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南門上部での再会
しおりを挟む「破壊の駄神を参考にしたら、それはもうリクが破壊神なのだわ! もしかして、これがリクが破壊に傾くって事なのだわ?」
「……さすがにそこまでは……違うと思うけど、気を付けるよ」
うん、これはエルサに言われて仕方ないし、反省しないと。
魔物をなんとかできても、味方の兵士さん達まで全滅……なんて事があっちゃいけないから。
あと、さすがに俺が破壊神だなんて……だなんて……実際にやったこれまでの破壊を考えると、直接の破壊活動をしていない破壊神より、よっぽど破壊の神と言われても仕方ないように思えた。
……狙って破壊しているわけじゃないんだけどなぁ。
「と、とにかく、魔物の動きもほとんど止まったし、これなら十分な時間を稼げると思うから、さっさと南門に向かおう!」
「誤魔化せていないのだわ。むしろ、このままリクがこちらを先に殲滅した方がいい気がするのだわ……はぁ……だわ」
そう言いながらも、素直に南に向かって飛び始めてくれるエルサ。
魔物の前身は完全に止まっていて、ある程度の大きな被害を出せたみたいだ……兵士さん達側も、多くの魔物がドミノ倒しで倒れかかって物量ならぬ重量で押されて、押し返せてもいないんだけど。
ともかく、同じような広範囲の魔法を使うには、残りの魔力が心配だ。
今ので大体全体魔力量の一割近くを使った感覚だから……魔力枯渇は避けたいし、ある程度以下の魔力になると意識を保っていられるか怪しいからね。
真っ先に魔力溜まりの発生を阻止すると決めたんだから、南側の魔物をなんとかするだけの魔力は残しておかないと。
「よしよし、ちゃんとシュットラウルさんが指示が通っているみたいだね」
南門付近に来ると、門から街にかけて多くの人が固まっているのが見えた。
門の中まで引いて、東と北に振り分ける人を選別しているのだろう、数人ずつの集まりがそれぞれ別の集団を作っている様子がわかる。
さらに、外壁の上にも人を配置して、門に近付いたり壁に張り付こうとする魔物に対して、魔法や弓矢で攻撃しているようだ。
まだ門は完全に閉じていないようで、外にも人がいて戦いつつ後退もしていた。
集まっている人など、それぞれが統一感のない装備をしているのは、こちらには冒険者が多めにいるからだろう。
とはいっても、中には兵士さんの姿も見えるけど。
「こっちも、うじゃうじゃいるのだわー」
「東側程じゃないけど、確かにね」
エルサの言う通り、うじゃうじゃいるという表現がぴったりなくらい、魔物達が門や外壁に群がろうとしている。
俺達が以前調べていた南の平原を、真っ黒に埋め尽くすくらいの魔物の群れ。
東側より範囲が狭いから、数はこちらの方が少ないんだろうけど。
「ん? あれは……」
エルサに乗ったまま空から様子を見ていると、外壁の上でこちらに向かって手を振っている人が……。
高すぎない位置を飛んでいるので、上を見ればすぐにわかるだろうけど、どうしたんだろう?
何やら、手を振っている人に見覚えがあるような……?
「エルサ、外壁の上で手を振っている人の所に近付いてくれるか?」
「わかったのだわー」
エルサにお願いすると、ゆっくり高度を落として外壁の内側から近付く。
外側からだと、魔物に向かって放っている魔法とかの邪魔になるからね。
「……あれは、アンリさん? よく見たら他の人達も……」
「おーい、リクさぁーん!」
近付いて見てみると、手を振っていたのはアンリさんだった。
俺が近付いて来るのがわかったからか、それとも元々なのか大きな声でこちらに呼びかるのが聞こえた。
周囲には、ルギネさんや他の人達……リリフラワーのメンバーがいる。
アンリさん以外、ルギネさんは弓矢でグリンデさんとミームさんは魔法で、外にいる魔物に対して攻撃をしている最中のようだ。
……こんな場面でも、声を掛けて来るアンリさんは相変わらずだね。
「アンリさん。それにルギネさん達も」
「お久しぶりねぇ、リクさん。戻ってきたと聞いたけど、本当だったみたいね。空を飛んでいるのが見えたけど、最初はワイバーンかと思ったわぁ」
「ワイバーンなんかと一緒にしないで欲しいのだわ。心外なのだわ」
「ごめんねぇ。空を飛んでいると言えば、今ここではワイバーンくらいだったから。でもすぐに、白い綺麗な毛が見えたから、リクさんとエルサちゃんだってわかったわぁ」
さらに近付いて、俺からもアンリさんに声を掛ける。
エルサはちょっと拗ねたように言っているけど、空を飛んでいるとなればまず真っ先にワイバーンを疑うだろうから、仕方ないと思う……状況が状況だからね。
でも、遠くから見てもワイバーンと違って、真っ白なエルサとわかるからすぐに違うと気付いてくれたようだ。
エルサとわかったから、俺が乗っていると思って手をふっていたんだろう。
グリンデさんとミームさんは、こちらに興味がないようで顔すら向けずに魔物への魔法攻撃を緩めない。
ルギネさんは……声を掛けた時、一瞬こちらを向いたと思ったんだけど、すぐに弓を引き絞るのに集中した。
チラリと見えたルギネさんの顔が赤かった気がするのは、疲れからだろうか? というかルギネさん、弓矢使えたんだ。
聞けば、リリーフラワーの人達もマックスさん達と一緒に、センテの応援に駆け付けていたんだそうだ。
現役の冒険者たから、マックスさんとは違ってこちらに配置されたんだろう。
「おぉ、リク様ではないですか!」
「あ、元ギルドマスターも。来ていたんですね」
「こっちは冒険者の受け持ちだからね、ヘルサルから来たのも、センテにいたのも揃っているわよ」
突然大きな声が響いたと思ってそちらを見れば、ヘルサルの元ギルドマスターが筋肉を誇示するようなポーズで立っていた。
……面倒だから追及はしないけど、何故上半身裸なんだろう? 魔物に筋肉を見せるためかな。
「センテのギルドマスターも、ヘルサルの現ギルドマスターも、あちらにいますぞ」
「本当だ。勢ぞろいって感じですね」
言われて見てみると、センテのギルドマスターであるベリエスさんと、ヘルサルのギルドマスターのヤンさんがいた。
他にも、ヘルサルやセンテで見かけた冒険者さん達の姿が見える。
ベリエスさんは、声を張り上げて外壁の上にいる冒険者さん達への指示や檄を飛ばし、ヤンさんは両手に装着したガントレットから魔物に向かって何かを高速で連射していた。
ガトリングを彷彿とさせるくらい連続で打ち出されているのは、火を纏った小さい刃? かな。
しばらく撃って、次弾というか刃を装填してまた連射……一発の威力は低めに見えるけど、あれだけ連射されたら、壁に近付こうとしている魔物はどうしようもない。
近づく魔物を押し留めるのに一役買っている。
火を纏わせているという事は、あのガントレットも魔法具なんだなぁ……そういえば、以前センテに一緒に来た時に買った物だ。
いい武具が買えたとか言っていたっけ。
「元ギルドマスター、なんとなくは上から見て知っていますが、こちらの状況は?」
「芳しくはありませんが、なんとか押し留められています。今は侯爵様の指示通り退避させている途中ですが……」
「どうかしましたか?」
途中で言葉を止める元ギルドマスター。
順調に進んでいるのかと思ったけど、何か問題があるのだろうか?
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