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リク警戒網の国境結界
しおりを挟む「まぁ、干渉力の問題もあって、全ての結果などを教えるわけにはいかないんだろうけど……ここのエルフの集落にも、似たような知識があったり?」
「いや、集落によって性質が違うからな……俺達の集落は魔法を研究しているが、他の集落では魔力に着目していたりもする」
「それは、同じ方向になるんじゃない?」
「似ているようだが違う。俺達は魔力を用いるが魔法を研究し、その用途に関して研究している。効率的な魔法発動だったり、魔法具を作っていたりだな。大して魔力の研究は、その成果から得られるその後の利用に関しては特に考えられていない」
住む場所が違うエルフによって、研究内容は違うみたいだ。
とはいえ、魔力と魔法は切っても切り離せない関係だから、行きつく先は一緒だったり似たような研究になるのかな? と思ったけど、アルネ曰く全然違うものらしい。
「簡単に言うと、俺達は魔法具も含めて生活を便利にしたり、魔物に対抗する手段の研究をしている。だが魔力を研究するエルフ達は、その本質を研究するのみで魔力増加や減少、魔力の大小によって影響される事象の研究などだな。それによって、転用できたり利用する事への興味は全くない」
「そうなんだ……エルフ達って、連絡を取り合って研究に付いて話し合ったりしないの? お互い協力したら、もっと早く研究が進みそうだけど……」
「ほとんどしないな。連絡を取り合わないわけではないが、数年から数十年に一度という事がほとんどだ。交流をしないようにしていても、同じ国の人間達との方がよっぽど情報を共有しているだろう。それに、自分達の研究にばかり興味が行っているからな。他のエルフ達と共同で研究開発を使用とは考えないさ」
「そういもんなのかなぁ……」
魔法と魔力を別々に研究するのはいいとして、お互いの成果を合わせて共同研究とかもしたら、すごい成果が出そうではあるけど……。
まぁ、外に対してよりは、内向きで自分達がやっている研究に没頭しているのを好むんだろう、と思っておく事にする。
時間差なく簡単に情報共有したり、人の行き来をしたりできないから、内にこもっている方が研究が捗るのかもしれない……研究者じゃないからわからないけど。
「破壊神がどう干渉したのかはわからないけど、人間と交わらせて研究を進めたのは間違いないの。誰が実践しているのかはわからないけど、少なくともその技術を利用しているのは間違いないの」
「そうだね、ユノ。魔力の研究……魔物を復元する研究とかとも関係しそうだ」
「間違いないだろうな。魔力そのものを研究しているからこそ、あぁいった発想が出てくるのだろう。魔物を利用するなど、我々では考えられないが……」
「ともかく、帝国のエルフだと仮定して……向こうは破壊神の干渉で、人間と協力しているのは間違いないんだろうね。それに対し、こちらは始まったばかりとも言えるけど、自主的に人間との交流が始まったと」
お互い平和に交流できるなら、どちらが正しい事かなんてどうでもいいけど、向こうは人間も含めて破壊を望むからこその交流だ。
魔物を利用して他者を害するなんて、研究のためくらいにしか考えていない可能性もある。
こちらは、お互いを認めて、歩み寄った結果なので俺としては今のアテトリア王国の方が、好みだね……俺の好みなんて、どうでもいいかもしれないけど。
「……ユノさ……いやユノ。干渉力とやらがあるから、破壊神は直接手を出せないのだな?」
「うん。さすがに髪が直接手を出すのは禁止されているの。そんな事をしたら、結局神同士の戦いになるの。だから、知恵を授けたりするくらいで、誘導したり破滅へ向かわせたりその逆に……といったくらいなの。直接拘わる方法もあるけど……それは神としての消滅する可能性もあるから、しないと思うの」
「まぁ、直接手を下されないだけ、良かったというべきか。しかし、ユノは大丈夫なのか?」
「私は、リクのおかげで今ほとんど神としての権能を失っているの。リクのせいとも言うのだけど……でも、今この体でやる事は神としてというよりも、人間としての行動とも言えるから、大丈夫なの」
「神に影響を与えるリクは、凄いな。アルセイス様にも打ち勝っていたようだし……そう考えると、こちらに分があるか?」
「個人の戦いなら私もいるから、分があるの。だけど、国同士の拘わりとなると……さすがに、リクや私が直接乗り込んでというのは、人間の営みを考えるとできないだろうし……それに破壊神はそういう事も把握しているから、対策はしていると思うの」
俺とユノが乗り込んで、という事が可能なのであれば簡単に解決できる可能性は高いけど……さすがに、国際指名手配になりそうな事はやりたくない。
まぁ、事情を知る姉さんがいるこの国なら、大きな問題にはならないかもしれないけど、他の国に対して立場が悪くなる可能性もあるからね。
そこまで考えて、ふと俺やユノへの対策が何かピンときた。
「もしかして、国境にあった結界、か?」
「多分そうなの。あの時にもそう予想したけど、破壊神が拘わっているとわかって確定したの。あれは私やリクに対する警戒網だと思うの」
強固な結界というわけではなかったけど、国境で帝国を包み込むように結界が張られていた。
ユノやエルサが言うには、触れたり壊すと使用者に伝わるだろうから、俺達が侵入したと気付かれる仕組みになっているんだろう……それこそ、何かしらの罠が張られている事すら考えられる。
直接ではないにしろ、破壊神も拘わっているのなら下手に先走って突入とか、できそうにないね。
「……結界が張れる者が向こうにもいるんだったな」
「まぁ、そんなに難しい魔法じゃないからね。範囲が広いと多くの魔力を使うけど……それこそ、ツヴァイでも短時間くらいはできるんじゃないかな?」
「難しくないのはリクだからだと思うんだが……ともあれ、少なくとも結界の使い方を知っている者がいるのは間違いないか……」
「それなりの魔力と、ドラゴンの魔法と呼んでいる使用法が、向こうでも知られているか、知っている人がいるって事なの。破壊神の入れ知恵なのか、研究の成果なのかまではわからないけどなの」
「どちらにせよ、強力な者がいるのは間違いないという事だな。リク、陛下には」
「まぁ、一日二日でどうなるわけじゃないけど、伝えておかないといけないよね」
とりあえず、帰りながら話していた事は確定ではなく予測交じりではあるけど、重要な情報として姉さんに伝えないといけない。
とは言っても、一分一秒を争うわけでもないので、王都に戻った時で大丈夫だろう……向こうも、帝国が動いている前提で準備しているわけだし、あくまで追加情報くらいだからね。
アルネに頼んで、エルフの集落から誰かを伝令としてとも考えたけど、集落から王都まで馬で約一カ月近くかかってしまうから、俺達が戻った時に伝えた方が早い。
ともあれ、のんびりするつもりだったのに、ヘルサルでの治安問題も含めてあまりゆっくりできてないなぁ……と思いつつも、できるだけ早めに目的を済ませてヘルサルに寄り、王都へ向かう事を決めた――。
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