117 / 1,903
久々の肉料理と各自の活動報告
しおりを挟む部屋に携帯していた剣等の装備を置いて、居間で用意してもらったキューをかじる。
エルサもユノも俺も食べてるけど、やっぱりエルサのキューを食べる速度が早い。
……そんなに食べてると夕食が入らなくなるのではと考えたけど、エルサだから大丈夫だろう。
片手でキューを持ちながら、もう片方の手でエルサのモフモフを撫でて癒されながら考える。
調味料か……確かにマヨネーズとか味噌、その他にも色んな調味料が地球にはあった。
食を追求する日本人は色んな調味料を開発してたからね。
この世界で生活して来て、今まで地球と同じような調味料はほとんど見た事が無い。
まぁ、塩とか砂糖くらいかな……ヘルサルがこの国でも大きい街で、近くに農業中心のセンテがあるから両方揃うってマックスさんは言ってたっけ……。
日本にいた時、料理の経験はあんまりないから、調味料をいちから作る方法がわからない。
そのうち、調味料を色んな街や国に行って探すのも悪くないかもね。
いつの事になるかわからないけど……。
「ただいまー。リクさん、先に帰ってたのね」
「おかえりモニカさん。それは?」
居間でのんびりキューをかじりながら過ごしてると、最初にモニカさんが帰って来た。
モニカさんは道案内のためか、一人のエルフを連れていて、そのエルフと一緒に両手で大皿を持っていた。
その皿の中にはおいしそうな料理が載ってる。
「これはね、料理を教えてもらうついでに作って来たの。皆久々にいっぱいお肉が食べたいだろうと思って」
「お肉なのー!」
キューを食べるのに夢中なエルサは放っておいて、ユノの方はモニカさんが持って帰って来た肉に興味津々だ。
モニカさんと一緒に来たエルフは、持っていた皿をテーブルに置いた後一礼して帰って行った。
肉か……確かにこのエルフの集落に来てから、あまり多くの肉を食べて無かった。
民族性なのかもしれないけど、肉料理が少ないんだよね。
しかも、肉料理があっても使われる肉も少なくてちょっと物足りない。
料理自体は美味しいんだけどね。
「ユノちゃん、食べるのは皆が揃ってからよ」
「我慢するの!」
テーブルに置かれた肉料理を食い入るように見ていたユノに、モニカさんからストップがかかる。
放っておいたら手を伸ばしてつまみ食いしそうだったからね。
昼抜きだったから辛いかもしれないけど、きちんと我慢できるユノは偉いぞ。
俺もテーブルの肉料理を見るが、分厚いステーキのような物だったり、スープに入って煮込まれてる物だったりと、色んな種類がある。
……すごく美味しそうだ。
「でも、この集落によくこんなに肉があったね?」
「しばらくはお肉に困る事は無いみたいよ」
この集落では狩りで肉を得るような事をチラッとフィリーナが言ってたような気がするけど、最近は魔物達の対処のために狩りは出来て無いようだった。
民族性以外にも、狩りが出来ないから肉が少なかったのかもしれないと今になって気付く。
モニカさんは肉に困る事は無いと言ってるけど、狩りをしてないのになんでだろう?
「この肉はオークの肉だからね。オークはしっかり焼いたり煮込めば美味しい料理になるのよ」
「……そうなんだ」
魔物の肉が料理に使われる事があるのは知ってた。
獅子亭でも、冒険者達が狩って来た魔物の肉を仕入れて料理に使ってるとは聞いた。
けど実際自分が討伐したオーク達が料理になるのを見ると少しだけ気後れする……。
確かに、オークが二足歩行で武器を使ったりする事を考えなければ、ほとんど地球の豚と似たような魔物だけどなぁ。
「なぁに? オークの肉は嫌い?」
「いや……食べた事無いから……ちょっとね……魔物の肉というのが……」
モニカさんが不思議そうに尋ねて来るのに、俺は躊躇しながら返答する。
しかし、モニカさんはそれを聞いてさらに首を傾げながら言って来る。
「オークのお肉なら獅子亭でも食べてたじゃない。獅子亭で出す肉料理は半分がオークのお肉をつかってるわよ?」
「……え?」
モニカさんの言う通りなら、俺は知らず知らずのうちに魔物の肉を食べてたようだ……。
地球と同じように養豚農家から仕入れた豚肉を使ってる物だと思ってた……。
そうか……この世界に養豚農家がいるとは限らないのか……何せ、魔物を狩れば肉が手に入るのだから……。
「……そうだったんだ」
「ちゃんと美味しい料理になってるから大丈夫よ」
躊躇ってる俺にモニカさんは笑いながら言っているけど、美味しいとかそういう問題じゃないんだけどなぁ。
まぁ、今まで食べてたんだから今更か……。
覚悟を決めてしっかり食べさせてもらおう。
弱肉強食だとか言うつもりは無いけど、今まで散々肉を食べて来たんだ。
地球でもこちらでも、肉を食べてる事には変わりないからね。
モニカさんに衝撃(?)の肉事情を聞かされてる所に、フィリーナ、アルネ、フソフィーさんが一緒に帰って来た。
「ただいまー。疲れたわ……。焼けた家の片づけがこんなにしんどいなんて……」
「今帰った。フィリーナ、森に行くよりは楽だと思うぞ。魔物に注意しながら洞窟を捜索しないといけないんだからな
「ははは、どちらも大変な事だろうな。私はエルフ達と剣を交えられて有意義だったぞ。……ただいま皆」
「おかえりフィリーナ、アルネ、ソフィーさん。お疲れ様。すぐに夕食にしよう」
皆を出迎えながら、夕食を促す。
そろそろエルサが用意してもらったキューを食べ尽くしそうだからね。
それに、さっきから肉料理を見ながら我慢してるユノも限界のようだ。
モニカさんが持って帰って来た肉料理に舌鼓を打ちながら、それぞれが今日あった事の報告会となる。
オークの肉とわかってその肉を口に入れる時に一瞬だけ戸惑ったけど、一口食べてからはその美味しさにオークがどうとか魔物がどうとかっていうのは気にならなくなった。
やっぱりモニカさんはマックスさんに似て料理上手だね。
報告会の方は特に問題になるような事は無かった。
モニカさんの方はこんな料理を教えてもらったという報告。
今度、作ってもらおう。
俺やエルサ、ユノはエルフ達の怪我を治して回ってた事の報告。
この際、同じエルフの集落の者として、フィリーナとアルネに感謝されたけど、俺は暇つぶしの代わりにやった事だからね。
ソフィーさんとアルネ、フィリーナの三人はこの石の家に帰って来る途中の道で会ったから一緒に帰って来たようだ。
ソフィーさんはもうあの複雑な道を覚えたらしく、一人で途中まで来てたらしい……すごいね。
フィリーナは、集落の家の状況報告。
大きく崩れるような家は無かったけど、建て直さないといけない家は何件かあったらしい。
それでも被害は少なかったため、作業に時間はかからないそうだ。
アルネの方は、入り組んだ洞窟の中を探索して、中の状況報告。
洞窟内は俺が探査の魔法で探った時と同じように、生き物の気配が一切無く、地面にはバラバラになった魔物達の死骸で埋め尽くされてたそうだ。
これで、エルフの集落が襲われる危険が無くなったと判断して良いだろうとの事。
大変なのは、これから洞窟と集落を往復して、魔物の片づけと素材なんかを運ぶエルフ達だと言って笑ってた。
オークのように食べられる素材は持ち帰る、何かの素材になるのも同じくだ。
肉類は腐る前に持って帰って欲しい。
跡に残った残骸は燃やして埋める。
集落から少し離れてるからちょっと大変そうだ。
ソフィーさんの方は、エルフ達に剣の講義をして、何人か素質があるエルフを見つけたらしい。
本来エルフは魔法を主に使うけど、剣を使えるようになって損は無いという事を今回の魔物襲撃で学んだらしく、その数人は剣の修練を始めるそうだ。
報告会が終わる頃には皆夕食を取り終わっていて、風呂に入って就寝する事になった。
今日からはもう夜襲が来る事も無いだろうから、安心して朝まで寝れるね。
「ゆっくり寝るのだわー」
「もう夜に起こされるのは嫌なの」
やっぱりエルサもユノも、ぐっすり寝てる所を起こされるのは嫌なようだ。
誰だってそうか……エルサなんて、それで洞窟の魔物を殲滅したんだしな。
今日もいつものようにエルサを挟んでゆっくりと寝た。
夜襲の無い睡眠は寝起きさっぱりで、昨日までの疲れがしっかり取れた。
……夕食に食べた久々の肉料理のおかげもあるかもしれないね。
1
お気に入りに追加
2,152
あなたにおすすめの小説
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる