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求むCランク以上の依頼

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「まぁ、どうやって集結したのか……そもそも何故城を襲撃したのかは、わかっていないわ。作為的な物を感じるけど……だからと言って、どうやったらそんな事ができるのか、皆目見当もつかないの」

 ヘルサルの時は、ゴブリンキングがいたから、そこにゴブリン達が集まった。
 ゴブリン達はただ人間のいる場所を襲撃するだけだから、深くは考えていなかったけど、マティルデさんの言う通り、自然に行われた事と考えるにはおかしい。

 そもそも魔物達は、ワイバーンも含め、王都の城下町をほとんど無視して城を狙っていた。
 集めた方法もそうだけど、狙いがはっきりと城だとわかる動きだったし、実際城に殺到して来ていたけど、それが何故かはわからない。
 誰かが魔物達を指揮して、城を狙うように仕向けた……と考えられるんだけど、それがどうやって行われたのかわからない、と。
 魔物が人間の言う事を聞くなんて、普通はないだろうし……あれだけの数の魔物に言う事を聞かせるなんて、不可能にも思えるね。

「まぁ、その辺りはギルドの方でも調べてみるわ。……話が逸れたわね。ともかく、今はAランク用の依頼は出ていないわ」 
「そうですか……」
「それじゃあ、CランクからBランクの依頼はありあますか?」

 話を元に戻したマティルデさんから、Aランク用の依頼はないと聞かされる。
 残念だけど、そういう事情なら仕方ないね。
 そう考えていたら、モニカさんがマティルデさんに聞いた。

「そっちならいくつかあるわね。でも、リク君が受けるには……」
「リクさんだけじゃなくて、私達もいるんです。だから、Aランクだけじゃなく、下のランクも受けないといけません」
「リクにばかり任せていられないしな」
「そう。そう言えば、リク君はパーティだったわね。他のメンバーが……えっと?」
「私とソフィーは今Cランクです」

 モニカさんやソフィーさんの事を考えるなら、Aランクだけじゃなく、下のランクの依頼も受ける事を考えないといけない。
 どちらにせよ、困っている人がいるんだし、誰かを助けるために依頼をこなす事を考えると、それでも良いのか……。
 それに、俺自身予想もしない速度でランクが上がってしまったから、色んな依頼で経験を積む事もしないといけないよね。

「成る程……でも、Cランク相当の依頼だと、報酬は少ないわよ?」
「それでも構いません。モニカさんもソフィーも大丈夫だよね?」
「ええ。そもそも私達は、Cランクなのだから、Aランクの報酬は求めていないしね」
「あぁ。というより、今は色々あって資金的にも余裕があるからな」

 マティルデさんがこちらを窺うように言うけど、そもそも俺はほとんど報酬の事は気にしてない。
 ヘルサルでの報奨金や、エルフの集落の報奨金、姉さんからもらった魔物襲撃への対処や、ワイバーンの処理や皮の回収で、お金には困ってないしね。

 そうそう、パレードの準備中に姉さんから直接報奨金を受け取ったんだけど……額が多過ぎてよくわからない事になってた。
 もちろん皆に分けても……だ。
 モニカさんやソフィーは金額に顔を青くさせていたし、受け取るのを遠慮しようとしたフィリーナやアルネも、姉さんに強制的に受け取らせられて戸惑ってた。
 ユノは、ある程度のお金をがま口財布に入れて、後は俺に預けて来た……あまりお金には頓着しないようだ。

 さらに今、俺は城でモニカさん達は宿を用意してもらっている。
 食事もほとんど城で……となっているから、生活費すら浮いてる状態だ。
 これ以上お金を稼ぐなんて、皆の頭にはあまりないんだろうね。
 俺もそうだけど、皆依頼をこなす事で、実力を上げる事や人の助けになる事を目的にしてる感じだ。

「贅沢な話ね……Cランクでも、生活に困っている冒険者はいるのに。……まぁ話はわかったわ。Cランクと、一応Bランクの依頼書も持って来てくれるかしら?」
「畏まりました」

 マティルデさんが受付の女性にお願いして、依頼書を持ってくるようにしてもらう。
 帰ってくるまでの間、しばらくお茶を飲んでのんびり過ごした。


「お待たせしました。こちらになります」
「……結構あるんですね」
「まぁね。危険な事をあまりさせられない、DランクやEランクと違って、CランクやBランクは、ちょうど依頼の数が多くなるランクなのよ。まぁ、冒険者のランクも、Cランク辺りが一番多いんだけどね」
「じゃあ、それを順当にこなせば、BランクやAランクにも?」
「そうね、もちろんなれるわよ。けど、当然危険な依頼もあるから……失敗する冒険者も多いわ。失敗した時、戦えない程の怪我をする者や、運が悪いと死ぬ者もいるわ。リク君のように、確実に依頼をこなしてAランクまで上がれるのは、やっぱり数が少ないわね」
「そうですか……まぁ、俺はそんなに数をこなして来たわけじゃないんですけどね……」

 受付の女性が持って来た依頼書は、結構な分厚さになる程の紙束だった。
 Aランクの依頼は、以前聞いた時2個しかなかったのに対し、これは凄い数があるみたいだ。
 モニカさんとソフィーが、手分けして依頼書を見て確認している。
 ……俺は、見てもどれくらいがモニカさん達にちょうど良いのかわからないから、二人にお任せだ。

「……数が多いわ……この依頼書は、持ち帰っても良いんですか?」
「あまり勧められないけど……リク君のパーティだから、特別よ?」
「ありがとうございます。では、一度持ち帰ってどの依頼が良いか、相談します」
「そう。でも、依頼は基本的に先着順だから……他の冒険者が受けていた場合、無効になるからね?」
「はい、わかってます」

 数が多いため、この場ですぐ決められないと、モニカさんとソフィーは考えたようだ。
 持ち帰ってしっかり相談しながら決めるんだろう……その時くらいは、俺も参加したいなぁ。
 というか、依頼って先着順だったんだ……まぁ、冒険者が同じ依頼を受けてしまい、片方は順調にこなして、片方は先を越されて目的の物が見つからない……とかになるといけないからという措置なんだろう。
 大人数で参加するような依頼でもない限り、そういうものなんだと納得する。

「それでは、この依頼書は帰ってから見る事にしますね」
「わかった。まぁ緊急性のない依頼ばかりだから、ゆっくり選んでくれれば良いよ。リク君達のパーティなら、依頼失敗もないだろうしね」
「私達に合ったものを選ばせて頂きます」

 モニカさんとソフィーが、持って来てもらった依頼書をしまいつつ、マティルデさんと話す。
 依頼がちゃんと遂行できるかどうかは、詳しく見て、挑戦してみないとわからないと思うけど……マティルデさんの信頼にこたえられるように頑張ろう。
 これで話は終わりといった雰囲気になったあたりで思い出す。
 パレードの時の事を言っておかなきゃね。

「……マティルデさん。そう言えば、パレードの時……冒険者を使って場所を確保していましたよね?」
「あぁ、あれね。リク君の勇姿を見るために頑張ったわ。お金に困ってる冒険者に依頼を出す形でね。まぁ、あまり多くの報酬は出せなかったけど」

 マティルデさんにあの時の事を聞くと、笑顔でそう答えた。
 やっぱり、周囲を固めた空間を作ってた人達は冒険者だったんだね。
 冒険者の小遣い稼ぎには良いんだろうけど……場所取りのためにそんな事をしなくても……。
 あれ? 日本で花見をする場所取りのために、場所取り代行に頼むのと同じようなものかな?


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