上 下
674 / 1,903

クォンツァイタは脆い鉱石

しおりを挟む


「そうだリク、昨日言われていた事だが……」
「昨日……クォンツァイタの事ですか?」
「あぁ。今日早速、クズ鉱石の捨て場からクォンツァイタを探させたんだが……予想以上に数が少なそうだ」
「そうなんですか? 量はとれると聞いていたので、結構な数が残っていると考えていたんですが」

 難しい表情のフォルガットさんに、首を傾げる。
 クズ鉱石とはいえ、採掘して出て来た物は他の売れる鉱石とは別にして、捨て場と呼ばれる場所に置かれているらしいけど、多くあるらしいから、そこに行けばクォンツァイタが有り余っていると思っていた。
 けど、フォルガットさんの言い方と表情から察するに、当初の想像よりも少ないらしい……実はそんなに産出されていなかった……とかかな?

「クォンツァイタ自体は数が多いんだが、いかんせん脆くてな。それが、宝石にも使えない理由でもあるんだが……クズ鉱石の宿命というべきか、今までは意味をなさない他の土や石と同じように扱いが雑だったんだ。そのせいで、捨て場にあったクォンツァイタは割れていたり削れていたりと、とてもじゃないが使えないだろうというのが多かった」
「……元々、価値のなかった物なので、仕方ないんでしようね」

 アルネから聞いた話では、最初からひび割れがあるような鉱石なため、ちょっとした衝撃で割れたりしてしまうんだろう。
 そのために、宝石として綺麗にカットしたり加工する事もできないから、見た目は綺麗な鉱石であっても、これまで価値を見出せなかった。
 だから、邪魔なものとしてぞんざいな扱いで捨て場に放り投げられていたんだろうけど、そのために使い物にならなくなったのが多くて、今更使おうと思っても量少なくなってしまうのか……。
 それだったら、新しく採掘されるのを待った方がいいのかな?

「あ、でも……多少割れていても使えるのかもしれません……」

 目的はクォンツァイタそのものを加工する事じゃなく、魔力を蓄積させる事なんだから、多少割れて小さくなっても使えるかも?
 そう思って聞いたんだけど、フォルガットさんは難しい顔を崩さない。

「俺もそうは思ったんだが、割れている物のほとんどが、小石……小指の先程度の大きさくらいにまでなっていたそうだ。見に行った奴に聞いた限りでは、不純物が混ざっている事は少なそうだったんだが、さすがにその程度の大きさだとな……」

 小指の先程度というと、数センチあるかどうかくらいだろうか?
 アルネの話を聞く限り、大きさによって蓄積できる魔力量が違うようにも思うから、そんなに小さいと必要な魔力量を蓄積できず、役立たずになる可能性が高そうだね。

「だがまぁ、あまり大きくはないが採掘を再開させた場所からもすでに、クォンツァイタが掘り出されているのが確認されているようだ。入り口に近い場所で、既に粗方採取されているから大きく価値の高そうな物は掘り出せないようだが、とりあえずは数日で体裁を整えるくらいの量は用意できそうだ」
「そうですか……それは良かった」
「だがリク、アルネの欲しがっていたクォンツァイタはどうするのだ? 数は少なくてもできるだけ大きい物を、という事だったのだろう? だが、今の話では大きいクォンツァイタは……」
「そういえばそうだね。……どうしようかな……大きくなくても、文句は言われないだろうけど……」

 とりあえず、新しく採掘したらすぐに量が用意できるらしく、フォルガットさんの話を聞いてほっとする。
 だけど、ソフィーからの指摘でそう言えばと思い出した……アルネはできるだけ大きい物と言っていたし、魔力関係の研究をするには蓄積量が多そうな方がいいんだろう。
 あくまでできればなので、小さめでも文句は言われないだろうけど、研究をするうえでどうなるか俺には判断できない。
 どうしようかな……ちょっと無理をお願いする事になるけど、鉱夫さんに頼んで、奥の大きなクォンツァイタが出て来そうな場所で採掘をしてもらう? もちろん、俺やソフィーがエクスブロジオンオーガが邪魔しないようにするという条件で。
 でも、鉱夫さん達にはそれぞれ担当があるだろうし、採掘するには計画的にやらなきゃいけないからなぁ……無計画に掘ったりしたら、山そのものが崩れて危なかったりもするからね。

「うーん……どうしようか……やっぱり、小さいのでもいいから、持って帰る事にしようかな?」
「ふむ、研究がどうなるかわからんが、ないよりはマシだろう」
「あー、安心してくれ、リク、ソフィー。数は少なかったんだがな? それでも大きめのクォンツァイタを見つける事はできた。不純物が混じっている物もあったが、それなりの大きさだ」
「本当ですか!? ……良かった、これでアルネにもいい報告ができる」

 アルネだけじゃなく、姉さんにもだけどね……クォンツァイタを使ってやろうとしている事は、姉さんが一番望んでいるんだから。
 捨て場で見つけてきた、大きめのクォンツァイタがあると教えてくれたフォルガットさんは、いったん奥へと向かってすぐに戻ってきた。
 両手には、風呂敷に包まれている物がそれぞれ二つずつ、計四つ持っていた。

「こいつだ」
「へぇ~、これがクォンツァイタなんですね……」
「確かに綺麗だな、これが宝石に使えないのなら、掘り出しても徒労という事か」

 持って来た四つの包まれたクォンツァイタを、テーブルにゆっくりと置くフォルガットさん、衝撃を与えないように気を使って見えるのは、割れたりしないようにだろう。
 テーブルのクォンツァイタを包みから出してみると、紫に近いピンクや白いガラス光沢のようで綺麗な鉱石が現れた。
 大きさは……ソフトボールくらいで予想よりも大きく、ソフィーが感嘆の息を漏らしているように、ひび割れている鉱石は、それが逆に美しさを醸し出しているようで、脆いと聞いているからこその儚さのような物が感じられた……ような気がする。
 美的センスにあまり自信ない俺だけど、クォンツァイタは確かに綺麗な鉱石で、宝石にできないと思ったのは本当だ。

「ん? ひび割れがあるから、奥まではっきり見えるわけじゃないけど、これだけ何か違う物が混じっているような……?」
「それが、クォンツァイタに混じっている不純物……らしいな。俺も他のクォンツァイタと見比べて、そう判断したが……そもそも白いクォンツァイタは少し珍しいらしい。だから、不純物があっても一応大きさも十分だろうと持ってきた」
「これが不純物かぁ……」

 四つあるうちの一つで白いクォンツァイタだけ、よく見てみると内部に黒い塊が見えた。
 確か、魔力蓄積によって段階的に色が変わるって言ってたっけ……ピンクだと多少なりとも魔力を蓄積している状態で、黄色になっていたら満タン状態、白の場合は一切魔力を蓄積していないだったはずだ。
 黄色はともかく、ピンクのクォンツァイタがほとんどで魔力を蓄積させている事が多いという事は、もしかして鉱山内で魔力探査を使えないのはこれのせいなのかもね……。
 それはともかく、白いクォンツァイタにだけ不純物がというのは、少し気になるような……。
 俺の単なる気のせいの可能性もあるけど……とにかく持って来てくれたフォルガットさんには感謝しないとね――


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

処理中です...