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マックスさん達のお見送り

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「どうかしたの、モニカさん」

 こちらを呼んだモニカさんは、少し困ったような、怒ったような表情のまま、今まで話していた人の方とこちらで視線をさまよわせてる。
 話してる邪魔をしたかな?
 そう思いながらも、モニカさんに近付いて何かあったのか聞く。
 話していた人が、何か困ってるとかなら、俺も力になりたいからね。

「ちっ、コブ付きかよ。時間の無駄だったぜ」

 俺達が近づいて来た事、モニカさんが俺達と知り合いだと気付いた、話していた人……男は、そう吐き捨ててすぐに去って行った。

「何だったの、モニカさん?」
「ここにいたら声を掛けられて……困ってたのよ。リクさんが来てくれて助かったわ」
「そうなんだ」

 何というか……ナンパ?
 確かにモニカさんは、離れていても目を引く程可愛い。
 しかも、服を着ていてもよくわかるくらい、主張が激しいむ……げふんげふん……あまり失礼な事は考えないようにしよう。

「それにしてもコブ付きだなんて……失礼ね。私が子供のいるような年齢に見えたのかしら?」
「んー、ユノがそれくらい小さな子に見えたとか?」

 幸い、モニカさんは俺が失礼な事を考えていた事に気付かず、男が吐き捨てて行った言葉に憤慨している様子だ。
 モニカさんは俺と同じくらいの年齢なはずだから、ユノくらいの子供がいる何て事はあり得ない。
 まぁ、ユノが10歳程度に見えていたらだけどね。
 5歳程度に見えてたら……あり得る……かも……?

「そんなに私、年を取ってるように見える、リクさん?」
「え? いや、俺からはそうは見えないよ。……多分だけど、俺と夫婦のように見えたとかじゃない?」

 気にしている様子のモニカさんに、フォローをする。
 俺とモニカさんがなんて、不釣り合いな気がするから、ちょっと無理があるかもしれないけど……。
 もちろん、俺がモニカさんに釣り合ってないって意味だ。

「……そんな……私とリクさんが……」
「……どうしたの?」

 俺は何か変な事を言ってしまったのだろうか?
 モニカさんが顔をリンゴのように真っ赤にして、一人でぶつぶつ言っている……。

「おう、リク、モニカ。もう来てたのか。早いな」
「わざわざありがとうね、リク。……モニカ、どうしたの? 真っ赤になって……リクに求婚でもされたの?」
「か、母さん! 変な事言わないで! 私とリクさんは……その……まだ……」
「マックスさん、マリーさん」

 モニカさんの様子を不思議に思っていると、旅支度を整えて馬に荷物を載せたマックスさん達が声を掛けて来た。
 マリーさんに激しく反応して、マックスさんの方は無視しているモニカさん……。
 後半はよく聞こえなかったけど、まぁ、モニカさんとしては変な事で誤解されたくないよね。

「……どうしたんだ、モニカは?」
「実はですね……」

 マックスさんに、今しがたあった事を話す。
 男がモニカさんをナンパしようとして、俺が来たと同時に去って行った事。

「モニカをか……俺がいればとっちめてやるところだったんだがな……」
「こういうのは久しぶりねぇ。獅子亭ではよくあったわ。まぁ、私達がガードしてたからすぐにいなくなったけどね」
「そうだったんですね」

 獅子亭を手伝っていた時、確かにモニカさんは男性客に人気があったと思う。
 注文を聞きにモニカさんが行った時と、俺が行った時で、男性客の対応というか、テンションが違ったからね。
 でも、店にいる時は、マリーさんやマックスさんが目を光らせていたため、声を掛ける事は出来なかったようだ。
 勇気を出して声を掛けても、すぐに追い払われるか、他の男性客によって黙らされるか……というのを何度か見たことがある。

 しかし……さっきの男……マックスさんに見つからなくて良かったなぁ。
 もし見つかってたら、冒険者ギルドで俺達に絡んできた人達よりも、酷い目にあってたかもしれない。
 先に来たのが俺達で良かったのかもしれないな。
 こんなところで、揉め事を起こしたくないしね。

「……俺達は今日からモニカと離れるが……これからは、リク。しっかり頼むぞ」
「はい、わかりました」

 マックスさんが言うのは、モニカさんに近付く男に対して……という事だろうと思う。
 まぁ、俺もモニカさんにどこの誰とも知れない変な男が近づいて来るのは、良い気がしないからね。
 マックスさんには力強く頷いておいた。

「いい加減娘離れしなさいな……はぁ……まぁ良いわ。ところでリク、モニカ。先日言っていた事は決めたの? 王都にいるか、ヘルサルに戻るか……」
「それは昨日あの後話したわ」
「王都に残って活動する事に決めました」
「そうか……寂しいが、やはり王都の方が冒険者として経験を積むのには良いだろうな」
「そうね。頑張ってね、モニカ。……リクは……頑張り過ぎない方が良いかしら?」
「マリーさん……」

 マックスさんとマリーさんに、王都に残る事にしたと伝える。
 マックスさんの方は少し寂しそうだったけど、やっぱり応援してくれるみたいだ。
 でも、マリーさんの方は俺は頑張らない方が良いような言い方だ。
 ……もしかして、魔法の制御を失敗して辺り一面見渡すが限り凍らせてしまった、最初の失敗の事を思い浮かべてるのだろうか……?
 今は大分制御も慣れて来たし、あんな失敗はもう二度としない……と思う……多分。

「ソフィーはどうした? 皆で見送ってくれるものだと思ったが……」
「ソフィーさんは、王都に冒険者の知り合いがいないか探しに行ってるわ。情報はできるだけ手に入れないとね」
「そうか。しっかり活動する事を考えているんだな。それなら良い」

 ソフィーさんは知り合いの冒険者に、昨日姉さん達から聞いた、バルテルの凶行に参加した冒険者の情報を聞きに行ってるんだけど、マックスさん達には情報を聞きに行ったとだけ伝える。
 一応、関係者のみの話だから、信頼できるマックスさんとは言え、むやみに教えられないからね。
 ……嘘を吐くのは苦手だから、ここらの説明はモニカさんにお任せだ。

「それじゃあ、俺達はそろそろ行くとするか」
「そうね。あまり遅くなってもいけないしね」
「わかったわ。父さん、母さん。元気で」
「マックスさん、マリーさん。お気をつけて」

 手に持っていた荷物も含めて、全て馬に乗せ、マックスさんとマリーさんは1頭の馬に乗った。
 帰り道は馬1頭だけで行くようだ。
 荷物もあるから、馬が大変だろうけどその辺りは旅慣れてる二人なら、乗り潰すような事にはしないと思う。
 それに、2頭用意するより、1頭の方が費用も安く済むだろうしね……1頭あたりいくらか知らないけど。
 ただちょっと……大柄なマックスさんと、ふくよかなマリーさんを乗せた馬が重そうにしてる気がするけど……失礼だからあまり考えないようにしよう。

「モニカ、何かあったらすぐにヘルサルに戻ってきていいんだからな?」
「もう、父さん……。リクさんもいるから大丈夫よ。滅多な事は起こらないと思うわ」
「そうだな……リクも、頼むぞ。もちろんお前も無理な事はするんじゃないぞ?」
「はい。ありがとうございます」
「それじゃあね、モニカ、リク」
「はい、マリーさん。またヘルサルに行きますね」
「母さんも、気を付けて」
「私とこの人がいれば、2、3日の道中なんて何てことないわよ」

 心配性なマックスさんと話しつつ、マリーさんともお別れの挨拶。
 また会えるとは言え、やっぱりしばらく会えないとなると、少し寂しいものがあるな。
 特にモニカさんは、今までマックスさん達と離れた事が無かったみたいだから、寂しさもひとしおだろう。
 エルフの集落に行った時と違って、今回は完全に王都へ拠点を移すという事だしね。


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