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予想より早くフィネさん合流

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「あれ、フィネさん?」
「朝早くから申し訳ありません、リク様。同行する準備を終えて、参じました」
「あら、フィネさんが大きな荷物を……?」

 昨日の今日で準備を終えたらしいフィネさんが、身長程ある荷物を背負ったままお辞儀をした。
 体を傾けた時、荷物からチラッと何本もの斧が見えたけど、重そうというより、まさか斧で半分以上の荷物を占めているとかではないよね?
 そうこうしていると、モニカさんが合流してフィネさんを見て首を傾げ、さらにソフィー、ユノやエアラハールさんと次々と合流。
 とりあえず、俺や他の皆も荷物を持っているし、ここでフィネさんと立ち話をするのも邪魔になるだろうから、移動しよう。
 朝食でも食べながら、話をすればいいだろうからね。

「それでフィネさん、予想よりも早かったですけど……大丈夫なんですか?」

 朝食を食べるため、宿と隣接しているお店に入り、注文を終えて運ばれて来た料理を食べながら、フィネさんに話し掛ける。

「問題ありません。冒険者たる者、いついかなる時もすぐに動けようにしておりますので。とはいえ、武器をまとめるのに少々時間がかかってしまい、今朝になってしまいましたが……本当は昨夜のうちに合流しようと考えていたんです……斧の刃がどうしても他の荷物を傷つけるので、苦労しました」
「そ、そうなんですね……」

 斧と荷物を一緒にするのは難しいんだろうけど……別々にするんじゃいけないのかな? いや、一つにした方が持ち運びやすいのは確かだけども。

「それに、元々私は子爵様に仕える者……ルジナウムには少々長めに留まっていますが、本来は子爵邸のある街で暮らしていましたから。ここには最低限の荷物しか持って来ていません」
「あぁ、フランクさんは一時的にこの街に来ているだけだからかぁ……それにしても……」

 フランクさんについて来ただけだから、最低限の荷物しか持っていないというのはわかる……わかるんだけど……どう見てもフィネさんの荷物は最低限という量じゃない。
 戦い方として、フィネさんは斧を投擲するから予備も含めて多く所持しているのが、影響しているのかもしれないけどね。
 あと、女性の荷物は多くなるとか、そんな感じで納得しておこう。

「でも、こんなに早く合流しても……俺達、これからブハギムノングの鉱山へ様子を見に行こうと思っているんですよ。フィネさんとは、その後もう一度ルジナウムで合流して、一緒に王都へと考えていました」

 それなりに準備に時間がかかると思っていたからなぁ。
 一応、フランクさんやノイッシュさんには、ブハギムノングに行く事は昨日のうちに伝えてあるし、魔物集結の調査は一段落したので、モニカさん達も一緒だ。
 伝えた時にフィネさんも一緒だったから、ブハギムノングの様子を見た後だと考えていると思ったんだけど……。

「子爵様にも、既に今日離れる事をお許し頂きました。問題ありません。私はリク様達に同行するので、どこへなりとも……」
「そ、そうなんですね。わかりました……」

 フランクさん、いつ許可を出したんだろう……? いや、同行する事はフランクさんからのお願いだし、許可自体はすんなり出るだろうけど、少なくとも昨日の時点では今日からフィネさんと合流するとは言っていなかった。
 もしかして、俺達が泊まっている宿屋に来る前とか? フランクさん、もしかして朝早くに起こされたのかな……いや、フィネさんがそんな強引な事はしそうにないから、元々フランクさんは早起きなんだと思っておこう。

「それじゃエルサ、ブハギムノングまで頼むよ」
「ひとっ飛びなのだわー」

 朝食後は、ルジナウムの北門から出て、少し離れた場所で大きくなってもらったエルサに皆で乗り込む。
 その際に、乗るのに慣れたと思ったフィネさんが、大きな荷物を落としたり、中から斧が飛び出て危険だったりとあったけど……まぁ、無事に乗れたから問題はないかな、うん。


「やはり、エルサ様に乗ると移動が楽ですね……」
「空を飛んでいると、迂回とかもする必要がありませんからね。まぁ、速度も馬より速いですし」

 ブハギムノング付近でエルサから降り、街へと向かって歩いている途中にフィネさんが呟く。
 まぁ、馬での移動が基本だったら、エルサでの移動は便利に感じるのも当然だよね。
 ルジナウムとブハギムノングの間にも、川があったりちょっとした丘があったりと、道を真っ直ぐ進めばいいだけじゃないから。
 空を飛べば障害物に引っかかる事なく移動できるのは、速度とは関係なく大きいと思う……景色もいいからね。

「お? リクじゃないか。数日ぶりか?」
「フォルガットさん、どうしたんですかこんな所で?」

 街に入ってすぐの衛兵詰所付近で、フォルガットさんに声をかけられた。
 見る限り詰所から出てきたようだけど、何かあったのかな?

「組合長ともなれば、詰所に来て色々と調整する事もあるんだ。まぁ、今回はリクとも関係しているんだがな」
「俺と?」
「あぁ、クォンツァイタの事だ。っと、そちらは?」

 組合長が詰所に用というのは、鉱山の警備とかを話し合ったりするんだろうか? 今回は俺というかクォンツァイタに関係しているみたいだけど。
 ともあれ、俺の後ろにいるフォルガットさんと会った事のない人達を、お互いに紹介する。
 俺やソフィー、エアラハールさんはあった事があるけど、モニカさんやユノ、フィネさんは初めて会うからね。

「成る程、リクの冒険者仲間ってところか」
「そういう事です。それで、クォンツァイタの事って言うのは?」

 主導は姉さんや国が動いているけど、話を持って来たのは俺だから、フォルガットさんが詰所に来る用がきる程というのは気になる。

「なに、例の兵士に任せて王都まで運ぶってやつだ。リクがいなくなってから、クォンツァイタを集めて運び出したんだが、次に運ぶ時はどうするかって話だな。あぁ、最初のクォンツァイタは指示通り、既に出発済みだ。……あと数日程度で王都に着くんじゃないか?」
「もう出荷したんですね」
「あぁ、陛下直々だからな。それに、今までクズ鉱石として捨てていた鉱石が金になるんだ。鉱夫達がやたらと張り切って掘り出していた。産出量には困らないから、すぐに規定量になってガッケルに言って運んでもらうよう手配したんだ」

 広大な鉱山の中で、どこででも掘り出されて邪魔になるくらいだったから、量を集めるのも簡単だったんだろう。
 しかも、今まで捨てていた鉱石がお金になるとわかったんだから、鉱夫さん達がやる気になるのもわかる。
 もちろん、今まで通りの鉱石を採掘しなきゃならないから、仕事量は結果的に増える事になるんだけど、元々邪魔になるくらい産出されていたんだから、手間はそれほど多くならない。
 捨てていた頃はぞんざいに扱っても良かったけど、今だと割れたりしないように丁寧に扱わなきゃいけないとかくらいかな、多分。

「あとは、クォンツァイタが無事に王都へ到着してくれるのを願うばかりだな。まぁ、そこらの商隊や冒険者が運び出すわけじゃないから、安心だ。だが、最初は兵士が担当する話にはなったが、これから先ずっとってわけにもいかねぇからな」
「それはそうですね。兵士さんも、クォンツァイタを運ぶためにいるわけじゃありませんから」
「あぁ。だから、ガッケルと話してある程度の協力体制とこれからの話をしていたんだ」


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