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直接王城へ向かう

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「今日中に到着するのは、簡単ですよ。さっきも見たと思いますが……エルサ、頼むよ」
「わかったのだわー。キューを食べて元気いっぱいなのだわー」
「魔力だけじゃなく、キューでも元気になるのか。まぁ、好物だからわかる気もするけどね」
「え、え? ふわぁ~……」

 エルサは自前の魔力とは別に、俺から流れる魔力で元気だけど、キューを食べても同様の効果があるようだ。
 栄養とか魔力とかじゃなくて、美味しい物を食べて気分が良くなる……というのもわかるから、エルサが言っている事は間違いじゃないか。
 なんて思いつつ、体を光らせて大きくなるのを見守った。
 女性の方は、さっきも大きなエルサの姿を見ていたけど、改めて体の大きさが変わる瞬間を間近で見て、圧倒されたように口を開けて声を漏らしていた。

「ほ、本当に大丈夫……なのよね?」
「大丈夫ですよ。エルサが乗っている人を落とすような事はしませんし、もし落ちても助けますから」
「そ、そう……座り心地というか、触り心地は楽園と思える程だけど。まさか、実は私はもう死んでいて、これは天国なのでは!?」
「いやいや、生きてますからね? ――それじゃエルサ、王都まで……あー、王城まで行ってくれ。少しゆっくりな?」
「了解したのだわー」

 大きくなったエルサに乗り、手を貸して引っ張り上げた女性は、少し体を震わせている。
 馬のように地上を走るのではなく、空を飛ぶって言うのだからそれも当然かもしれないね。
 落ちても結界があるから、地面に叩きつけられる事はないから、何も心配はいらないんだけども。
 ともかく、現実逃避というか夢だとか死後なんて考え始めた女性に声をかけつつ、エルサに頼んで王城へ向かう。

 王都ではなく王城なのは、できるだけ早く姉さん達と話をするためと、まだ城下町を俺が大手を振って歩ける状況かどうかわからないから。
 人に囲まれてたら、夕食にも間に合わなくなるだろうからね……キューを食べたばっかりでも、エルサが騒ぎ始めるだろうし……。


「ほら、見えてきましたよ?」
「本当に、王城が見えるわ。こんなに早く来れるなんて……」

 エルサに乗ってしばらく、この国最大の建築物である王城が遠目に見え始める。
 空を飛んでいるだけでなく、馬以上の速度で移動できた事に、女性……アメリさんはただただ驚いていた。
 移動する間に話をして女性の名前はアメリさん、というのを聞いていた。
 ついでに、追いかけられていたオーガは、人為的に作られた魔物かもしれず、アメリさんが見た家というのがその研究所ではないか……という説明も。

 とりあえず、王都に着いたらアメリさんが目的としている報告とは別に、その時見た事も話して相談をするようお願いしておく。
 アメリさんは、魔物が人為的に……という事には訝し気にしていたけど、話しをするのは承諾してくれた、ありがたい。
 まぁ、誰とどう話すのかというのはわからず、冒険者ギルドにでも行って、村から魔物達が移動した事を調べる依頼のついでのように考えているみたいだ。
 話し相手……ハーロルトさんとか、姉さんになるんだろう、エルサが目指す場所からして、先に報告するのはそっちだしね……。

「それじゃあ、そろそろ降り……」
「エルサ、このまま王城で降りるぞ?」
「わかっているのだわー」
「え……?」

 アメリさんが何かを言ったような気もするけど、もう一度エルサに王城で行く事を伝えて確認を取る。
 そろそろ眼下に王都の町が広がっているから、さっさと王城へ行った方が良さそうだ。
 空を見上げて、エルサを発見した人もいるだろうからね……王都の人達なら何度も見ているはずだし、エルサを見ても大騒ぎしたりはしないだろうけど。

「どうしました、アメリさん?」
「えっと……リク君。このまま王城に行くの?」
「はい。町で降りたら、騒ぎになりそうですし……この大きさですからね、エルサが降りられる場所があまり……」
「そうだけど……いえ、そうではなくてね? 王都へ入る前、外で降りればいいんじゃない?」
「うーん、それだと夕食までに到着できないかもしれませんから……元々、王城に行く予定でしたし」
「……城を壊しに?」
「なんでそうなるんですか……?」
「いえ、だって……ドラゴンに乗って城に行くなんて、攻め落とそうと考えているとしか……」
「そんな事考えませんよ。まぁ、説明しなかった俺も悪いですけど……大丈夫です、城の人達もわかっていますから。歓迎してくれますよ?」
「ドラゴンが降りて来て歓迎って……どういう事なの?」

 王城に行くと聞いて、混乱を始めたアメリさん。
 あれ、言ってなかったっけ? と思うけど、エルサに伝えた時には聞いていたはずだし……もしかして、モフモフに気を取られて聞いてなかったとかかな?
 空を飛ぶという経験が初めてで、緊張していたせいで耳に入っていなかった、という方が正しそうだね。
 ともあれ、王城に向かう事を改めて説明すると、アメリさんは俺達が城に襲い掛かると勘違い……いやまぁ、何も知らなかったらドラゴンを使って、城攻めと考えても仕方がない……か?

 アメリさんの心配はともかく、城の人達はエルサの事を知っているり、何度も空から出入りしているから大丈夫だろう。
 向こうが驚いたり戸惑う事はなく、遠目に見つけて攻撃してくる……なんて事もないはずだ。

「降りるのだわー」
「はいよー」
「……」

 アメリさんの戸惑いや疑問に答える事なく、順調に城の上空に到着し、ゆっくりと中庭目指して下降する。
 気軽に答える俺の横では、何やら緊張した様子のアメリさんが……。
 ドラゴンで乗り付けて、兵士さん達に囲まれるとか想像してたりするんだろうか?

「ありがとう、エルサ」
「ゆっくり休むのだわー」
「……休むのは俺の頭なんだな。まぁいいけど」
「えーっと……いいのかしら?」

 中庭に降り立ち、アメリさん手を貸しながらエルサの背中から降りる。
 すぐに小さくなったエルサは、いつも通り俺の頭にくっ付いて一息……その状態で休まるのかは疑問だけど、魔力でも吸収しているんだろうと思う。
 降りた地面の感触を確かめながら、落ち着かずに顔をキョロキョロとさせるアメリさんの視線の先には、俺に対して片膝を付いている兵士さん達が複数いた。
 ……俺に礼なんて必要ないんだけど、まぁ、仕方ないか。

「リク様、お帰りなさいませ。遠目にエルサ様が見えましたので、お迎えに参りました」
「ヒルダさん」
「リク様ー!」
「リクさ……リク、戻ったか。ん? 女性を連れているな?」
「リク様に女の影が!?」
「レナ、エフライムも。わざわざ迎えてくれてありがとう。この人はアメリっていって……ここに戻る途中、魔物に襲われていたのを助けたんだ」
「ふむ、そうか。そういう事らしいぞレナ?」
「油断はできません! 私もリク様に助けられましたから、きっとその人も似たような事になるかもしれませんから!」
「そうですレナーテお嬢様。女は常に魅力的な男性を狙っているものです……」
「メイさんまで……変な事をレナに吹き込まないで下さいよ……」
「え、え、え……? 一体何が……!?」

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