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爆発条件解明のヒントを得る
しおりを挟む俺が難しい顔をして考え込んだためか、フィネさんが頭を下げて自分の情報が間違っているのだと訂正する。
確かに、フランクさんの言う通り人から聞く情報というのは、間違いが多い事だってある。
けど俺には、どうにも今の話が間違いという気がしなかった。
確かにエクスブロジオンオーガは、体が切り離されても意識を失っていても、全身が爆発していた。
けどそれとは別に、ソフィーによって腕を斬り落とされても爆発しなかったのも確かだからね。
あの後エクスブロジオンオーガは、まだ戦えるという意思でソフィーに向かって行っていたから、爆発するという意思を発揮する事はなかったんだと思う。
俺達は今まで、意思と何かが作用して一定の条件を満たした時に爆発するのでは、と考えていたんだけど……もしかしたらそうではなく、二つ条件があったのだとしたら……?
「フィネさんが言う通り、エクスブロジオンオーガが意思の力で……というのは納得できる話です。実際にそうでないと納得できない爆発の仕方をしたのも見ましたから」
「ですが、リク様が言うには首を斬り離したとしても、体まで爆発したと……? 私が言う条件には当てはまりません」
「そうです。だからもしかすると……条件は二つあるのではないかな……と……」
「二つですかな? ふむ……」
首を傾げるフランクさんに説明しながら、フィネさんの疑問にも答える。
一定の条件というのは確かだけど、それが二つあるのだとしたら、一つの条件だと思って探っていても答えが見つかるわけもない……かな。
「はっきりとそうだと言えませんし、二つの条件があるとして、もう一つの条件が何かまではすぐにわかりませんが……ちょっとしたヒントを得られた気分です。ありがとうございます、フィネさん」
「いえ……私はただ、聞いていた事と違うと思っただけですので……。もし間違った情報をリク様にお伝えしたらと思うと……」
「正しいかどうかはこの場で証明できませんけど、そういう事からヒントというのは得られるのかもしれませんね。おかげで、考え方を変えて調査に挑めそうです。これからも、何か気付いた事があれば教えて下さい」
「はい、ありがとうございます。閣下やリク様にとって有益な情報を提供できるよう努めさせて頂きます……」
ちょっとしたヒントというか、知らなかった情報を得られて良かった。
これで謎が解けたわけじゃないけど、とっかかりにはなるかもしれないから。
そうして、少しだけ話をしてフランクさん達との話を終えて冒険者ギルドを出た。
エクスブロジオンオーガの爆発条件をフィネさんから詳しく聞き、しばらくの間様子を見つつ魔物の間引きをして街へ向かって来ないようにする事。
さらにモニカさん達の調査に協力してくれる事で、何かを発見した時の情報提供も約束してくれた。
もちろん、調査自体は冒険者の仕事で、衛兵さん達のような兵士さんは街や住人を守る事が最優先なので、直接調べたりするわけではないけど、それでも自分達以外に協力してくれる人がいるというのは心強い。
一応、冒険者とは別で魔物を刺激しないよう森の様子を窺うとの事なので、何か得られる事があるかもしれないしね。
別の視点からというのも、調査には重要な事かもしれないし。
まぁ、魔物と戦うのは避けながらなので、詳しく調べる事はできないかもしれないけども。
それと、一緒に話を聞いていたフィネさんとコルネリウスさんも、周辺の魔物討伐に参加して間引きに協力してくれる事になった。
モニカさん達だけじゃ、倒せる数は限られてるからという事と、コルネリウスさんを鍛える意図もあるみたいだ。
もちろん、敵わない魔物の場合は手を出さない事として、フィネさんをリーダーに複数人の戦える人間を付けてみたいだけどね。
コルネリウスさんが無謀な行動をしないよう、フィネさんの指示には絶対に従えと、フランクさんが口を酸っぱくして言い聞かせていた。
「リク、お帰り。話は済んだか?」
「うん。フランクさん達も協力してくれるようになったよ。あと、ちょっとした情報も得られたかな」
「情報?」
「まぁ、それは移動中かブハギムノングに到着してから話すよ。立ち話で済ます事じゃないからね。……エアラハールさんは?」
「そうか。エアラハールさんは宿の中だ。ユノにお仕置きを受けている最中だな。……その、立ち寄った店の店員にな……」
「あぁ……うん、なんとなくわかった。――えっと、やり過ぎないようにね?」
「……ユノちゃんに伝えておくわ」
冒険者ギルドから出て、モニカさん達の宿へと向かうと、外で大きな荷物を地面に置いて待っているソフィーに迎えられた。
エクスブロジオンオーガに関しては、じっくり話し合いたいからこのままここで立ったまま話さない方がいいだろう。
ソフィー一人だったので、エアラハールさん達の事を聞くと宿の中でお仕置き中らしい。
なんとなく、何をやったのか想像がつくのは、エアラハールさんへの信頼の証かもね……悪い意味で。
とはいえ、ユノが全力で折檻するとエアラハールさんが動けなくなる可能性もあるので、程々にと伝える用モニカさんにお願いした。
「それじゃ、出発しようか。思ったよりも長く話しちゃったからね」
「そうだな」
「リクさん、気を付けてね。まぁ、リクさんなら心配しなくてもどうにかするんでしょうけど……」
「ははは、まぁ何とかやってみるよ。モニカさんの方こそ、気を付けてね? 一応、長くても二日くらい間を空けるくらいで様子を見に来るから」
「えぇ、気を付けるわ。ほとんど、ユノちゃんやエアラハールさんに頼る事になりそうだけど……。あ、もし私達が宿にいなかったら、冒険者ギルドに行けば大体どの辺りにいるのかわかるようにしておくわね」
「うん、わかった」
フランクさんとの話は思った以上に時間がかかってしまったから、早く移動しないとブハギムノングで話しを聞く時間がなくなってしまいそうだ。
街の人達は採掘がほとんどできなくて、時間が余ってるかもしれないけど夜遅くに話を聞くのも悪いからね。
……場合によっては、酒場で酔った鉱夫さんと話さなきゃいけないから、面倒だなんて事は……考えてないよ、うん。
ともあれ、すぐにでも出発するため、ソフィーに声をかけてユノ達の事をモニカさんに任せて街の外へ歩き出す。
鉱山の方がどれくらいで解決できるかわからないけど、こちらも何があるかわからないから、できるだけ様子を見に来る事にしよう。
冒険者ギルドに行けば、モニカさん達が向かった場所を聞けるようにしてくれるみたいだから、すれ違う事はないだろうしね。
「それじゃエルサ、頼むよ」
「わかったのだわー!」
「ついつい買い込んでしまって荷物が増えたが、助かるな」
街の外へ出て、少し離れてエルサに大きくなってもらい、荷物を持って背中に乗り込む。
何やら鉱山内での長時間過ごすための保存食や、消耗品などを買い揃えたみたいで、来た時より倍増した荷物。
鉱山の街には冒険者用の物はほとんど売ってなさそうだから、今のうちにと買い込んだんだろう。
ソフィーが言う通り、結構な大きさの荷物になっているから、それを乗せて運んでくれるエルサはありがたいね。
重量はそれほどでなくても、かさばると持ち運びに不便だからね――。
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