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新しい魔法を考えるリク
しおりを挟む「リクの魔法を、何も考えずに使うと考えるのは危険なの。王都が無くなるのだわ」
「そんなに、なの? 確かに魔物が襲撃して来た時の魔法はすごかったけど……」
「ヘルサル防衛の時を考えると……あながち大袈裟でも無いんです……」
「私達の集落の時は……あの時はエルサ様が頑張ったんだったわね」
「だが、集落全体を覆う防御魔法は凄かったな。あれが攻撃に使われる……と考えると、王都が無くなると言うのも頷ける」
姉さんは、ヘルサル防衛の時の事を城で報告を受けただけだろうからなぁ。
実際に見ているエルサとモニカさんとソフィーは、俺が全力で魔法を使えば、王都を壊滅できるだろうと考えてるんだろう。
いや、そんな事しないし、ちゃんと考えて魔法を使うつもりだよ?
「りっくん、もはや大規模破壊兵器ね……そりゃエルサちゃんも周囲を気遣うわね」
「いや、そこまで言わなくても……」
「間違いでは無いのだわ」
若干、姉さんに引かれながら、エルサが少しずつ人間の事を考え始めてる事を喜びながら、時間を潰す。
ヘルサルで俺の使った魔法を、詳しくモニカさんやソフィーが説明してるけど……フィリーナやアルネにまで引かれた……あの時は、まだ慣れてなかったのもあるけど、ゴブリンの量が多過ぎたからなぁ……。
「……お待たせ致しました」
しばらく後、ヒルダさんが用意してくれた夕食を皆で頂く。
さっきまで照れ臭そうにしていたエルサも、キューに飛びついてご満悦だ。
「でもリクさん。パレードで魔法を使っても大丈夫なの?」
「……確かに。さっきの話を聞いたら、不安になるわね……王都を壊滅させないでよ?」
「しないよ。大丈夫、ちゃんと考えてるから」
「リクの魔法だと聞くと不安なの……」
夕食を頂きながら、モニカさんが心配して聞いて来る。
それに便乗する形で、姉さんもユノも、俺が魔法を使う事に対して懐疑的だ。
他の皆も頷いてるから、皆巻き込まれないか不安なんだろう……俺、そんなにひどい事はやらかしてない……よね?
唯一、さっきの話を聞いていなかったヒルダさんだけが、俺の心の拠り所だよ……。
「大丈夫だって。今回は、危ない魔法は使わないから」
「どんな魔法を使うか、決めてるの?」
「うん」
「りっくんが使う魔法ねぇ……イメージで使うとは聞いたけど、どんな魔法を考えたのかしら……?」
モニカさんの問いには頷いて答える。
姉さんも皆も、俺が考えた魔法に興味があるようだ。
巻き込まれないかの心配、という事もあるのかもしれないけどね。
「花火をね、打ち上げようと思うんだ」
「花火?」
「それは何なんだ?」
「聞いた事無いわね……」
「花の火? 聞いただけだと、危険な魔法にしか思えないが……」
「成る程、花火ね。それなら確かに、見栄えは良いでしょうね」
姉さんだけは、俺が行った花火の事を理解している。
まぁ、日本では誰でも知ってる物だからね。
でも、この世界には花火はないらしく、他の皆は首を傾げている。
火薬とか、そういう物ってないんだろうか……?
「えーっと、なんというか……空に火を使って花を咲かせる……かな?」
「間違ってはいないけど、それだけじゃ不十分よ、りっくん」
「空に花……?」
「火を使う……爆発させるのか?」
「聞いただけだと、本当に危険な魔法に思えるわ」
花火を見た事の無い人にとっては、空に火で花を……と言われてもすぐにピンとは来ないんだろう。
ソフィーの想像のように、爆発と考えて危険な事を考えてしまっても仕方ないか。
爆発で間違ってるわけじゃないんだけど……。
「でもりっくん、パレードは昼間よ? まだ明るいうちから花火を上げても、綺麗に見えるかしら?」
「それは確かにそうだね。けど、昼用花火という物があってね? 火を散らすだけじゃなくて、煙に色を付けて目立たせるんだ。あと、火にも色を付ければ、昼間でも見栄え良く出来そうだからね」
「成る程ね……けど、危険はないのかしら?」
「それは大丈夫。火が落ちて来ないくらい高い場所に打ち上げれば、危険はないよ。魔物襲撃の時、面白い魔法を考えたからね」
「魔物襲撃の時?」
あの時、魔物の集団に炸裂する球の魔法を使った。
試しに作った物だから、アルネに投げてもらった後、すぐに炸裂せず、魔物が踏んだかどうかしたあたりで炸裂した。
あれを応用して、ある程度の高さに打ち上げてから、炸裂するように魔法のイメージを固めたら、花火ができると思うんだ。
まだちゃんとしたイメージを考えて無いから、これから考えないといけないけど。
「魔物襲撃の時、風の球を作り出して魔物達へ投げたんだ」
「あの球か……」
「そうだよアルネ。それを応用して、色のついた火と煙が出る球を作り出す。そして、それを空高く打ち上がるようにイメージして、ある程度の高度で炸裂するようにすれば良いかなって」
「……実現できれば、確かに危険は無さそうだけど」
「それなら炸裂の部分に気を付ければ、調節に失敗しても、巻き込まれないの!」
「……目の前で破裂する想像をしてしまったのだわ……リクの魔法が眼前で破裂……恐怖しかないのだわ」
「全く想像がつかないわね……」
「私達には考えられない事だな」
「ドラゴンのエルサ様が怯える魔法ね……どうなる事かしら……?」
姉さんは花火を知ってるから、魔法を想像できてる。
他の皆は、見たことも無いから想像ができないらしく、よくわかっていない様子だ。
ユノは日本にいたから知ってるし、エルサは俺の記憶が流れ込んで知ってるんだろう……言っている通り、炸裂の部分には細心の注意を払わないとね……。
大玉の花火が地上で炸裂とか……大惨事しか想像できない。
……やっぱり、危険だったかな?
「提案はしたけど、まだイメージを固めて無いからね。でも、パレードまでまだ時間があるから、その間にイメージをしておくよ」
「くれぐれも、危険は無いようにね……」
「皆を巻き込まないようにな」
「ははは、気を付けるよ」
今まで、魔法はほとんど必要に駆られてイメージして来たから、今回は時間をたっぷり使って考えられる。
咄嗟に考えてイメージした魔法で、これまでそれなりに考えた通りの魔法ができてるから、大丈夫だとは思う。
ちゃんと、お試しで魔法を使って、危険が無い事を確認しておかなきゃな……。
炸裂のイメージとか、火が散るイメージをするために……線香花火でも試してみるかな?
極小の魔力を調整して使う事で、そういった事にも慣れる事ができるだろうしね。
イメージが上手くいかなかった場合、ウィルオウィスプを召喚して、それで弾けてもらおう……あれなら、指示を聞いて動いてくれるから危険も少ないだろうし。
「それじゃあ、また明日来るわね」
「ではな」
「おやすみ、リク」
「では」
「おやすみなの」
「おやすみなのだわ」
「私も部屋に戻るわ、それじゃあね、りっくん」
「皆、おやすみー」
「では、私も待機しておきます」
夕食も終わり、しばらく待ったりと話した後、解散となる。
今日はユノが部屋に残るかと思ったけど、俺の花火魔法のイメージを固める邪魔をしないため、モニカさん達と一緒に宿へ行った。
ユノがいても邪魔になるとは思わないけど、気遣いはありがたく頂いておこう。
部屋から出て行く皆を見送り、お風呂にも入って、エルサにドライヤー。
気持ち良さそうに寝たエルサをベッドへと運び、花火のイメージを始める。
ヒルダさんも隣の部屋へ移動したから、俺一人だ。
ソファーに座りながら、記憶にある花火を思い出し、頭の中でイメージを始めた。
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