神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
上 下
1,079 / 1,913

膠着状態みたいな状況

しおりを挟む
「はい。状況を見定めれば、もう少し敵が接近した状態でも魔法で援護できるかなぁと」
「さすがに今すぐはできんだろうが……考える余地はありそうだな」
「大規模な戦闘になると、本当にできるかはわかりませんが……」

 考えたのは、誰かが戦況を見定めてどこへ魔法を撃つかという判断と指示をする事。
 ツヴァイの地下研究施設で、フィリーナが全体を見通していたのを思い出しての事だ。
 兵士さん達の中に、フィリーナと同様に特別な目を持つ人はいないだろうけど、全体を多少は見れる人はいるはずだ……だから一人ではなくて数人だし、それでも大規模な戦いで適応できるかはわからないんだけどね。

「あとは……味方が当たっても無事でいられるような何かがあればなぁ。あ、そうか。でもさすがに難しいか……とにかく今は、演習に集中だね」

 衝撃くらいはあるだろうけど、今の金属鎧よりももっと頑丈な鎧……ワイバーンの素材を使った鎧があれば、味方の魔法が多少当たっても大丈夫な気がした。
 少なくとも、火の魔法は弾く事ができるし、風の魔法で斬れる事はない……けど、素材がない事と費用も掛かるし、すぐにどうこうできるわけではないので、考えるだけに留めた。
 今はまず、今進行している演習が大事だからね。

「ソフィー、横! フィネさん後ろ! っ、このぉ!」
「助かる、モニカ!」
「ふっ! ありがとうございます、モニカさん!」

 アーチ付近では、剣を持つソフィーと斧を持つフィネさんが主に兵士さんとぶつかり、数歩後ろからモニカさんが周囲に注意を払いながら、槍で援護していた。
 今は、モニカさんから注意され、正面の兵士さんに気を取られていたソフィーが横から突かれた槍を避け、フィネさんは後ろに回られた兵士さんが振り下ろす剣を避けていた。
 さらに、フィネさんの後ろに回っていた兵士さんは、モニカさんの槍で薙ぎ払われて弾き飛ばされる……フル装備の兵士さんを横に飛ばすくらいの威力があったんだなぁ、モニカさんの薙ぎ払い。

「あっちは、モニカさん主体に動いて兵士さん達と戦っているけど……やっぱり数の差で押せないみたいですね」
「まぁ、容易にはいかないだろう。モニカ殿達が戦うのは初めて見たが、中々なものだな。連携も上手く取れているし、お互いを補い合っている」

 アーチ付近は兵士さん達が集団で固めており、一番数も多いため三人がかりでも簡単には押し込めないようになっている。
 しかも、槍を使って長いリーチの利点で押し返そうともしているので、余計苦労している様子だ……アーチの外側に向けて、一メートル程度の壁の外側にとげを付けたのは余計だったかな……。
 まぁ、壁があるおかげで、兵士さん達も大量にアーチから出て来られず、限定的になっているのでお互いさまって事にしておこう。

「アマリーラとリネルトは……完全に、兵士達への訓練みたいになっているな」
「そうみたいですね……まぁ、リネルトさんは少し怪しいですけど」
「駄目だ! そんな事では街や民を守れるわけがないだろう! ……中々鋭い突き込みだが、ただそれだけだ! お前は遅い! もっと速く動かないと、味方にも迷惑がかかるのだぞ!」
「こうやって動くと、素早く動けるのですよ~。こうして、相手の死角に入るように動くと、そもそもの動きが遅くても、早く見えたりもしますよ~……ふふふふふふふ!」


 左右に目をやると、兵士さん達に囲まれながらも薙ぎ払い、打ち払い、怒号を飛ばすアマリーラさん。
 それは兵士さん達に指導しているようで、鬼教官ながらも的確な指摘でこれが訓練何だと思わせてくれる。
 リネルトさんも、教えるように話しているようだけど……あっちは、目にもとまらぬ速度で兵士さんの視界から消えて、後ろから笑いながら剣を振り下ろして強烈な一撃を与えるという……恐怖を植え付けているようにしか見えない。
 まぁ、離れて俯瞰している俺達から見ると、リネルトさんはただ横に動いただけにしか見えないんだけど、それが速いのと、正面に立って集中していた兵士さんからしてみれば、消えたように見えるんだろう。
 あと、戦闘でハイになっているのか、笑い声が怖い……兵士さん達のトラウマにならないといいけど。

「それにしても、アマリーラさんもリネルトさんも魔法で援護していると言っても、兵士さん達相手になんとかなっていますね」
「それはそうだな。アマリーラもリネルトも、両方冒険者で言うとAランク相当の強さだと思っている。まぁ、経験だの依頼達成数だので、Bランクのようだがな」
「え……そうなんですか?」
「うむ」

 開始からずっと、フィリーナやカイツさんの魔法援護が続いているおかげもあるとは思うけど、アマリーラさんもリネルトさんも、それぞれ兵士さん達の集団に一人で飛び込んで、戦い続けている。
 もう結構な数をあしらっているから、かなりの実力者なんだろうし、それはヒミズデミモグと戦った時にもわかっていたけど……まさかAランク相当の実力だとは。
 Aランクになるには、実力以外にも依頼達成や活動内容等々の実績が必要らしいから、冒険者としてではなく傭兵として雇われている二人がBランクなのはまだ納得できるけど。
 それにしても、実力的には俺や現役の頃のエアラハールさんと同じAランク相当とは……まぁ、単純にAランクの実力って言っても、それぞれ差があったりするんだけどね。

 単純な戦闘能力で、危険な依頼を達成させてAランクになる人もいれば、堅実に依頼をこなして派手な活躍はしないけど頭を使って昇格する人だっている。
 まぁ、一定以上の能力が必要ではあるんだけど、考え方は先日聞いた獣人の強さの基準に近いかな。
 なんにせよ、二人がかなりの実力者なのは間違いないって事だ。

「とはいえ、あの二人を雇うのは苦労したな。まぁ、獣人の傭兵を雇うのは何かしら力を示さなければいけないのだが……」
「力をですか」
「獣人の強さについての考えは話しただろう? 戦う以外にも他の事で強さを示すのでもいいんだが、基本的に獣人の傭兵は自分より弱い者には従わないのだ。頭の良さや財力、見た目なんかを競って勝つという事もあるが、あの二人は雇い主に戦いの強さを求めていたからな」

 頭の良さや財力ってのは、なんとなくわからなくもない。
 それらは味方によっては強さとも言える事だから。
 けど、見た目って……見る人によっても基準や感覚が違う事だろうに。
 それはともかく、アマリーラさん達は単純に戦闘での強さを求めていたようだ……あれ? って事は、二人よりも強くないと雇う事ができなくて、部下にしているシュットラウルさんは。

「戦いの強さ……って事は、シュットラウルさんはあの二人より?」
「……雇ってから、あの二人もまた成長しているようだし、今はわからんが……雇う時には一対一で戦て負かしたぞ」

 シュットラウルさんが強いって事は、アダンラダと戦った時にもわかっていたけど……アマリーラさん達より強かったのか。
 今はわからないと謙遜しているけど、鍛錬を怠っているようには見えないし、一対一とはいえ今兵士さん達に突撃して薙ぎ払っている二人に勝っている、ってのはちょっと驚きだった。
しおりを挟む
完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

現在更新停止中です、申し訳ありません。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~

投稿スケジュールなど、詳しくは近況ボードをご確認下さい。


よろしければこちらの方もよろしくお願い致します。
感想 61

あなたにおすすめの小説

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

処理中です...