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リク達の夕食と城への帰還
しおりを挟む「リクさん、以前父さんに案内された時の事は覚えてる?」
「え? うん、覚えてるけど?」
「その時、美味しい料理を出す店に連れて行ってもらったわよね? その店ならどうかしら?」
「あぁ、そうだね。あの店なら良さそうだ」
「……どんな店なんだ?」
「マックスさん達が、王都で美味しくてよく行ってた店を教えてもらってたんだよ」
モニカさんが以前マックスさん達に紹介された店の事を言って、俺もその店の事を思い出した。
そう言えば、以前ユノのご機嫌を取るために連れて行った事もある。
……なんで忘れてたのか。
「へー、そんな店があるのね。美味しいの?」
「うん、紹介された時食べたけど、獅子亭に負けないくらいの味だったよ」
「獅子亭に……それは是非ともいかないとな!」
「あそこなら、色んな料理もあるし……肉メインの料理も豊富そうだったわね」
フィリーナに答えたら、ソフィーが激しく反応した。
そういえば、ソフィーは獅子亭の……マックスさんの料理のファンだったっけ。
他の皆も異論はないようだし、今日はその店で美味しい肉料理を頂く事にしよう。
あ、そういえば。
「あそこって確かデザートがあったね。な、ユノ?」
「あったの。美味しかったの!」
「「「デザート!」」」
デザートという言葉を出した瞬間、モニカさんとソフィー、フィリーナまでもが反応した。
唯一あまり反応が無いのはアルネだけか……まぁ、女性陣にはやっぱりデザートという言葉は魅力的なのかもね。
「早く行くわよ、リクさん!」
「そうだ。のんびりと歩いていては、デザートも料理もなくなってしまう!」
「明日は……少し少なめに食事を頂くとして……今日はいっぱい食べるわよ!」
「わかった、わかったから。ちょっと落ち着いてー」
「……はぁ……まぁ、美味い店という事なら、問題はないだろう」
デザートのために急ごうとする女性陣を追いかける。
アルネは溜め息を吐いているけど、特に反対でもないみたいだ。
まぁ、女性陣の反応に呆れてるだけ、かな。
「キューを、早くキューを用意するのだわー」
「わかったわかった。エルサの分のキューも用意するから、少し落ち着いてくれ」
頭にくっ付いて、キューを要求して騒ぐエルサを宥めながら、王都の店へと急いだ。
「はぁ……美味しかったわ……」
「デザート……素晴らしい物だ」
「美味しかったわね。エルフの集落には、こんな美味しい物ないわ……」
「肉料理も、あまり食べないが……これなら何度でも食べに来たくなるな」
「美味しかったのー」
「キューはやっぱり最高なのだわ。おかげで口の中がスッキリなのだわ」
皆が肉料理やデザートを食べる中、エルサだけはキューを食べてた。
店に来る途中、センテから取り寄せて販売してるって店を見つけて、その店で大量に買ったからね。
ワイバーンの焦げ肉を大量に食べたのにも関わらず、数十個も積まれたキューを食べるなんてねぇ……。
おかげで、エルサは満腹とキューを食べられた満足感からか、テーブルの上でお腹を上にして転がってる。
……相変わらずだけど、本当にそれで良いのかな……食いしん坊ドラゴン……。
「それじゃ、また明日。城を訪ねるわ」
「わかった、それじゃあね」
「ではな、リク」
「また明日ねー」
「では」
「おやすみなのー」
「バイバイなのだわ」
食べ物屋を出て、城へ向かってる途中でモニカさんやソフィー達と別れる。
皆と挨拶をして、俺とエルサは城へと歩いて行く。
昨日はユノが俺の部屋に泊ったから、今日はモニカさん達と一緒らしい。
モニカさんに手を繋がれて、仲良く歩いてる姿を見送って、俺は城へと戻った。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさいませ、リク様」
「おかえりー、りっくん」
部屋に戻って、ヒルダさんと姉さんに挨拶。
いつも俺が帰って来た時、部屋にいるけど……姉さんは女王の仕事、大丈夫なんだろうか?
まぁ、ヒルダさんが何も言わないんだから、大丈夫なんだろうと思う。
「お疲れ様、りっくん。ちょっと遅かったわね? ヴェンツェルはもう帰って来てたわよ?」
「リク様、夕食はどう致しましょうか? 必要であれば、今から用意させますが」
「あぁ、夕食は食べて来たから大丈夫です。ありがとうございます。帰りに皆で夕食を頂いて来たからね、それでこれだけ遅くなったんだ」
ヴェンツェルさんはもう城に帰って来てるらしい。
俺達はゆっくり城下町で夕食を頂いていたから、それなりの時間が経ってる。
帰って来てて当然か。
「畏まりました」
「それよりりっくん、ありがとね。ワイバーンの皮……予想以上の量だわ」
「それはなによりだよ。量が多いおかげで、ちょっと時間がかかったけどね」
夕食の準備が必要ないとわかり、ヒルダさんは部屋の隅に待機……そんな所に行かず、一緒にソファーで寛いでくれてもいいんだけどなぁ……。
侍女という役職上、それはできないか……。
ヴェンツェルさんと新兵さん達が持って帰ったワイバーンの皮は、姉さんの予想より量が多かったみたいだ。
満足気な表情をしてる。
姉さんの役に立てたのなら、嬉しいね。
「加工にはちょっと時間がかかるけど……半分以上の兵士に防具として支給できるわ」
「そう。それなら良かった。……どんな兵士に支給するの?」
「そうね……ヴェンツェルやハーロルト、軍の高官と話し合わないといけないと思うけど……多分、小隊長や中隊長なんかの、隊長クラス以上に支給されると思うわ」
「ふむ……」
「何か、別の考えでもあるの、りっくん?」
予想以上にワイバーンの皮が集まったとはいえ、さすがに兵士全員に行き渡る事はないようだ。
まぁ、10人や20人っていう規模じゃないから当然かな。
姉さんの言う通り、隊長クラスに支給するのもわかる。
隊で行動している時、隊長が真っ先にやられてしまわないよう、しっかり防具は固めておくべきだろうからね。
隊長がやられて隊の指揮ができなくなったら、軍隊として機能しなくなる可能性が高い……というのを以前どこかで聞いた事がある……多分、日本にいた時の漫画か何かだろうけど。
でも、それ以外に狙われて、やられてしまう可能性が高い兵士にも支給してあげたい。
兵士が減らなければ、それは軍全体にとって良い事でもあると思うから。
「そうだね……新兵さん達にも分けてあげられないかな?」
「新兵? それはまたどうして? 新兵と言うだけあって、まだ兵士になったばかり……戦力としては考えにくい人達よ?」
エルサを頭にくっ付けたまま、荷物を置き、姉さんの座ってるソファーの向かいに座りながら言う。
姉さんは、俺が新兵と言った理由がわからないようだ。
さっき考えた理由から、重要度は確かに隊長クラス以上の方が良い……というのはよくわかるんだけどね。
「えっと、新兵って今姉さんが言った通り、戦力としては低いのは当然でしょ?」
「そうね。訓練もまだ始めたばかり……当然戦える能力は低いわ」
「だけど、これから訓練をして、兵士として戦力になっている途中。その途中で、何かにやられてしまわないように、防具を強化するというのはどうかな……と考えたんだ」
「成る程ね……新兵を減らさないように……か。戦闘にになったら新兵は真っ先にやられてしまうわ。それを防ごう、という考えね?」
「うん。新兵が減らなければ、これから先の軍のためにもなると思うんだ」
新兵が少なくなれば、当然また兵士を補充する必要がある。
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