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空白の場所から聞こえる物音
しおりを挟む「もしかしたら、その音というのは壁の奥から本当に、何者かが出している音なのかもしれませんね。どこからその中に入ったのかはわかりませんけど……」
「そうだなぁ……地図を見た限りでは繋がっている道はなさそうだが、もしかしたらどこかから入れるのかもしれん。だが、それを探すのにも時間がかかるぞ?」
「そうですね……」
広場まで行くのにそれなりに時間がかかってしまう。
そこから、地図の空白をなぞるように探索したとしても、空間はかなりの広さだろうから時間がかかってしまうだろう。
入り組んでいる坑道だし、描かれていない道もあるからちゃんとなぞれるかもわからない。
となるとやっぱり、穴を通るのが一番近道か……。
「穴を通って、その先を調べてみるのが一番早そうですね」
「だが、エクスブロジオンオーガが出て来る穴だろう。途中で遭遇したら危険じゃないか? 聞けば、武器を使ったりできる程広くもなさそうだ」
「そうですね……確かに武器は使える場所じゃありません。それに、移動するにも這って行かないといけないので、エクスブロジオンオーガと遭遇したら一方的に攻撃されるでしょう」
「それは……さすがに危険だろう」
「リク様といえども……なぁ?」
「あぁ。フォルガットさんとの勝負に勝ったのは見たが、それはあくまで力を示しただけだしな。こちらが何もできないような状況だと、魔物としては強くないと言われるエクスブロジオンオーガでも……」
「俺だったら、地道に探る方を選ぶぞ? そんな危険な目にあいたくねぇ」
「そりゃ誰だってそうだ」
やっぱり皆、武器が使えない状態で穴を通るのは危ないと考えているようで、口々に危険だと言っている。
まぁ本当に無防備で這って移動しているだけだったら、確かに危ないけどね。
「まぁ、多分大丈夫ですよ。えーと、フォルガットさんには見せましたが、俺にはあの結界があるので」
「……カップが割れなかったあれか? どれ程耐えられるのか俺にはわからんが、あれなら大丈夫……なのか?」
「はい、大丈夫です。エクスブロジオンオーガくらいでしたら、どれだけ攻撃されても破られる事はないはずですから」
結界を身にまとうようにしていれば、穴を通っている時にエクスブロジオンオーガと遭遇しても、俺達が危険という事はない。
移動先にエクスブロジオンオーガが立ち塞がる事になるから、そこからどうやって先に進むのかが、一番問題だけどね。
爆発する事を考えると、あまり無理もできないし……。
「あ、そうだ。話を聞いてやっぱり怪しそうなので、とりあえず穴を無理にでも通って調査するようにしますが……エクスブロジオンオーガで、何か気になる事ってありませんでしたか? えっと、知り合いに聞いたところ、本来エクスブロジオンオーガって……」
穴の進み方は、宿に戻ってソフィーやエルサと話すとして、エクスブロジオンオーガを見た事のある鉱夫さん達に、何か気付いた事があるかを聞いてみる。
フィネさんと話した内容を伝えて、エクスブロジオンオーガは意思の力で爆発するはずなので、意識を奪ったり、首を斬り取れば体が爆発しないはずである事。
ブハギムノングで俺が遭遇したエクスブロジオンオーガは、その条件以外でも爆発する事があったと伝えた。
冒険者ではなく、鉱夫さん達だから魔物に関して詳しくはないとは思うけど、何か気付いた事があればヒントになるかもしれないからね。
「んー……俺ぁ特に気になる事はなかったなぁ。爆発するのが厄介ってだけで。最初の頃より、エクスブロジオンオーガの爆発で怪我をする奴が増えたくらいか?」
「そうですねぇ、俺達も特に気になった事は……」
「怪我をした奴は、慣れて油断した結果だろうしなぁ」
だけど、特に鉱夫さん達は気になった事はないみたいだ。
んー……爆発で怪我をする人が増えたかぁ……言われている通り、油断していたとか爆発の衝撃で飛んで来た石だとかに当たった、っていう事なんだろうと思う。
「あぁ、そういえば……初めてエクスブロジオンオーガを見つけた時って、ちょっと肌の色が違わなかったか?」
「言われてみれば……? だが、見間違いじゃねぇのか?」
「……肌の色、ですか? 俺が見たエクスブロジオンオーガは、肌が赤みがかっていましたけど」
「見間違い……と言われれば否定できないくらいおぼろげなんですがね? 確か、もう少し緑色だったような気もするんでさぁ。まぁ、照明があるとはいえ、鉱山の中は薄暗いので本当に勘違いかもしれませんけど……」
「そういえば、最初の頃は風の魔法を使って怪我をした奴もいたな……だが、最近は使っているのを見た覚えがないな……」
「親方もですかい? 実は俺も、そんな気がするんですよ。まぁ、頻繁に遭遇するようじゃ危険過ぎるんで、合わないように採掘を止めたり避けたりしているせいもあって、確かめたわけじゃないですが」
「まぁそりゃな。戦って勝てない相手じゃあないが、鉱山の事を考えると会わないに越したことはないからな」
「……肌の色と、風の魔法……」
確実とは言えないけど、それぞれ少しだけ違和感というか気になる事はやっぱりあったみたいだね。
というより、言われて初めて思い出したとか、そんな事もあったなぁ……くらいなので、皆自信がない事なんだろう。
すぐには出て来なくても仕方ないか。
それにしても肌の色と魔法ねぇ……。
俺が見たエクスブロジオンオーガは、赤みがかった肌の色をしていたのは間違いない。
正しくは赤茶色だったと思うけど、茶色は鉱山内で土に汚れていたせいもあるんだろう。
それと、ブハギムノングの冒険者ギルドでベルンタさんに聞いた話では、確かに風の魔法を使うって言ってたっけ。
フォルガットさんもそれは知っていて、鉱夫さん達にも魔法を使われた人がいるみたいだけど、後になる程見られる機会が減ったと……。
それはまぁ、避けて遭遇の機会が減ったりだとか、最終的には爆発してしまうにせよ、対処に慣れてきたおかげもあるのかもしれないけど、俺が遭遇した時も使われる事はなかった。
使えなかった……? それとも、使わなかったのか……数を相手にしていたし、一度に全部を倒すような事はしていないから、エクスブロジオンオーガに使うための余裕がなかったとは思えない。
肌の色もそうだけど変異種とでも言うのか、発見され始めた頃からエクスブロジオンオーガ側で何かが変わったのかもしれない……魔物が短期間で変化を起こすような事があるとは聞いた事がないけど……。
「あ、そういえば……エクスブロジオンオーガに関してではないですが、変な奴もいましてね」
「変な奴ですか?」
「えぇ。他の街から仕事を求めて来たって奴なんですが、ひ弱に見える奴でねぇ。一応、人ではあって困るものでもないので雇ったんですよ。まぁ、それなりには働いてくれてました。ですがねぇ……そいつの姿がここ最近見えないんですよ」
「雇ったのに、管理とかはしてなかったんですか?」
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