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パーティの振り分け

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 元気がなくなったミルダさんを、励まそうと思って声をかけたんだけど……ちょっと元気になり過ぎたみたいだ。
 成長したロータを想像したミルダさんは、ちょっと微妙な表情だったけど、これに関して俺は何も言えない。
 ……趣味は、人それぞれだから……法に触れたりしない限りは、ね?
 今からすぐにでも、オシグ村に行きたがっているミルダさんを、俺を含めた他の皆はポカンとしながら見送るしかできなかった……。

 ごめんロータ……もしかしたら、ちょっと厄介な人がそちらに行くかもしれない。
 ロータが、ミルダさんを受け入れてくれればいいんだけど……。

「リクさん……もしロータ君が嫌がったら……?」
「いや、王都を離れるまでは懐いてたし……多分大丈夫だと思う……きっと」
「……ロータが、迷惑をしなければいいのだが………」

 モニカさんの言葉に、俺は自信を持って保証する事はできなかった……不甲斐ない。
 続くソフィーの言葉にも、何も返せずただただ苦笑しかできなかった……。
 ロータなら、きっと大丈夫だと信じるしかない、よね。

「そんな事よりじゃ、リクよ……人手を分ける事にしたようじゃが……どのように振り分けるのかの?」
「振り分け……どうするべきですかねぇ……?」

 嬉しそうに去って行くミルダさんを見送り、ギルドを出るために廊下を歩いていると、エアラハールさんに聞かれた。
 ソフィーからの提案でそれぞれ別の場所にわけるとしたけど……どうしたものかなぁ。
 俺とユノは、マティルデさんに話したように別々にする事は決まってるけども、あとはソフィーとモニカさんだね。
 鉱山の方はまだ強い魔物の確認はされていないけど、どんな魔物がいるかはわからない。
 対して森付近の方は、強い魔物も既に確認されている……と。

「んー……やっぱり、経験豊富なソフィーの方をユノと一緒に行かせるべきですかね……?」
「それなんだがな、リク。私は鉱山の方へ行った方がいいと思う」
「ソフィー、どうして?」

 強い魔物が出るとはいえ、基本的に戦闘はユノが担当すると考えて良さそうだ。
 だから、調査の事を任せるのに経験が豊富なソフィーの方がいいかなと、エアラハールさんの質問に答える。
 ソフィーなら、強い魔物が出ても無理をしたりはせず、しっかり状況を見極めてくれると思うしね。
 けどソフィーは別の考えを持っているみたいだ。

「私は武器が剣だろう? そしてモニカは槍だ」
「うん、そうだね」

 腰に下げている自分の剣を示しながら、それぞれの武器を確認するソフィー。
 モニカさんの方は、槍を背中に背負ってる。
 剣と違って槍は長いから、腰に下げると邪魔になるからね。

「鉱山となると、入り組んで迷路になっている他にも、道が狭い事も考えられる。場合によっては槍で戦えないかもしれないからな。剣なら、多少は融通が利くだろう?」
「……確かにそうだね。槍なら逆に、外での戦闘が想定される森付近の方が使いやすいか……」
「そういう事だ」

 モニカさんの槍は、2メートル以上はある物だ。
 常に端を持って長く使う事はあまりないと思うけど、剣よりは使える空間が制限されるのは間違いない。
 剣でも狭い空間だと振り回すのに苦労をする事もあるんだから、槍だと尚更だろうしね。
 例えば、冒険者ギルドに来る時に使った秘密通路……整備された道だし、それなりの広さは取ってあるように見えたけど、やっぱり槍を振り回すのに向いているとは思えない。

 大体2人から3人が横並びに歩ける空間くらいしかないからね。
 剣でも思いっきり振り回せないくらいの空間だから、槍はもっと苦労する事になる。
 しかも、鉱山は地下通路よりも整備されているなんて事はなさそうだし……広い場所もあるかもしれないけど、細い道ばかりでもおかしくないか。

「それじゃ、私はユノちゃんと一緒ね。……リクさんと離れるのは色々と心配だけど……ソフィーが一緒なら大丈夫かな」
「任せろ。しっかり見張っておくぞ」
「一緒に行くの!」
「……なんだか、変な心配をされているような気がするけど……まぁいいか。――という事で、俺とソフィー、ユノとモニカさんという組み合わせですね、エアラハールさん」
「ふむ、成る程のう。確かに武器の特性を考えるとその方が良さそうじゃ。それに……」
「ん?」

 ソフィーとの話を聞いて、頷きながらモニカさんがユノと行く事を承諾。
 何やら俺がしでかす心配をされているような気がするけど……まぁ、今まで魔法の失敗をしたりしているのを見てたりもするから、仕方ない……のかな?
 とりあえず気にしないようにして、エアラハールさんにチーム分けを報告すると、納得しながらも何かを考えている様子。
 何か、他にもあるのかな?

「モニカ嬢ちゃんは、魔法も使うんじゃったの。昨日も使っていたかの?」
「はい。まぁ、あまり強い魔法は使えませんが……ほとんど火の魔法で、相手を倒すというより、気を引いて隙を作るような魔法ばかりです。それに、槍からも……」
「ふむ……魔法を囮に、あわよくばダメージを与えつつ効率的に使って、槍で攻撃、かの……マリーちゃんからの指導が入っておるの。まぁそれはよしとしてじゃ。……鉱山で、火の魔法は使わない方が良さそうじゃの」
「あー……確かにそうですね」

 モニカさんが魔法を使う事を確認するエアラハールさん。
 確かにモニカさんは規模は大きくないけど、火の魔法を使っていた。
 俺が見た限りでは、魔法具の槍から出る火の魔法の方が威力が高そうではあるけど、状況に応じて使い分けているようだったね。
 広い範囲を攻撃する際は、槍と自分の魔法をほぼ同時に使っていた事もあったっけ……これは、多分マリーさんの特訓の成果だと思う。

 けど、鉱山で火の魔法というのはあまり相性が良くないだろうね。
 見た事がないので、内部がどうなっているのかはわからないけど、想像通りなら山の中に穴を掘って入ってるような坑道になっているはずなので、空気の問題が出てくる。
 火が燃えるには当然、酸素が必要……いくら魔法で発生させるとはいえ、その後燃えるのには酸素が絶対不可欠なはずだ。
 全体はそれなりに広かったとしても、限られた空間の中で火を燃やすというのは怖いからね。
 エルフの集落で俺が結界で覆い、空気が入れ替わってない事を心配した以上の状況になる可能性もある。

「火の魔法と、坑道は相性が悪いですね……」
「うむ、そういう事じゃ。下手したら、崩れる心配もあるからの……生き埋めは勘弁じゃ」

 火の魔法には、燃やすだけではなく爆発するようなものもあったと思う。
 確かモニカさんも、小規模ながらも爆発する魔法も使えたはず。
 モニカさんが無計画に魔法を使うとは思わないけど、もしもの時に使って坑道が崩れたりしたらと考えると、背筋に冷たい物が流れて来そうだ。
 そう考えると、何も考えずに……とまでは言わないけど、細かい事を考える必要がない広い場所であるはずの森付近の調査の方が、モニカさんの特性を生かせるという事か。
 まだまだ新米の冒険者で、一応パーティのリーダーを任されてるけど……もっと色々と勉強しないとなぁ――。


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