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リク式魔力増大法

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「私はまだ全然なのだわー。大きくなったり、魔法を使うくらいはできるのだわ。けど、全力には程遠いのだわー」
「けど、それくらいなら自力である程度は回復するだろ? まぁ、魔力切れになる事はなくなったって事だね」

 エルサの方も、自己回復ができるようになる以上の、ある程度動けるくらいまで魔力が回復しているようだ。
 さすがにお互い、満タンというわけではないけど。

「リクさん、その……大丈夫?」
「うん、まぁね。なんとなくだけど、半分にはいかないくらいだけど、戦えるくらいには魔力も回復したと思う。体の方は……そもそも怪我はしていなかったし、そこまで疲労していたわけでもないからね」

 怪我らしい怪我と言えば、破壊神の閃光を初めて受けた時、肩付近を少し焼かれたくらいだ。
 それも治癒魔法で治したし、怪我そのものはなく身体的な疲労というのもそこまでなかったからね。
 精神的だったり、魔力的な疲労や消耗はかなりのものだったけど。

「半分もないって……それ、結構危険な気がするんだけど?」
「大丈夫。今の半分だから、多分昨日までで考えると、かなり回復していると思うよ」

 感覚的にだけど、八割くらいかな? 多分、総量が多いと寝ている時の回復量も多いんだと思う……以前のままの魔力量だったら、今の二割とか三割くらいしか回復していなさそうだ。

「リク、自分の魔力がわかるのだわ?」
「あぁうん。あれと戦った影響かな? あ、多分魔力を圧縮して使う方法を意識的にやり始めてからか。そのくらいから、自分の魔力の限界と残りがなんとなくね」

 なんといえばいいのかわからないけど、意識して使うようになったからなのか、自分の奥にある魔力と全体がおぼろげながらわかるようになっている。
 イメージ的には、魔力で満たされる器とそこに入っている自分の残り魔力が、頭の中に浮かぶ感じかな。

「異常な量の魔力の扱いに慣れたからかもしれないのだわ。でも、昨日までとは違うのだわ?」
「あぁうん。よくわかんないけど、多分昨日より魔力の総量というか、入る器が大きくなっている感じかな」

 昨日までよりも、魔力で満たすはずの器の大きさが、倍くらいの大きさになっている感じだ。
 器が完全に満たされた状態が満タンだとするなら、器の大きさから昨日までよりも総量は倍以上になっていると思う。

「限界近くまで使ったからだわ。リクは元々異常な魔力量だったから、それを入れるための人の器もガバガバですぐに広がるのだわ。通常はそんな事ほとんどないのだわ」
「そ、そうなんだ……てか、ガバガバって言わないで、なんか嫌だ」

 多分、器の大きさが変動しやすいって事なんだろ思うけど、さすがにその言い方はちょっとね。
 モニカさんを交えながら、エルサに話を聞いてみる。
 なんでも、空っぽ近くまで魔力を使ったから回復する際に器が大きくなったって事らしいけど、それどこの戦闘民族かな? と一瞬考えてしまった。
 本来はそんな事ほとんど起こらないんだけど、元々の魔力量が異常に多い俺は回復する時の魔力量も多いわけで、その反動というか勢いで器が大きくなったんだとか。

 十しか入らない器に、いきなり八とか九を入れたから膨らんだって事らしいけど……ちなみに、器は木や金属ではなく、風船とかみたいに膨らむ物で一度膨らんだら縮む事もないとか。
 そう言われて、首元が伸び切ったダルンダルンのTシャツを思い浮かべたけど、多分違う。
 だから、ルジナウムの時も一気に魔力を使って、そこから一気に回復したから使用量的には低くても、魔力量が増えたのか、と一応は納得した。
 途中モニカさんが、俺以外の人間でもそうやれば魔力量が増えるのかって質問をしたけど、そうなるかどうかは可能性としては小数点以下の確率らしい。

 元々の総量が少ないから、風船も小さく硬いからとかなんとか……よくわからなかったけど、無理をして俺みたいに意識を失うくらい魔力を使って、総量が上がる確率がそんなに低いなら割に合わない気がした。
 まぁ、モニカさんは風船とか小数点とか言われて、よくわかっていないようだったけど。
 とにかく、ほぼ不可能という事で納得してくれていた。
 うん、無理はしない方がいいと思う……やり過ぎて魔力枯渇とか怖いからね。

 それに、総量が増えそうなくらい魔力を使用するにしても、それまでに通常は意識を失うのだとか。
 昨日、俺が寝るまで一応は歩いたり話したり、意識を保っていたのもおかしいくらいらしいし。
 意識を失っても、外部から魔力を奪う方法……例えば、俺の使っている黒い剣を持たせるなどでできなくはないと思うけど、危なすぎるから却下だ。

「あぁ、だからツヴァイとかクラウリアさんも……」

 多分、魔力を分け与えられて無理矢理に器を広げた事で、通常ではあり得ない魔力量になっていたって事か。
 他人の魔力を注がれているわけだから、適合しなければ大惨事になるみたいだけど。
 まぁそもそも、他人の魔力とか関係なしに外部から魔力を注ぐって時点で、危険な事なんだと魔力を意識的に深く感じる事ができるようになった今ならわかる。
 自分の魔力でも、一度外に出たものは多少変質しているはずだから……。

「なんとなく話はわかったよ。さて、このままここで話し込んでいるわけにもいかないし……モニカさん、ソフィーとか他の人達は?」
「ソフィー達は、南門の外にいるわね。私はリクさんを看るために、ここにいるけど……南側の要になってくれているわ」

 モニカさんによると、冒険者としてソフィーやフィネさんはユノと一緒に、南側の防衛を担当してくれたいるんだとか、フィリーナやカイツさんもそっちらしい。
 さすがに、魔物に昼夜は関係ないので夜になったら宿に戻って……という事はできず、詰めているんだとか。
 モニカさんもそうだったんだけど、俺が戻ってきたとの報せが入って急いで宿に来て、倒れそうな俺を発見したらしい。
 東門はマックスさん達が魔物を引き付けて戦っていたから、どうやってあのタイミングで報せを出せたのか……と思ったけど、わざわざ東門を通らなくても伝令さんが南側に回ったからとの事だ。

 ……そりゃそうだよね、土壁の拠点は東門の外にあるんだから、わざわざ街に入らずそのまま外壁沿いに南へ行った方が早いよね。
 しかも、俺が街中に入ってから宿に行くまで、実際はかなりの時間が経っていたらしく、それでモニカさんは俺が倒れる直前に間に合ったらしい。
 あの時体が重くて引きずっている感じだったから。

「センテのギルドマスターが冒険者の指揮をしているけど、ヘルサルから緊急事態とヤンさんも来てくれているわ」
「ヤンさんが。それは心強いね」

 マックスさんは東側にいたけど、ヤンさんは南側か……現役冒険者は南に集中しているから、ギルドからの人もそちらに行くように配置されているのかもしれない。

「え、俺一日以上寝ていたの?」
「そうよ。全然起きないから心配したわ。けど、母さんやソフィー達からは、できるだけ休んでもらった方が、起きた時に頑張ってくれるだろうからって」
「魔物をなんとかするくらいは大丈夫そうだったから、私が起こす事にしたのだわー。お腹も減ったしなのだわ」


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