677 / 1,903
肩車と合流
しおりを挟む「フォルガットさん、すみませんが一度……」
「ん、おぉ、わかった」
「あぁしていたら、親子みたいだったぞ?」
「フォルガットお父さん?」
「お、おい、やめろ! 俺には別に息子がいるんだからな! 不肖の息子で、鉱夫になりたくないと言っているが……まったく……」
「親方の隠し子がリク様だったら、国を揺るがす話題になっていましたね。……親方が奥様に殺されそうですけど」
「……本当に、止めてくれよ?」
肩車した状態だと話しづらいので、一度下ろしてもらうようにお願いして、地面に下りているとソフィーからからかうように言われる。
確かに、年齢や体格差を考えると親子のように見えなくもないか……と思って、悪乗りしてフォルガットさんを呼んでみたら、酷く焦った様子になった。
うーん、息子さんがいたのか……奥さんに怒られないためにも、変な事を言うのは止めておこう。
「それで、リク達はここで何をやっていたんだ?」
「遊んでいたのだわ?」
「遊んでなんていないよ。えっと、ちょっと前に……」
ズレた話をズレさせたソフィーが戻し、何をやっていたかを説明する。
「それなら、私が見るのだわー」
「そうか、エルサなら飛べるから、無理に肩車なんてしなくても見られるね。頼むよ」
「わかったのだわー」
「……むぅ」
高い天井にあるはずの、細い線を確かめるために苦労していると説明したら、エルサが請け負ってくれたので、お願いして天井へ飛んでもらう。
ソフィーが、頭からモフモフが離れた事で残念そうな表情になったが、それはともかくとしてだ。
誰かを乗せるわけじゃないから、大きくなる必要はないし、飛べて明かりの魔法も使えるから、エルサに頼めば楽ができる。
しかし、エルサがこういう事を自分からやると言い出すのは珍しいな……もしかしなくても、あくびした時に俺が本当に真面目にやっていたのかと、疑惑の目を向けたから、誤魔化すためなのかもしれない。
エルサは、契約のおかげで多少なりとも繋がっているから。
「……あったのだわー。あっちに続いているのだわ」
ふわふわと上昇し、明かりの魔法を使って天井を調べていたエルサが、短い手を伸ばして方向を示してくれる。
飛べるって、こういう時便利だなぁ。
「ありがとう、エルサ。それじゃ俺達はこのまま、線を追ってみるよ」
「待てリク。私達も一緒に行こう。エルサがいた方がいいだろうし、このまま見回っても、エクスブロジオンオーガと遭遇しそうにないからな。何かありそうなら、そちらを調べるのもいいだろう」
「そう? わかった。それじゃ皆で行こうか」
エルサにお礼を言って、ソフィー達と別れてまた線を追いかけようと思ったんだけど、ソフィーからの提案で皆一緒に行動する事になった。
口ぶりから察するに、今日はソフィーの方もエクスブロジオンオーガと遭遇していないみたいだから、もう鉱山にはいない可能性が高いんだろう。
遭遇したらエルサが結界を使うだろうし、その必要がなかったから、撫でられて寝ていたのかもね。
「リク様、このまま進むと鉱山の出口に行く事になりますが……」
「そうなんですか?」
「あぁ、間違いないな。この道を真っ直ぐ進むと、出口に繋がる道に出る。方向も、外へと向かっているな」
「出口かぁ……エルサ、この方向で間違いないんだよね?」
「間違いないのだわ。線は真っ直ぐ続いているのだわー」
しばらく皆で進んでいると、ソフィーの案内をしていた女性が道の奥を見ながら出口へ行くと言われ、フォルガットさんにも確認すると、間違いないと頷いた。
エルサにも確認してみたけど、線は途切れず間違いなく向かっている方向へ続いているとの事だ。
鉱山の中で、どこかの何かと繋がっているのかと思ったけど、外なのか……?
「外に出たな……」
「そうですね。エルサ、線はどこへ?」
「壁を伝っているのだわ。ここなのだわー」
「ふむ、確かに細い線になっている小さな窪みが続いているな。明るい外で見ても、注意して見ないと見つけられない程だが」
線を追い、予想通り外に出てフォルガットさんと空を見上げながら、明るい日差しに目を細めながら呟く。
エルサに聞いて示された場所を見てみると、確かに細くて見えづらいけど、鉱山内で発見した線が壁を伝って伸びている。
天井を走っていた時とは違って、低くなっているので確認はしやすいけど、ソフィーが言っている通り昼の明るさでも、注意深く見ないと発見できそうにない……岩肌がゴツゴツしているせいもあるだろうけどね。
俺達は、線がある物と思って見ているからわかるけど、何も知らなければ誰も発見でき印じゃないだろうか?
「……山や街の外周に向かっているのか? リク、どうする?」
「そうですね……高い所には向かっていないようなので、もうエルサに見てもらわなくても大丈夫そうです。エルサ、ありがとう」
「私はただ見てただけなのだわー」
「ははは、それでもだよ。それでえっと……この先は、俺とフォルガットさんでいいかな?」
「そうだな。私達は、また鉱山の中に戻って見回りを続けよう。エクスブロジオンオーガの気配もなさそうで、完全にいなくなったのではと思う程だが、一応な」
「うん、お願いするよ」
「頼んだぞ?」
「はい、親方。安全確保のために頑張ります」
壁を伝っている線は、立っている俺の目線よりも少し高いくらいで、それ以上高く伸びている様子もないので、エルサに飛んでもらう必要はなくなった。
お礼を伝えると、恥ずかしいのかソフィーにくっ付いてそっぽを向いてしまったが、なんとなく嬉しそうなのが伝わってくる。
とりあえず、鉱山の見回りも念のため続ける事にして、線を追う俺とフォルガットさんとは分担するように決まる。
再び鉱山へと入って行くソフィー達を見送って、続いている線を追って壁沿いに歩き出す……主に俺が線を見て、フォルガットさんが周囲に何か異変がないかを調べる役目になった。
魔物ならともかく、よく知っているフォルガットさんの方が、異変を見つけやすいだろうからね。
「フォルガットさん、ここから地面に線が……」
「本当だな。しかし……これまで何もなかったが、これは一体なんなんだろうな?」
「まぁ、それを調べるために追っていますからね。……何もない事だってあるかもしれませんが……少なくとも、あぁいった仕掛けをされていたので、何か俺達の知らない事があるのかもしれません」
「そうだな。鉱夫達だと、わざわざあんな仕掛けを作ったりはしないだろうが、何かしらの意図はあるのだろうな。方向を考えると、街の端を沿って外へ向かっているのか?」
仕掛けがあったのは確かで、俺が触れたら光が走ったのだから、生きた仕掛けだというのは間違いない。
隠すようにされていた仕掛けを、鉱夫さん達が作るとは思えないし、そもそもなんのためかもわからないような物だから……フォルガットさんが知らないのだから、モリーツさん達と何かの関係があるという事だって考えられる。
逆に、何もない事だって考えられるけど、それはこういった事を調べるうえである程度覚悟しておかなきゃいけない事だ……エアラハールさんから、調査に徒労は付き物と言われているからね――。
0
お気に入りに追加
2,152
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる