神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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キューの調査途中経過

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「起きるのだわ! キューがどうなったのか、聞くのだわ!」

 翌日の朝、俺やユノより早く起きたエルサの声で起こされる。

「キューがなくなる夢を見たのだわ。早くなんとかしないといけないのだわ!」
「夢って……そんなにすぐなくなる物じゃないから……」

 夢を見たと騒ぐエルサ。
 俺とユノ、エルサにとって、夢は特別な意味を持つけど、さすがにそれは大袈裟過ぎる気がする。
 大方、エルサがキューの事を気にし過ぎて見た夢だろう。
 ユノも、特にエルサの夢に何か意味があるようには感じてないみたいだし。

「おはようございます、リク様、エルサ様、ユノ様」
「おはようございます、ヒルダさん」
「キューはどうなったのだわ!?」
「おはようなの!」

 俺達が朝の支度をしていると、ヒルダさんが入って来て挨拶。
 それに返す中、エルサだけは挨拶ではなくキューの事を聞いている。
 気にし過ぎだろう、エルサ……。

「エルサ、まずおはようだろう。ヒルダさんにも失礼だぞ?」
「……わかったのだわ。おはようなのだわ。それで、キューはだわ?」
「そういう事じゃないんだけど……まぁ、挨拶しただけ良しとするか」
「ふふふ、エルサ様はキューの事が気になって仕方ないのですね」

 エルサに注意して、一応の挨拶はしてくれたけど、やっぱりキューが気になるようで、そちらの事ばかり聞いている。
 ヒルダさんは笑いながら、気にしていない様子で良かった。

「では、気になるエルサ様のために……現在、陛下が調査のための人員を招集している段階です。朝食が終わる頃には、調査が開始される運びになります。お昼ごろには、断片的にでも情報が得られる見込みです」
「そんなに早いんですか?」
「陛下が力を入れているという事もありますが……あくまで断片的に、です。原因が究明できたわけではなく、噂程度の情報と考えていた方がよろしいかと思います」
「まぁ、短時間でならそのくらいですか……」

 姉さんは調査に力を入れてくれてるらしい……昨日のエルサの反応を見て、早く調べないと……と考えているのかもしれない。
 城や町を破壊したり、畑を強襲されたらたまらないからね。
 なんだか、国の最高権力者を、ドラゴンを使って脅してる気分だけど……姉さんも漬物が食べたいと考えてるんだろうし、大丈夫だろう。

「昼にはわかるのだわ?」
「まだ、良くて噂くらいだよ。完全に原因がわかるわけじゃないからな?」
「むぅ……だわ」
「エルサ、我慢するの!」

 早く原因を知りたくて仕方ないエルサは、落ち着かない様子だ。
 そんなに焦っても、すぐに情報が入るわけじゃないから、おとなしくしてた方が、疲れないだろうに。
 またむぅむぅ唸り始めたエルサに、ユノが腰に手を当てて叱る。
 その様子は、おませな女の子が犬を叱っているように見えて、微笑ましい。

 けど……よく考えたら、エルサを作ったのはユノなんだよなぁ……。
 今の姿を見る限り、元神様だとか、叱ってる先がドラゴンだとか、想像できないと思う。
 見た目だけでなく、言動も子供っぽくなってるユノだからというのもあるか。

「とにかく、朝食を頂いて昼まで待とう。噂程度でも、何かわかるかもしれないしな」
「……わかったのだわ」
「お腹すいたのー!」
「では、準備をさせて頂きます」

 まずは朝食をと、エルサをおとなしくさせ、ヒルダさんに準備をお願いする。
 しばらくして朝食を頂いた後、レナとメイさんが部屋を訪ねて来た。
 さらに、モニカさん達も部屋に来て、全員が揃う。
 エルサは不満そうにしながらも、一応おとなしくしてくれていた。

 しばらく皆で雑談した後、モニカさんとソフィーが、町へでて調査の協力をすると言ってくれた。
 もちろん、専門ではないから、城の人とは違って有力な情報を得られる可能性は低いけど、手伝えない俺やエルサに代わって動いてくれるのはありがたい。
 フィリーナとアルネも賛同し、目立つエルフという事を考慮して、耳を隠す帽子を被っての参加となった。
 それでも、そこらの人間より目を引く美形だから、目立つのは仕方ないけど……あまり人の多くない場所を選んで調べる事にしたようだ。

 皆が部屋を出て行って、残ったのは俺とエルサ、ユノとレナさん、それとメイさんとヒルダさんだ。
 ユノとレナは、拗ねたように丸まってるエルサを撫でて、少しでも落ち着かせようとしてくれてる……遊んでるだけかも?
 メイさんは、恐る恐るエルサを手で触れては引っ込める……を繰り返してる。
 もしかして、ドラゴンのエルサがちょっと怖いのかな?

「失礼します。ヒルダさん、よろしいでしょうか?」
「はい、私ですか?」

 お昼になる前、兵士さんが一人部屋を訪ねて来て、ヒルダさんと話し始める。
 この部屋に訪ねて来る人で、ヒルダさんをというのは珍しいね。
 いつもは俺を訪ねて来る人が多いのに……。

「わかりました。ご苦労様です」
「はっ!」

 少しの間、ヒルダさんと話した兵士さんは、何かを伝えた後すぐに退室して行った。
 重要な伝達とかだったのかな?

「リク様、予想より早いですが、新しい情報が入りました」
「……今調べてるあれの、ですか?」
「はい」

 今は、エルサがユノ達に構われておとなしいから、刺激しないよう、キューの名前は出さないようにした。
 キューに反応して、またエルサが騒ぎだしたら、ちょっと面倒だしね。
 頷いたヒルダさんと、エルサから距離を離すように、洗面場がある場所へ。
 さらに念のため、声が漏れないように結界を使っておく。
 これで、今のエルサに聞こえて刺激する事はないと思う。

「エルサは耳がいいですからね。それで、新しい情報とは?」
「はい。キューが不足している原因の多くは、王都に住まう民が、大量に買い求めているからかもしれないとの事です」
「王都の人達が?」

 確実な原因とは言えないかもしれないけど、王都の人が多く買えば、確かに不足する事になる。
 でも何故、珍しい物でもないキューが、今突然売れ始めたんだろう?

「それに関しては、どうやらまた別の噂が流れているようです」
「また噂、ですか?」
「そのようです。なんでも、リク様やエルサ様が、好んでキューを食べている……と」
「それ、噂でもなんでもなく、ただの事実ですよね……」

 俺はもちろんキューは好きだし、エルサに至っては言わずもがなだ。

「そうなのですが……まだパレードを行う前、エルサ様を連れたリク様が、キューを買い、食べている姿があちこちで見かけられたのではないかと……」
「あー、それは見られてるでしょうね」

 城下町でキューを買ったり、エルサにキューを食べさせながら歩いていた事もある。
 エルサを頭にくっ付けた俺は、当然目立つから、それを見られていてもおかしくはない。
 それを見た人達が、噂として話して広まって行ったって事か。

 最初は俺達の事をよく知らなかったけど、パレードで顔を見て、初めてキューを食べてた俺やエルサが……と気付いた人達がいたんだろう。
 キューを食べてる俺を見た人が、知り合いに伝えて、その人がまた……というように拡大して行ったんだろう。
 人の噂って、よくわからないけど、広まるのは早いよね……。

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完結しました!
勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

現在更新停止中です、申し訳ありません。
夫婦で異世界召喚されたので魔王の味方をしたら小さな女の子でした~身体強化(極限)と全魔法反射でのんびり魔界を満喫~

投稿スケジュールなど、詳しくは近況ボードをご確認下さい。


よろしければこちらの方もよろしくお願い致します。
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