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ミルダさんはロータが気になる模様
しおりを挟む「そこのユノちゃんが、見た目とは違って強いというのは、聞いた気がするけど……大丈夫なの?」
「そこらの魔物に負ける事はないでしょうね。一応、王城に押し寄せた魔物の大群も、その大群の真ん中に一人で入って戦った上に無傷でしたし……それに、キマイラとも遊んでいましたから」
「……えっと……それなら大丈夫そうね、うん。……こんなに小さい子が……?」
「……ギルドマスター、私も信じがたいように思いますが……リク様の言う事なので……」
「そうね、そうよね。信じられないような事を平然とやるのが、英雄様よね。……ギルドマスターとして、色々な人を見て来たつもりだけれど、リク君は想像の斜め上を簡単に飛び越えるわね……」
「私も同感です……」
「?」
高ランクの魔物が確認されている方へ、ユノが主な調査をするという事に懐疑的なマティルデさん。
見た目だけなら、確かに小さい女の子だからね、仕方ない。
そう思ってマティルデさんに説明すると、頷きながらもミルダさんと小声で話し始めた。
あのー、ほとんど内容聞こえているんですけど……?
とりあえず、俺にかかわる事という事で信じてはもらえたようだ。
エルサはドラゴンだし、ユノは元神様……女王様に至っては元姉ときたもんだ。
姉さんの事は、さすがに話していないからマティルデさんも知らないだろうけど、色々常識外れな存在が周囲にいるなぁ。
俺? 俺は普通の人間……とは言い難い部分があるって、最近少しだけわかって来た気がするけどね。
エアラハールさんは、ユノの事を聞いて「うむ、さすがはワシを殴り飛ばす嬢ちゃんじゃ」とか呟いていたけど、確かに元Aランクとはいえ、俺が有効な一撃を与えられなかった人を、気軽に殴り飛ばしたり蹴り飛ばしたりしているのは凄い。
まぁ、エアラハールさんがそういう状況の時、気を抜いてしまっているからのような気がするけども。
「それじゃあ、二つともの依頼を受諾するのね?」
「お願いします。――で良いんだよね、モニカさん、ソフィー?」
「えぇ、私は構わないわ」
「私の案だからな。もちろんいいぞ」
「それでは、手続きをさせて頂きます。こちらの書類に……」
マティルデさんからの確認に頷きながら、モニカさん達にも確認する。
二人共頷いて、ミルダさんが別の書類を出して依頼受諾の手続きに入る。
とはいっても、パーティ名やリーダーの名前を記入するだけの簡単な物なんだけどね。
パーティを組んでいなかったら、全員の名前だとかランク、報酬の分配を各自でするかギルドに任せるかとかを書く必要があったから、パーティを組んでいて手間が省けているみたいだ。
「はい、確認できました。それでは、こちらの依頼書を持ち帰り、確認して下さい」
「調査依頼だから、期日に関してはあってないようなものだけどね」
「はい、ありがとうございます」
ミルダさんに記入した書類を確認してもらい、二つの依頼を受諾。
依頼書を受け取りながら、マティルデさんとミルダさんにお礼を言う。
二人共、忙しい時間を割いて、依頼の話をしてくれたからね。
本当はお金をおろすだけのつもりだったのに、予想外に長居してしまった。
依頼書を持って、早々に退室しようと席を立ち、マティルデさん達に挨拶をして退室。
冒険者ギルドの外へ向かっていると、後からミルダさんが追いかけてきた。
「リクさん、申し訳ありません。少しいいですか?」
「どうしたんですか、ミルダさん?」
冒険者ギルドの廊下で呼び止められた俺達は、ミルダさんの方を振り返って首を傾げる。
何か話したい事があったのなら、部屋にいる時に話せば良かったのに……後になって思い出したのかな?
と思ったけど、俺達を呼び止めたミルダさんは、周囲をキョロキョロとして他に人がいない事を確認していたりと、少し挙動不審だ。
「えっと……以前、この冒険者ギルドに来たロータ君の事なんですけど……」
「ロータの? あぁ、そういえばミルダさんは、一日とは言えお世話をしてくれてましたよね」
王都へ来るまでに、野盗に襲われて父親を亡くしたため、頼る人を失ってしまったロータ。
冒険者ギルドにまでなんとか辿り着いて、俺と出会って依頼を受けてくれる冒険者が決まったまでは良かったけど、泊まる所すらない状態だった。
俺が王城に連れて行って一晩泊めようかとも考えたけど、ミルダさんがお世話を名乗り出て、自宅で泊めたんだったね。
……翌朝改めて会ったロータは、異様にミルダさんに懐いているように見えたけど……このあたりは深く掘り下げない方がいい気がしてる。
ともかく、一晩とはいえお世話をした子供の事だから、あの後どうなったのか知りたいのだろう。
ある程度なら、依頼達成報告でモニカさんが報告してくれていると思うけど、ロータ自体があれからどうしているかというのは、ミルダさんにはわからないからね。
「ロータ君は、無事に村で過ごしている事とは思いますが……あれからどうなったのかと、少しだけ気になって……」
少しだけ、という割にはそわそわしている様子のミルダさん。
まぁ、これにもあまり突っ込まない方がいいんだろうなぁ。
「えっとですね……ロータは父親の剣を受け継いで……」
ミルダさんに、細かいロータの状況を説明する。
父親の剣を受け継いで、ソフィーに教えを受けた後は、クレメン子爵達に見込まれた事。
常にではないけど、時折子爵家の騎士団が来てロータの事を見てくれている事などだ。
「そうですか……ロータ君は剣の素質が……」
「正確には、心意気が……といった感じでしたけど、剣の方も見込みがあったんだと思います」
「……その、私の事は何か言っていませんでしたか?」
「えっと……?」
ロータの事を説明し終わると、ホッとした様子のミルダさん。
父親を亡くしたばかりの子だから、色々と心配していたんだろう。
それはいいけど……確か、一緒に移動している時や村に到着した後で、ミルダさんの事を言っていた事ってあったっけ?
剣の事にいっぱいいっぱいで、俺はミルダさんの事を話すロータは見ていないな……これに関しては、数日一緒にいて剣を教えていたソフィーに聞いた方が早いかな?
「……何も、言っていなかったな。母親や祖父の事は話していたが……あとはほとんどが剣に関する事ばかりだったはずだ」
「…………そうですか」
ソフィーに視線を向けると、代わりに答えてくれたけど……やっぱりロータはミルダさんの事を話していなかったみたいだ。
それを聞いて、あからさまに肩を落とすミルダさん。
「だ、大丈夫ですよ。きっと、ロータが頼もしく成長したら、冒険者になるなりで、ミルダさんに会いに来てくれますよ。恩を忘れる子ではなかったはずですから。まぁ、子爵家の兵士や騎士になっている可能性もありますが……」
「……そ、そうですよね! いえ、成長するのは微妙ですが……それでも、ロータ君はきっとまたここに来てくれますよね!」
「は、はい。そうですよきっと。もし来なくても、こちらから会いに行くという事もできますからね。ロータがいる村は知っているんですから」
「はっ! そうですね! 成長を待たなくても、今のかわいいロータ君に会いに行ってもいいんですよね! ありがとうございました、リク様!」
「え、えぇ。どういたしまし……て?」
「では、私は休暇が取れるよう、ギルドマスターに掛け合って来ます! 依頼の方、頑張ってくださいね!」
「あ、はい……」
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