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リク以外も人気者
しおりを挟むモニカさんから言われて、ルジナウムに残して来たユノとエアラハールさんが心配になってしまう。
ユノがいればエアラハールさんを止めるのは容易でも、その前にトラブルを起こす可能性も否定できないし……うん、早く様子を見ておいた方がいいかもしれない。
とりあえず、ここでやる事をやって、さっさとルジナウムへ行こう、うん。
ブハギムノングの方も、あれからどうなったのか気になるし……もうエクスブロジオンオーガはいないとは思うけど、探知魔法が使えないために、確実とは言えないからね。
爆発する赤い方でなければ、対処法も伝えているからなんとかなるだろうけど、まだ赤いエクスブロジオンオーガが残っていたら大変だからね。
「はーい、皆さん並んで下さいねー! 順番ですよー! あ、そこの兵士さん、貴方は二度目じゃないですか! 今回はリク様とエルサ様の厚意で、初めての人限定なんです。諦めて仕事に戻って下さい」
「くっ、バレてしまったか……」
「あの冒険者、よく見てるなぁ……」
「ははは、俺達一兵卒には敵わない、Bランクらしいからな」
「あぁ……あの斧で殴られたい……」
「「「えぇ……」」」
見送りの後は、再びエルサの試乗会。
兵士さんの誘導はフィネさんにお任せでいいから、俺はほとんど苦労はないし、エルサもゆっくり飛ぶのに慣れたみたいだ。
それにしてもフィネさん、一度乗った兵士さんの顔を覚えてるのか……俺だったら見過ごしていただろうなぁ、さすがだ。
兵士さんの間でも、フィネさんの評判は良さそうで、一部特殊な発言をして周囲の兵士さんにドン引きされる人まで出ている様子。
ちなみにだけど、フィネさんだけでなくなぜかモニカさんやソフィーにも、兵士さんのファンのような人が付いていたりする。
モニカさんは料理による家庭的なイメージで、ソフィーは女騎士のような男勝りな部分と自分に厳しいところ、フィネさんは小柄な体に似合わず斧という武器を扱っている凛々しさ等々……基本的に皆見て満足しているみたいだけど、人気になっているらしいとマルクスさんに教えてもらった。
一部では、エルサのモフモフに対して崇めるような人が出て来てもいるらしいけど、それは試乗会で実際に触れた影響だろうし、気持ちはわかる。
俺もエルサのモフモフは至高で究極だと思っているから……でも、あのモフモフは譲らない!
ともあれ、そんな皆を従えている俺は、さすが英雄様だ……と、地下施設に突入した際の活躍も含めて、改めて称えられているとも言われたけど……別に、俺が皆を従えているわけじゃないんだけどなぁ。
一応リーダーではあるけど、従えているというより仲間とか友人とか、協力者という面が強いと思っている。
というかフィネさんに至っては、今回特別に協力してくれているだけで、パーティを組んだわけでもないんだよね……まぁ、何か迷惑を被ったわけじゃないから、面倒なのも相俟って一人一人に訂正したりはしないけども。
ちなみに、なぜかソフィー辺りはその話を聞いて、さもあらんと言わんばかりに頷いていたし、モニカさんは俺が従えている、という部分を聞いて照れていたしフィネさんは微笑むだけだった……よくわからない。
エルサは興味なさそうな事を言って、俺の頭にくっ付いた際いつもよりお腹のモフモフを後頭部に密着させていたのは、譲らない俺が言ったのが嬉しかったんだろうか? ともあれ、思わずモフモフを堪能できて満足だ――。
「マルクスさん、調査の進捗はどうですか?」
「リク様、あまり進んではいませんが、ツヴァイが言っていたように魔物を兵器……戦争の際に武器のような扱いで使う事が想定されていたというのは、間違いがないようです」
エルサの試乗会が一段落した頃、建物内部を調査しているマルクスさんと話す。
マルクスさんは一階にある部屋を使って、そこに地下で発見された研究資料などを持ち込んで精査していて、今も色んな資料に挟まれている状態だ。
チラリと資料を見てみたけど、難しくて何が書かれているのかよくわからなかった。
「やっぱり、と思った方がいいんでしょうね。まぁ、確かに魔物を使う有用性というのはあるんでしょうけど……」
「しかし、やはり魔物とはいえ命をもてあそぶような研究は、我が国では認められません。私も一兵士なので、国のために……という思いはありますが、それでも命を道具として扱うのはどうにも……」
「そうですね……俺も冒険者で、魔物を討伐して素材を得て報酬をもらう、という事もありますけど……」
結局のところ、綺麗ごとと言われればそれまでではあるけど、やっぱり命をもてあそぶような事は忌避感が大きい。
そりゃ、魔物を食材にしたり素材にしたりしているけど……極端な事を言えば、それは食物連鎖とも言えなくはないからね。
無理矢理魔力を注いで復元したり、研究成果を使って魔物を兵器として使うのは、なんとなく違うという感覚がある。
「それに、扱いを間違えると自分達まで危うくなるような研究ですから。納得はしたくありませんが、確かにこれは他国で研究をさせるというのが、無難なのでしょう」
「確か、一部の人間を襲わないようにはできても、多くの人間を判別させるような事はできない……でしたっけ?」
「はい。研究資料にも、そう書かれています。一応、敵味方の区別を付けさせる研究もされていたようですが、成果は芳しくなかったようです。そして、それならば自国ではなく他国で研究してもしもの際に備える。さらには、復元し研究成果を施した魔物を敵へと送り込む事で、自分達は被害を出さずに相手の戦力を削る……合理性の塊と言える研究なのかもしれません」
どうしても、一部の人間を襲わないようにするのが限界だとしたら、被害を出したくない街や村では研究をする事ができない。
それこそ、人間が大量にいるから魔物が判別する事ができず、無差別に襲ってあげくに爆発してしまうからね……だからこその他国での研究なんだろう。
そして、そこで作られた魔物の兵器は、戦争状態になった際には標的の街や村に派遣して、暴れさせればいいだけ、と。
自分達に被害が及ぶ可能性が低く、敵に対しては被害を甚大にという、戦ううえでの基礎というか作戦を考えるうえで一番重要な考えを示している。
マルクスさんの言う通り、合理性を突き詰めてそこに至った考えなのかもしれないけど……だからといって、命を自分達の思う通りに使おうなんて、認められないよね。
「あぁ、それと……この研究の副産物なのでしょうけど、魔法に関してもそれなりの成果が出ているようです。まぁ、私は魔法に詳しいわけではないので、王都に戻ってから詳しく調べる必要がありそうですけど……」
「そこは、アルネとかが喜びそうですね。勝手に研究されて、アテトリア王国の成果とは言い難いですけど、問題がなくて利用できれば、この研究を考えた人達にも一矢報いる事ができるかもしれません」
「あまり、他国の研究を利用というのは、気分の良い物ではありませんが……魔物を利用すると考えるよりはマシでしょうね」
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