上 下
415 / 1,903

絡まれているソフィー

しおりを挟む


 クラウスさんにお願いしに来て、結局依頼受ける事になったけど、隣にいたモニカさんはメモを取りながら話を聞いていて、依頼に関して特に何も言わなかったし、大丈夫だろう。
 エルサは……モニカさんの所で丸くなって寝ているように見えて、目だけは開けて、話を聞いていたようだ。
 開いてる目が、いつもより鋭いような気がするけど……多分、キューに関する事を考えてるからだろう。
 ……マギアプソプションを、ブレスで焼き払うとか考えてないと思いたい……焼き畑農業になってしまうし、また魔力溜まりができそうだし。
 うん、注意して見ておこう……。

「では、一旦獅子亭に帰って話した後、調査に向かいます」
「はい、よろしくお願いします」

 ヤンさんに断って、部屋を出る。
 一旦獅子亭に言って、ソフィーにも話をしてから、農場予定地の調査に出発だ。
 同じパーティだし、正式に依頼を受けたんだから、ちゃんと話しとかないとね……魔物の討伐もありそうだし。
 そう思いながら、冒険者ギルドの建物内を移動する。

「なんなのだ、その子供は! ……まさか!」
「まさかとはなんだ。別に私はやましい事はしてないぞ?」
「……ん?」
「この声、ソフィーよね?」
「そうみたいだね。どうしたんだろう?」

 ギルドのの廊下を歩いていた時、近くなった受付の方から、何やら叫ぶような声。
 揉めている声のようにも聞こえるけど、叫んでいる声に答えるのは、よく知っている声だし、落ち着いてる様子だ。
 立ち止まり、モニカさんと顔を合わせて確認。
 フィリーナも頷いてるし、やっぱり、落ち着いてる方の声はソフィーのようだ。

 女性の声であの話し方をするのは、俺の知っている中ではソフィーしかいないしね。
 けど、叫んでいる方の声も、ソフィーに似ている話し方のようだったけど……?

「とにかく、行って見ましょう」
「そうだね」
「ええ」

 モニカさんに頷き、三人で少し速足になりながら受付に向かう。
 その間も、何やら叫んでいる様子なのが聞こえて来た。
 どうやら、一方的にソフィーに絡んでいるようなんだけど……女性がソフィーに絡むって、何があったのか。
 キリッとした雰囲気でも美人のソフィーだから、男性に絡まれてるという事なら、ありそうなんだけど……?

「ソフィー?」
「あぁ、リク。話は終わったのか?」
「リクなのー」
「あぁ、うん。ユノも一緒か。一体どうしたんだ?」
「なんなのだ、この男は……?」

 冒険者たちの待合も兼ねている受付に出ると、すぐにソフィーへ声をかける。
 ソフィーはユノと手を繋いで受付の中央付近におり、その向かいには冒険者と見られる、鎧を身に着け、武器を持った数人の女性達と向き合っていた。
 俺に声をかけられて、こちらを見るソフィー。
 ユノも俺を見て一緒に声をかけて来た。

 ソフィーと向き合っている女性達のうち、一番前に出ていた女性が俺を訝し気に見て、声を出す。
 話し方と声の感じからして、ソフィーに叫んでいたのはこの人のようだ。
 しかしこの人の恰好……どうなんだろう、これは……。

「えっと、ソフィー……知り合い? 何か揉めてたような声が聞こえたけど?」
「揉めているつもりはないんだけどな。まぁ、向こうが突っかかって来ている状況だな。私とユノが一緒にいる事が気になったらしい」
「ユノと……?」
「……ソフィー、どういう事だ? 子供を連れている事といい、男と親しそうに話していることといい……説明しろ!」
「ふむ、お互い初対面だし、紹介が必要か……あ」
「リクー、お手伝い終わったのー」
「おっと。そうか、ユノ、偉かったな」
「えへへ―、なのー」

 ソフィーのいる所へ、モニカさんと近付きながら、どういう事かを聞く。
 フィリーナは、少し離れた場所で様子を見るつもりらしい、エルフが近付くと、話がややこしくなるとか考えて良そうだ。
 説明によれば、ユノといる事で向こうから絡んで来ている状況らしい。
 ユノがいるからって、どうしてだろう……?
 子供と一緒にギルドに来てはいけないという事ではないだろうし、さっきまで聞こえて来ていた叫び声の内容からすると、そういう事ではないようだ。

 俺が近付いて行くと、さらに顔を険しく歪め、嫌そうにしながらソフィーに俺の事を聞く女性。
 ソフィーが一つ頷き、お互いの紹介が必要だと言ったところで、ユノが繋いでいた手を離し、俺に向かって駆けて来た。
 それを受け止めつつ、獅子亭の手伝いをした事を褒めてやると、嬉しそうな笑顔。
 ……うん、元々神様だったって事を忘れそうだね。

「まさか……その子供は、その男との……」
「いや、違う。勘違いはよせ。そういう間柄ではない」

 ユノを褒める俺を、目をむいて見ている女性。
 それに対し、首を振って否定するソフィー。
 ……何か、変な勘違いをされたかな?
 ちなみに、女性の後ろにいるのは、3人の女性。
 武器を持っている事から、もしかすると女性だけの冒険者パーティなのかもしれない。

 一番前にいる女性以外の人達も、驚いている様子ではあったけど、ソフィーに対して何かを言うような雰囲気じゃない。
 多分、さっきから叫んでいる女性だけが、ソフィーに絡んでいたんだろう……後ろの人達、止めようとしてる気配すらあるし。

「ルギネぇ……ソフィーが気になるのはわかるけど、あまり突っかかるのもよくないわよぉ?」
「そうですお姉さま。私達がいるじゃないですか」
「ルギネ、情熱的なのは良い事だけど、あまり行き過ぎると嫌われるわよ。焦げた肉のように……」
「アンリ、グリンデ、ミーム。今は黙っててくれ。これは私にとって大事な事なんだ!」
「はぁ……リク、この赤い髪をしたのが、リリーフラワーというパーティを率いるリーダー、ルギネだ。後ろにいるのは、アンネ、グリンデ、ミームという。この4人でパーティを組む冒険者だな」
「そうなんだ。えっと……初めまして。ソフィーとパーティを組んでいる、ニーズヘッグのパーティリーダー、リクです」
「同じくパーティメンバーの、モニカです」

 後ろの三人に止められながらも、それを黙らせるように叫ぶ女性……ルギネさん。
 皆同じパーティで冒険者なのは間違いなかったようだ。
 ソフィーの紹介を受けて、俺やモニカさんも自己紹介。
 とは言っても、自分の名前とパーティ名を言うくらいの簡単なものだけどね。

 最初にルギネさんに声をかけたのは、緑色の髪を腰まで伸ばしているアンリさん。
 垂れ目を眠そうにしながら、ゆったりとした喋り方をしている。
 一番年上に見えるアンリさんは、泣きぼくろとモニカさんよりも大きな……巨大といっても過言ではない程の胸を持ち、肌の多くを出していない格好なのにも関わらず、異様な色気を醸し出している。
 ……あまり注視するのは止めよう……色気に惑わされる可能性以前に、隣にいるモニカさんからの視線が痛い。
 でも、背中に二メートル近くありそうなでっかい斧を背負ってるけど……まさかそんな物を振り回したりするんだろうか……?

 次に声をかけたグリンデさん。
 この人は、四人の中で一番年齢が低そうで、幼さの残る声をしている。
 ショートカットにした黄色の髪と同じように、勝ち気な目と相俟って、活発な印象を受ける。
 身軽な服装で、太ももに左右一本ずつ短剣を携えており、活発な印象通り、素早い動きで敵をかく乱する役目を担ってるのかもしれないね。
 小柄で、ユノを除いたこの場にいる誰よりも小さい。

 一人ずつどんな人かを考えながら、リリーフラワーという冒険者パーティ、それぞれのメンバを順々に見ながら、その様子を窺った――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

「お前のような奴はパーティーに必要ない」と追放された錬金術師は自由に生きる~ポーション作ってたらいつの間にか最強になってました~

平山和人
ファンタジー
錬金術師のカイトは役立たずを理由にパーティーから追放されてしまう。自由を手に入れたカイトは世界中を気ままに旅することにした。 しかし、カイトは気づいていなかった。彼の作るポーションはどんな病気をも治す万能薬であることを。 カイトは旅をしていくうちに、薬神として崇められることになるのだが、彼は今日も無自覚に人々を救うのであった。 一方、カイトを追放したパーティーはカイトを失ったことで没落の道を歩むことになるのであった。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...