675 / 1,903
何かの突起を発見
しおりを挟む「ありがとうございます。不純物があってもどうなのか調べるのにも、役に立ちそうなので、これも一応貰っておきますね……本当に、お金は払わなくていいんですか?」
「もちろんだ。街の恩人であるリクから、この程度で金なんて取れんよ。不純物が混ざっている物は、そもそもに取引もできないだろうから、リクが必要ないと言えばまた捨て場に行っていた物だ。役に立つ物なのか俺にはわからんが、自由に使ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
フォルガットさんにお礼を言って、クォンツァイタを包み直してありがたく受け取る。
……ちょっと大きいから宿に置いておこう、持ち運んで割れてしまっちゃいけないからね。
その後は、大まかに明日以降のエクスブロジオンオーガを探索する予定を話し、鉱夫組合を出る……なぜか、奥の方から歓声が聞こえた気がするけど、きっと案内してくれた女性が俺の話で盛り上がっているからだろう。
また変に持ち上げて見られるようになったり、しなければいいけど……。
――――――――――――――
「大丈夫ですか、フォルガットさん?」
「なんとかな……結局のところ、鉱山の全体を一番把握しているのは俺だからな。仕上げには丁度いいだろう」
坑道を歩きながら、疲れた表情のフォルガットさんを窺う。
採掘に関してや、クォンツァイタの話し合いで数日ろくに寝ていない様子だから、疲れて当然なんだろうけど、確かに今日はフォルガットさんに協力してもらうのが一番だろう。
クォンツァイタを受け取ってから、二日後、ほぼ見なくなったエクスブロジオンオーガの探索に関して、仕上げとしてフォルガットさんに鉱山内を案内してもらっている。
ソフィーとはまた別行動で、エルサと案内してくれる人と一緒に、あちらは小道や地図にない場所を重点的に調べて、エクスブロジオンオーガが潜んでいないかの確認。
俺とフォルガットさんは、全体を大まかに移動しながらの確認をする役割分担だね。
これでエクスブロジオンオーガが見つからなければ、もう鉱山の中にはいないだろうという判断で、全面的に採掘が再開される予定だ。
もちろん、俺がこの街にいる間は目撃情報があったり、見て回ったりもするつもりだけど、とりあえず調査の依頼は終了として、冒険者ギルドに報告される事になる。
問題なければ、ヴェンツェルさんと合流する予定の日まで、ルジナウムで行われている調査の様子を見ながらのんびり過ごす予定だ。
今日を含めて、三日しかないけど……ヴェンツェルさんが合流する予定の場所へ到着する日は、王都を出発する前に伝えられていたからね、移動や準備によって一日くらい前後するかもしれないらしいけど、向こうが早ければ俺を待っているし、俺の方が早ければこちらが待つ、と約束しておいた。
「さすがに、もう奥にエクスブロジオンオーガが溜まっている事はなさそうだな」
「そうですね。……そういえば、あの場所には何かあるんですか? モリーツさんがいた周辺以外では、あの場所が一番多くいましたけど」
「あぁ、リクから聞いて確認してみたんだがな? 地図を見たらわかるんだが……どうやらあの最奥、一番入り口から遠い場所はモリーツの野郎がいた場所から、直線上にあるんだ。確か、エクスブロジオンオーガに自分を襲わせないようにはできるが、細かい命令はできないんだろ?」
「大まかには命令していましたが、あれも、自分達を襲わない状態で、その場所に俺達がいたからかもしれません。でもまぁ、どこそこに行って何々をしろ……なんて命令はできないように見えました」
エクスブロジオンオーガ自体に、物を持って攻撃という知能はあっても、命令を判断して実行するとまではできそうにないからね。
単純に、本能で自分達以外の種族を見たら襲い掛かる、といった風だったから……予想では、物を持って振り回すくらいの知能があるからこそ、モリーツさん自身を襲わせないようにもできたのかもしれない。
もっと本能的な……マギアプソプションとかだと、その判断もできないんじゃないだろうか?
だからこそ、ある意味オーガという種族は研究をするうえで扱いやすかったのかもね。
「なら、おそらくが……エクスブロジオンオーガにはただ、突き進めとか、そういった簡単な命令しかしていなかったんじゃないか?」
「直線上という事は、それでひたすら突き進んだ結果という事ですか……」
「あぁ。とはいえ、真っ直ぐに道が伸びているわけじゃないからな。他の場所にいたエクスブロジオンオーガは、道を間違えていたのかもしれん。単なる想像だがな」
「いえ、確証はありませんけど、近い予想な気がします……だから、直線上にある場所以外では、発見する事が少なかったんでしょう」
他の場所でもエクスブロジオンオーガがいるにはいたけど、多くても三、四体がせいぜいだった。
最奥やモリーツさんの研究場付近だと十体以上いる事が多かったのに、だ。
だからこそ、奥まで行ってしまったエクスブロジオンオーガが固まってしまい、細かい判断ができる知能を持っていないからこそ、詰まって身動きが取れなくなっていたのかも。
その分、考えて行動をするのができない代わりに、鉱山内でどういった風に散らばっているのかを予想するのが難しいんだけど……迷子のエクスブロジオンオーガとか、何も考えず適当に動かれたら、捜索も難しいよね。
「ん? なんだこれは……?」
「どうかしましたか、フォルガットさん?」
最奥に、エクスブロジオンオーガが大量に固まっていた理由の予想に納得しつつ、しばらく無言で歩いていると、急に立ち止まったフォルガットさんが呟きながら、壁を見つめる。
そこに何かあったんだろうか……? 俺から見ると、なんの変哲もないただの壁なんだけど。
「いや……確か、ここは特に何もない道が続いているだけなんだが……これは隠されているのか? ほら、ここを見てみろ」
「えーと……?」
フォルガットさんに示されて、壁をじっくりと見てみると、補強してある木材の傍に拳よりも小さなサイズの突起があった。
その突起は壁と同じ色で、さらに照明と照明の中間……つまり一番薄暗くて見えづらい箇所だ。
「言われて見たら、何かありますね」
「だろう? 何かの目印かとも思ったんだが、それだとこんなに見えにくくする必要はない。しかも、この場所は小道に別れる事もない、一本道だからな……」
「目印を付ける必要もない……怪しいですね?」
「あぁ……」
今いる道に迷い込んだ……という事はあっても、この道を通っている途中に迷う事はないほど、長めの一本道だ。
薄暗くてあまり遠くまで見れないとはいえ、見渡す限り前に進むか後ろに戻るかしかない道で、目印を付ける必要はないだろう。
もし、ここで何か新しく採掘を始めるための目印なら、もっと目立つ方法で付けるだろうし、それをフォルガットさんが知らないはずはないうえ、迷わないための目印も同様。
自然にできたものなら壁の色に塗ってあるわけないし、他の壁のような岩だったりもしないから、誰かが何かの目的で取り付けた物にしか見えなかった――。
0
お気に入りに追加
2,152
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。
リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。
そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。
そして予告なしに転生。
ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。
そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、
赤い鳥を仲間にし、、、
冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!?
スキルが何でも料理に没頭します!
超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。
合成語多いかも
話の単位は「食」
3月18日 投稿(一食目、二食目)
3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる