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全部繋がっているように感じる

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「魔物の事をあまり知らなかったら、特に疑問は感じなかったんだろうけど……特性というか、ビッグフロッグにとってリザードマンは食料になるみたいだから、それを知っていると不自然だよね。それに、数も多かったし……」
「成る程ね……魔物の種類や数はともかくとして、ルジナウムと似たような状況だったってわけね……」
「こうなると、今まで起こった事で少しでも不自然だと感じられたら、全部繋がりがあるように思えるね。それこそ、エルフの集落での事だって……」
「あの地域の事は詳しくわからないが、フィリーナ達も言っていたな。サマナースケルトンだったか……魔物を無差別に召喚する魔物。普段はエルフの集落付近では見る事がないらしい」
「いるはずのない魔物がそこにいた。それも不自然と言えば不自然だし、もしかしたらと考えてしまうかもしれないわね……」

 アテトリア王国内の各所で、散発的に魔物が大量発生というか集結したり、通常はいるはずのない魔物が発見される。
 ルジナウムの事から作為的なものを強く感じていたから、一緒に考えてしまうとどれもが誰かが仕組んだ事のような気がしてしまう。
 原因を詳しく調べてみないと答えは出ないだろうけど、本当に全部繋がっている可能性は……あまり高くないと思うけど……。

「だぁ! もう……」
「へ、陛下?」

 皆が黙り込んで考えていると、突然姉さんが天井を見上げて大きな声を上げた。
 考えてもわからあない事が多過ぎて……なんだろうけど、エフライムが驚いているからもう少し控えめにしようよ姉さん。
 モニカさんやソフィーは姉さんにある程度慣れているので平気だけど、まだ慣れないフィネさんも体をビクッとさせていたりもするから。
 あ、フィネさんと言えば……。

「そう言えば、コルネリウスさんの事もあったっけ。さすがにそこまではこじつけだと思うけど……クレメン子爵領でバルテルが暗躍していたのもあるし……」
「もう、全てが全て繋がっているように思えるわ。……もう、全部帝国のせいにできないかしら?」
「さすがにそれはどうかと……陛下……」
「わかっているわよ。確証もない事で他国を責めてしまえば、国としての信頼は失墜してしまうわ。それに、もし全てが帝国の計略だとしたら、こちらはもう少し時間を稼がないといけないからね」
「そうなの?」

 コルネリウスさんへの甘言で、凄く迂遠ではあるけど内部からフランクさんの子爵家を混乱させようとしている……可能性があるだけで、これは今調査中だけど。
 エフライムとレナが捕まって人質にされ、クレメン子爵が脅されていた件はバルテルが拘わっていて、そのバルテルは帝国と通じていた。
 貴族相手に内部から、というのをバルテルが担当していたとも考えられる……コルネリウスさんの事は、バルテルがいなくなる前から行われていたからね。
 実際は、全然関係ない事かもしれないけど……とはいえ、さすがに考えが煮詰まったからって全部帝国のせいにはできない。

 何かを企んでいるのに、それがはっきりしない気持ち悪さはあるから、姉さんの気持ちはわからなくもないけど、確証がない状態で責めたら言いがかりと取られかねないからね。
 でも、どうしてこちらはまだ時間が必要なんだろう?

「帝国は、バルテルの凶行時には既に行動を起こそうとしていたでしょ?」
「まぁ、ハーロルトさんが言うには、国境付近に軍隊を集結させていたみたいだね」
「だから、ある程度向こうは準備ができている状態なのよ。今は国境付近には確認されていなくても、虎視眈々と狙っている可能性もあるわ。それに対して、こちらはまだ準備を始めたばかり……国家間の争いは、戦争になるにしてもならないにしても、一朝一夕に準備が整うものではないの」
「戦争をするには兵を集める必要がある。戦争をやらずとも他国に対して追及をするには、確証が必要だ。いずれにしても、それなりの期間が必要になる」
「あぁ、そうか……そうだよね」

 兵士さんを集めるにしても、戦いに備えてやる事はいっぱいある……食糧とかも確保しないといけないし、装備も同じくだ。
 新しく徴兵するとかにしても訓練をしないといけないし、人や物を集めるのには時間がかかってしまう……これは、ヘルサルの防衛線で少し経験した事でもあるね。
 戦争を回避し、追及をしてちょっかいを出してくるのを辞めさせるにしても、帝国が仕掛けてきている確証を得ないといけないから、こちらはこちらで調査に時間がかかる。
 国家間の関係や、関わっていないはずの他国にまで影響が出る可能性が高い事だから、短絡的に動く事はできないし……それこそ、向こう側の暗躍したり企んだりしている人を潰して、それで解決、とはならないからね。

「それにねぇ……以前にも話したと思うけど、帝国の技術力が問題ね。隣国との戦争で被害がほぼなく、進行してきた側は被害甚大……通常の戦争では、そんな事起こりえないわ」
「単純に正面からぶつかっただけじゃ、そうはならないよね」

 攻めた方が少数で、攻められた帝国が大軍だった……というわけでもない。
 というよりむしろ、話しに聞いた限りでは数だと帝国側の方が少なかったはず……そんな中で、数が多いはずの方を壊滅状態にさせ、少数の帝国に被害が少ないというのは、当然ながら何か知らの理由があるはずだ。

「まぁ、ここ最近のりっくんの働きのおかげで、なんとなく仕掛けが見えてきたけどね」
「だよね。ツヴァイが近い事を言っているし……」

 王城や他の状況はまだ、誰かが仕組んだと判明していないけど、ルジナウムを狙ったようにと考えれば、魔物を使ったのだと考えられる。
 さらに言うなら、エクスブロジオンオーガのように爆発する魔物の研究……以前行われた戦争の際に、どこまで研究が進んでいたかはわからないけど、今までの事が帝国と全て繋がっていたら、間違いなく使われているはず。
 魔物を使えば、自軍に被害を出さずに相手を最低でも疲弊、最大で壊滅させる事もできるかもしれないからね。
 特殊な例だけど、ゴブリンロードを敵軍に当てれば、それだけで帝国に被害のない戦争が始まるから。

「ま、その辺りはこれから城内での話し合いと、調査次第ね。ほんと、このタイミングでハウス栽培ができそうという可能性があって良かったわ。もし何かしらの武力衝突があれば、一番に疲弊するのは民達よ。食糧だって多くを消費するから、そちらの問題が多少なりとも解消できそうというのは大きいわ」
「大きな戦争があった後は、国を立て直すのも多くの日数がかかります。まだはっきりと戦争になるとは決まっていませんが、民達の苦しみを少しでも減らす事ができるのは僥倖です」
「えぇ……」

 何が起こるにしても、一般の人達が一番苦労して苦しい思いをする、というのは異世界でも一緒なんだろうね。
 俺は日本で育ったから、戦争の悲惨さというのは体験した事がないけど……それでも、映像や授業なんかで少しくらいは学んでいる。
 全然足らないんだろうけど、とにかく戦争をして相手を潰せばいい、なんて事を考えないくらいには一般の人達がどうなるかは知っているから――。

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