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やはり爆発するオーガ

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「とりあえず今のうちに……すみません、ちょっと離れていてもらえますか?」
「ドラゴン……ただの白い毛玉にしか見えないわよね。触り心地は凄く良さそうだけど。でも、さっき確かに巨大な姿を見たし……え? あぁ、うん。わかったわ……?」
「ありがとうございます。危険かもしれないので……」
「え、えぇ。……何をするのかしら? オーガを凍らせたと思ったら、溶かし始めるし……よくわからないわね。というより、やっぱり魔法だからって言っても、あのオーガをいきなり凍らせて地面まで……おかしいわよね?」
「何か言っているのだわ?」
「まぁ、立て続けにいろ色な事が起こったから、気になるんだと思うよ。とりあえず俺達はこっちだ」
「結界は任せるのだわー」
「わかった」

 まだブツブツ何事かを呟く女性に言って、さらに後ろへと下がってもらう。
 エクスブロジオンオーガの爆発と一緒なら、危険はほとんどないと思うけど、爆発威力が高いのもいたし、このオーガは大きいから、もしかしたらという事もあるからね。
 結界を使ったりして、防御策は取るつもりだけど怪我をさせないように離れてもらった。
 離れた先でも、まだブツブツと言っていて、そろそろ俺が魔法だからと押し通した部分まで怪しまれ始めているようだ。

 無理の多い説明だったから仕方ないけど、とりあえず今はあちらを気にするのは止めておこう。
 エルサに言われて、結界を担当する事にし、内部も溶け始めたオーガを覆うようにイメージ。

「結界……っと。これで、多分大丈夫だね。……そろそろかな?」
「外からの熱で、内部も溶け始めているようなのだわ。もうそろそろなのだわー」

 四角い箱で、オーガを覆うイメージで結界を発動。
 不可視の結界がオーガ一体を閉じ込め、爆発しても外へ衝撃が漏れないようにする。
 鉱山ではなく、広い場所だからそのまま爆発させてもいいんだけど、安全には気を配らないとね。

「……お」
「爆発したのだわー」
「え、え、え? 何が起こったの? 急にオーガが!? でも、こちらには何も影響ないし……壁のような物にぶつかってる?」
「やっぱり、エクスブロジオンオーガと一緒かぁ。しかも、威力が高い方」
「そのようなのだわ。赤い肌のオーガがいたら、要注意なのだわー」

 ジッとオーガを見つける事数分。
 結界の中で肌をほんのり赤く光らせたオーガが、爆発した。
 結界で覆っているから、こちら側には影響はなかったけど、外から見ている感じでは体が破裂する勢いが、爆発威力の高いエクスブロジオンオーガと同等と思えた。
 これが、鉱山と同じ研究を経ての威力なのか、オーガを無理矢理そうした事で、体が大きい事に寄る影響なのかはわからないけど……とにかく、エルサが言うように赤い肌をしたオーガは注意しなきゃいけないね。

「でも、鉱山の中で研究していたのに、なんでこんなところで……しかも、エクスブロジオンオーガですらないし……」
「人間が集まってやっているのだわ? だから、そちらができてもおかしくないのだわ?」
「組織とやらに、モリーツさんの研究成果が使われていても、おかしくないって事か……」

 イオスのような見張りがいたくらいだ、モリーツさんの研究成果は組織に津足られていてもおかしくないか。
 それを使って、オーガの方で実験した結果が、目の前で爆発した奴……なのかもしれない。
 ともかく、これに関しては姉さんやフランクさん達にも、報告しておいた方がいいだろうね。
 爆発威力が低いのならまだしも、近くで受けたら人間も吹き飛ぶような威力だから、何も知らない人が倒そうとしてしまうと危険だ。

「さて、もう一体のオーガは……」
「また溶かすのだわ?」
「んー、もう一度見ても、また爆発するのを確認するだけだからなぁ。結構面倒そうだし、人に見つからない場所に置いておこう。勝手に爆発するだろうから、誰かが巻き込まれないようにね」

 溶かして爆発をさせるまで、結構時間がかかっている。
 別に急いでいるわけじゃないけど、これ以上同じ作業を確認して時間を消費する必要もないと考え、とりあえず誰かが被害に遭わないように、場所を移動させるだけにしておこう。
 オーガの爆発を見て、呆然としている女性はそのままに、道から少し歩いた場所に土を操る魔法で穴をあける。

「……やっぱり、魔力が上がったせいかな?」
「深いのだわ。これでも加減したのだわ?」
「もちろんしたよ。ガラスを隠す時程、深くないだろ?」
「はぁ、やっぱりもう少し練習が必要なのだわ……」

 あけた穴はかなり深く、奥まで光が入らないためにどれだけかは確認できない。
 さらに、幅も数メートルあってオーガ一体どころか、家が丸々収まりそうな穴になっていた。
 魔力の制御の難しを感じつつ、全然表面が溶けそうにないオーガを適当に押して転がし、穴の中に落とす。
 奥の方で、割れた音がした気がするけど……まだ凍っているようだからか。

「これでよし。あれだけ深ければ、爆発しても地上には影響は少ないかな。結果的に良かった」
「失敗をいい方に解釈しているのだわ……」
「オーガが片付いたところで……はい、エルサ」
「あ! キューなのだわ! 頂きなのだわ!」
「速いな……」

 再び土を操る魔法で、穴を埋めてオーガの処理は完了だ。
 ちょっと失敗して、土がこんもりとなって一メートルくらいの小さな山ができたけど、それだけ厳重に爆発の影響を封じ込めたと思っておこう。
 硬くもしていたから、そうそう掘り起こされる事もなさそうだし。
 オーガの方が終わったので、次は女性の方を……と考えて歩いて戻りながら、エルサには荷物から取り出したキューを数本あげる。

 溶かすのに協力したし、助けに入る時にキューがもらえるかも……なんて言っちゃったからね。
 これで何もなかったら、エルサが暴れ杯めるかもしれない。
 それに、女性は軽装で荷物は馬に取り付けていたから、キューとか食糧すら持っていなさそうだ……。

「あー、えーっと……オーガの処理が終わりましたけど……貴女はどちらまで行くつもりだったんですか?」
「は? え……私は、ちょっと報せなきゃいけない事があったので、王都まで行こうかと……でも、馬は荷物と一緒に逃げてしまったし、いくら疲れていても、もう近くにはいないわね……」
「あぁ、王都ですか。それなら行き先は一緒ですねー」
「は、はぁ……そうなのね?」
「はい。なので、一緒に王都まで行きませんか? というより、歩いてだとまだまだ時間がかかりそうですし……」
「一緒にって……助けてくれたのはありがたいけど、一体どうするの?」
「それはもちろん……エルサ?」 
「モキュ、モキュ……美味しいのだわー」
「……ドラゴンさん? は美味しそうにキューを食べているけど……?」
「あー、あははは……もう少し待ちましょう」
「はぁ……」

 女性に話し掛け、何処まで行くつもりだったと聞いたら俺達と行き先は同じだった。
 馬も逃げたし、ここから王都となると歩くのには距離があり過ぎる……数日で到着できればいい方かな?。
 それに、食料すら持っていなさそうな女性を、この場で放っておくのはなぁ……と思い、一緒に王都まで行くように提案。
 俺にはエルサがいるから、乗せてもらえばひとっ飛び……と思たったら、キューに夢中でそれどころじゃなった……。

 女性に苦笑しながら、エルサがキューを食べ終わるのを待つしかないと、今すぐの移動を諦める。
 はぁ……こんな事なら、移動した後でキューをあげれば良かったかな。


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