅したかったのですが、それも敵わず」
「……まぁ、洞窟での事は仕方ないですよ。アマリーラさん達が悪いわけじゃありません」
破壊神がやった事だからなぁ……アマリーラさんがどうこうできる問題じゃないのは間違いないし、原因の一つですらない。
「それと、魔物達の殲滅なんてアマリーラさん一人でどうにかできるわけでもありませんから。謝る事じゃないですよ」
「力不足を痛感しております……」
これだけの数の魔物……しかも、倒しても追加が来ているらしい状況を一人でなんて、どうにかできるわけがない。
魔物が増える原因から叩かないと各方面広範囲に広がっているから、魔力が完全に回復した俺とエルサでも難しいだろう。
一時的には殲滅した風にできるだろうけども。
多分、どこかに大量にいるサマナースケルトンが追加の魔物を召喚し、それをワイバーンが運んでいるんだろうから――。
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